給与支払報告書の提出先と住民票の正しい関係を解説

給与支払報告書の提出先と住民票の正しい関係を解説

給与支払報告書の提出先と住民票の正しい知識

住民票を移していない従業員がいると、あなたの会社に50万円の罰金が来ます。


この記事の3つのポイント
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提出先は「住民票」ではなく「現住所」が基準

給与支払報告書は、住民票の住所ではなく翌年1月1日時点での「現住所(生活の本拠地)」がある市区町村に提出するのが正しいルールです。

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提出漏れは1年以下の懲役または50万円以下の罰金

地方税法第317条の7に基づき、正当な理由なく提出しなかった場合は事業主・担当者に厳しい罰則が科されます。

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1月1日が「運命の基準日」になる

年の途中で引越しをしても、住民税は翌年1月1日時点の住所地に課税されます。年末年始の引越し予定者は特に注意が必要です。


給与支払報告書の提出先は住民票ではなく「現住所」が正解

多くの担当者が「給与支払報告書は従業員の住民票がある市区町村に出せばいい」と認識しています。しかし、これは正確ではありません。


地方税法では、住民税を課税できるのは「住所を有するもの」と定められており、「住所」とは実態として生活の本拠地となっている場所を指します。住民票の有無だけで機械的に判定されるわけではないのです。


実務での正しい基準はシンプルです。給与支払報告書の提出先は、翌年1月1日時点で従業員が実際に居住している市区町村(現住所)になります。


たとえば、令和7年分の給与支払報告書であれば、令和8年1月1日時点の現住所がある市区町村へ提出します。現住所が基準です。


では、住民票と現住所が異なる場合はどうなるでしょうか?たとえば、従業員が引越ししたものの、住民票をまだ旧居のある市区町村に置いたままというケースはよくあります。この場合、給与支払報告書は現住所がある市区町村に提出することになります。現住所で提出しておけば、住民票のある市区町村から二重に課税される心配はありません。


なぜなら、地方税法上は「他の市区町村で住民税が課税されている場合、住民票があっても課税できない」というルールがあるからです。つまり、現住所の自治体での課税が優先されます。


現住所で提出すれば問題ありません。ただし、担当者には従業員の現住所を正確に把握するための確認作業が求められます。年末調整の時期に従業員から最新の住所を収集しておくことが、実務上のミスを防ぐ近道です。


税理士法人関内会計による詳細な解説は以下のリンクから確認できます。住民票と現住所が異なるケースの具体的な対応方法が記載されています。


給与支払報告書の提出先は現住所がある市区町村に|税理士法人関内会計


給与支払報告書の「1月1日」基準が住民税を決める仕組み

給与支払報告書にまつわるトラブルの多くは、「1月1日基準」の理解不足から生まれます。これは非常に重要な概念です。


住民税は、毎年1月1日時点の住所地の市区町村が課税主体になります。1月2日以降に引越しをしても、その年の住民税は元の住所地で課税されます。逆に言えば、12月31日までに引越しを完了させると、翌年の住民税は新しい住所地の自治体に納めることになります。


これがなぜ重要かというと、給与支払報告書の提出先も「翌年1月1日時点の現住所がある市区町村」を基準にするからです。年の途中に転居があった場合、給与支払報告書に記載する住所は引越し後の新しい住所になります。


たとえば、東京都渋谷区に住んでいた従業員が2026年12月15日に神奈川県横浜市に引越したとします。この場合、令和7年分の給与支払報告書は横浜市に提出することになります。年の途中の話ではなく、提出年の1月1日時点での所在地が判断基準です。


年末年始の引越しには特に注意が必要です。12月31日に引越しを完了させた場合と、1月2日に引越しを完了させた場合では、住民税の課税自治体が変わってしまいます。通勤交通費の変更申請や住所変更の連絡などから従業員の転居が発覚するケースもあるため、担当者は12月以降に住所変更があった従業員を注意深く確認しましょう。


住民税の課税スケジュールを詳しく確認したい場合は、以下のリンクが参考になります。前年所得をもとに6月から翌年5月にかけて徴収される仕組みが整理されています。


住民税はいつから納付する?天引きされるタイミングや対象期間を解説|freee


給与支払報告書の提出先を間違えると住民税が二重