
相続放棄を自分で行った複数の体験談から、実際の手続きの流れが見えてきます。多くの実践者が共通して感じているのは、「思っていたより自分でもできる手続きだった」という点です。
実際の体験者の声を見ると、家庭裁判所の担当者から「専門家に依頼する人もいますが、大半は自分でやられてますよ」との回答を得ており、決して特別な手続きではないことがわかります。
具体的な手続きの流れ:
ある体験者は、父親が8000万円以上の借金を残して亡くなった際、普通郵便で届いた弁護士からの通知を受け取ってから、わずか3ヶ月以内に手続きを完了させています。この事例では、専門家に依頼せず自分で手続きを進めることで、高額な負債を回避できました。
また別の体験者は、昭和49年に亡くなった曾祖父の土地相続が巡り巡って自分に回ってきた際、活用困難な辺鄙な土地であることを理由に相続放棄を選択し、自分で手続きを完了しています。
相続放棄を自分で行う際の費用は、想像以上に安く済みます。実際の体験者によると、総費用は4,370円(交通費込み)で完了しており、専門家への依頼費用(数万円~十数万円)と比較すると大幅な節約になります。
費用の内訳:
必要書類一覧:
書類収集のコツとして、東京23区内であれば1日で必要な戸籍謄本を全て取得することも可能です。被相続人の本籍地、申述人の本籍地、被相続人の住所地の3か所を効率的に回ることで、平日1日を使って書類を揃えることができます。
相続放棄申述書は裁判所のホームページからダウンロードできるため、事前に内容を確認し記入を進めておくことで、当日の手続きがスムーズになります。
相続放棄申述書の作成は、雛型通りに進めれば難しくありませんが、いくつかのポイントで迷いやすい箇所があります。特に2ページ目の記載内容については、多くの体験者が戸惑いを感じています。
申述書作成のポイント:
家庭裁判所での提出当日の流れは、まず地下の売店で収入印紙と郵便切手を購入し、申立窓口で書類のチェックを受けます。東京家庭裁判所では空港と同様の手荷物検査があるため、時間に余裕を持って訪問することが重要です。
申述書の受理後、約1週間で家庭裁判所から照会書が普通郵便で届きます。この照会書には返送期限が短く設定されており(通常1週間程度)、仕事で忙しい方には厳しいスケジュールとなることがあります。
家庭裁判所への質問例:
手続きの管轄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となるため、遠方の場合は郵送での申立も可能ですが、一般の方は直接提出することが推奨されています。
相続放棄申述書を提出後、家庭裁判所から届く照会書への回答は、相続放棄が認められるかどうかの重要な分岐点となります。照会書には通常5つ程度の質問事項があり、相続放棄の理由を具体的に記載する必要があります。
照会書でよくある質問内容:
照会書への回答で特に注意すべきは、申述書との整合性です。矛盾した内容を記載すると相続放棄が認められない可能性があります。体験者の中には、この段階で司法書士に相談し、遺産の資料と申述書を確認しながら整合性のある内容で照会書を作成した例もあります。
照会書回答の注意点:
照会書の返送後、問題がなければ約1ヶ月で相続放棄申述受理通知書が届きます。この通知書が届けば相続放棄の手続きは完了となり、被相続人の債務を引き継ぐ義務はなくなります。
万が一相続放棄が却下された場合に備えて、提出した全ての書類のコピーを保管しておくことも重要です。即時抗告を行う際に、提出書類を一言一句間違いなく再現する必要があるためです。
相続放棄を自分で行うことは可能ですが、すべてのケースで推奨されるわけではありません。特に3ヶ月という期限は絶対に延長できないため、手続きに不安がある場合は専門家への依頼を検討すべきです。
自分で手続きできるケース:
専門家依頼を検討すべきケース:
専門家に依頼した場合の費用は、司法書士で3万円~5万円、弁護士で5万円~10万円程度が相場です。自分で行う場合の4,000円程度と比較すると高額ですが、確実性を重視する場合は十分に価値のある投資といえます。
リスク回避のための判断基準:
特に注意すべきは、相続放棄は一度認められると撤回ができないという点です。また、相続財産に少しでも手を付けてしまうと「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
実際の体験者も、照会書の段階で専門家に相談している例があり、「迷ったら専門家に相談」という姿勢が重要です。特に、相続放棄の可否や法的な判断については、家庭裁判所は相談に応じないため、不安な点がある場合は早めに弁護士や司法書士に相談することが賢明です。
相続放棄を自分で行うことは十分可能ですが、個々の状況を冷静に判断し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、確実かつ安心な手続きを進めることができます。