プログラムの著作権登録で守る知的財産と金融リスク

プログラムの著作権登録で守る知的財産と金融リスク

プログラムの著作権と登録で守る権利と対抗力

プログラムを開発しても著作権登録しないと、裁判で「いつ作ったか」を自分で証明できず敗訴のリスクがあります。


この記事の3ポイント要約
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著作権は自動発生するが「登録」は別物

プログラムを作った瞬間に著作権は発生します。しかし訴訟・譲渡・取引では「登録」がなければ法的に不利になる場面が多くあります。

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創作後6か月以内が勝負の期限

「創作年月日の登録」はプログラム完成から6か月以内に申請しないと受け付けられません。この期限を見逃すと有力な証拠が消えます。

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登録費用はトータル約5万円が目安

SOFTICへの登録手数料47,100円+登録免許税3,000円の合計約50,100円。高額に見えますが、紛争リスクへの保険として費用対効果は高いといえます。


プログラムの著作権とは何か・保護される範囲


著作権法では、プログラムを「電子計算機を機能させて一の結果を得るための指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義しています(著作権法第2条第1項第10号の2)。ソースコードやオブジェクトコード、制御スクリプトなど、表現形式を問わず「コードとして書かれた表現」が対象です。


重要なのは、保護されるのは「表現」であり「アイデア」ではない点です。たとえば、「株価データを自動取得して通知する」という発想そのものは著作権では保護されません。しかし、その処理を実装した具体的なコードには著作権が発生します。金融システムやフィンテックアプリを開発する場合、機能の仕様は競合に真似されても文句が言えませんが、コードの表現をそのままコピーされれば著作権侵害として争えます。


つまり「コードの中身」が守られる、ということですね。


反面、アルゴリズムや通信プロトコル自体には著作権が及ばないため、同じロジックを別のコードで書き直された場合は著作権侵害として追及することが難しくなります。フィンテック分野では特に、基幹となる処理ロジックを特許で保護するか、著作権でコードを保護するかを使い分ける戦略が求められます。


著作権法の保護対象かどうかを確認したい場合、文化庁の公式情報が参考になります。


著作権の基本的な考え方や保護範囲について、文化庁の解説ページに詳しい情報があります。


著作権の登録手続き - 文化庁


プログラムの著作権登録が文化庁でなくSOFTICである理由

著作権の登録手続きは原則として文化庁が担当していますが、プログラムの著作物だけは例外です。プログラムの著作権登録は、一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が文化庁長官の指定を受けた「指定登録機関」として処理を行います。


これはなぜかというと、プログラムの審査には専門的な技術知識が必要であり、文化庁単独で対応することが困難なためです。SOFTICは1987年(昭和62年)4月から登録業務を開始しており、長年の実績を持つ機関です。申請は書留やレターパックなどの郵送が原則となっており、書類一式をSOFTICに送付する形で手続きを進めます。


SOFTICが窓口です。これは覚えておけばOKです。


登録手数料は登録の種類やプログラムの規模に関係なく一律47,100円、加えて収入印紙で納付する登録免許税が創作年月日登録・第一発行年月日登録の場合は1件につき3,000円です。合計で約50,100円が基本的な目安となります(実名の登録は登録免許税が9,000円)。


なお、音楽や文章など他のジャンルの著作物は「公表した事実」がないと登録できませんが、プログラムだけは未公表でも創作年月日の登録が認められています。社内のみで使用する業務システムや、まだリリースしていないフィンテックアプリでも登録できる点が、プログラム特有の大きなメリットです。


SOFTICのプログラム登録制度の詳細な申請手続きと費用については、以下のよくある質問ページで確認できます。


よくあるご質問 :: SOFTIC on the Web


プログラムの著作権登録の4種類と創作年月日登録の重要性

プログラムの著作権登録には4つの種類があります。それぞれの目的と効果を把握しておくことが、適切な権利保全につながります。


1つ目は「創作年月日の登録」です。これはプログラム完成後6か月以内に申請する必要があり、登録されると「その登録年月日に創作があったものと推定される」効果(著作権法第76条の2)が生じます。訴訟で「先に作ったのは自分だ」と主張する際の有力な証拠となります。未公表プログラムにも使える唯一の登録制度です。


2つ目は「第一発行年月日等の登録」です。公表済みのプログラムについて、最初に公表・発行した日付を登録します。登録された日付が第一発行日と推定される効果があり、保護期間の起算点を明確にできます。


3つ目は「著作権の移転等の登録」です。著作権を他者に譲渡した場合や質権を設定した場合に、登録しなければ第三者に対抗できないと著作権法第77条で明記されています。この点は後の章で詳しく解説します。


4つ目は「実名の登録」です。無名または変名(ペンネーム等)で公表したプログラムに実名を登録すると、保護期間が「公表後70年」ではなく「著作者の死後70年」に延長される可能性があります。法人が無名で公表したプログラムには関係が薄い制度ですが、個人開発者には意外と大きな意味を持ちます。


6か月の期限が条件です。


特に「創作年月日の登録」は、開発完了のタイミングで申請を検討しないと後から取り返しがつきません。フィンテック系のシステムはバージョン管理が複雑になりがちで、「このコードはいつ書いたか」が曖昧になりやすいため、初回リリース時の登録を習慣づけることが重要です。


著作権の移転登録を怠ると第三者に権利を主張できないリスク

金融・フィンテック企業がシステム開発を外注した場合、プログラムの著作権は原則として「実際に作ったエンジニア(ベンダー)」に帰属します。委託費を支払って納品を受けた発注者側(ユーザー企業)に著作権が自動的に移るわけではありません。これは著作権法の原則であり、多くのビジネスパーソンが見落としがちなポイントです。


著作権をユーザー企業に移すためには、契約書に著作権の譲渡条項を盛り込む必要があります。しかしそれだけでは不十分な場合があります。著作権の移転を第三者に対抗するには、登録が必要です(著作権法第77条)。


厳しいところですね。


たとえば、ベンダーが同じプログラムの著作権を別の会社にも「二重譲渡」してしまったケースを想像してください。登録していない側は、登録を先に済ませた他社に対して「自分が権利者だ」と主張できません。また、2020年の著作権法改正により、ライセンス契約を締結したとしても、著作権が第三者に譲渡された場合のライセンシー保護(当然対抗制度)は一定条件付きで認められるようになりましたが、それでも移転登録によって権利関係を明確にしておく重要性は変わりません。


さらに、令和元年(2019年)の改正で「相続・合併等の一般承継による移転も、登録しなければ第三者に対抗できない」というルールが加わりました。つまり会社の合併・事業承継に伴うプログラム著作権の移転も、登録なしには第三者への対抗ができないのです。M&Aが盛んな金融業界では、この改正は特に重要な意味を持ちます。


著作権の移転と対抗制度について詳しくは、文化庁のSOFTIC登録手引きや、以下の弁護士事務所の解説が参考になります。


著作権の登録制度とは?登録方法やメリットについて解説 - 直法律事務所


金融・フィンテック企業がプログラム著作権登録をすべき独自の理由

一般的なソフトウェア会社だけでなく、金融業界に関わる事業者にとっても、プログラムの著作権登録は実益が大きい手続きです。この視点はあまり語られません。


金融システムは高い信頼性と継続性が求められるため、一度開発したシステムを長期間使い続ける傾向があります。数年前に作った基幹システムのコードが侵害されたとき、「いつ作ったか」を証明できる記録がなければ立証が格段に困難になります。これは使えそうです。


また、フィンテックスタートアップが投資家から資金調達を行う場面でも、著作権登録は有効です。登録されたプログラムは「資産として明確化された知的財産」として扱いやすくなり、デューデリジェンス(投資前調査)でのソフトウェア資産評価に正の影響を与えます。実際、SOFTICの登録手引きでも「登録されたプログラムは権利保全の意思の表れとなり、取引の円滑化に資する」と明記されています。


さらに、著作権を担保に質権を設定する「著作権の質権登録」という仕組みもあります。資金調達の手段として著作権を担保に金融機関から融資を受ける場合、質権設定の登録は不可欠です。日本ではまだ一般的ではありませんが、知的財産を活用した資金調達(IPファイナンス)への関心が高まる中で、この仕組みの重要性は今後増していくと考えられます。


登録が「知財ファイナンス」の入口になるということですね。


加えて、金融機関がシステム開発を外注し、そのシステムに係る著作権を引き受ける契約を結ぶケースでは、相手先ベンダーの企業状況が変化した場合(倒産・M&A等)でも登録により権利を確保できます。契約書だけでは防げないリスクを、登録という公的記録で補完できる点が金融実務においても大きな意味を持ちます。


IPファイナンス(知的財産を活用した資金調達)の最新動向については、経済産業省の資料も参考になります。


知的財産政策 - 経済産業省






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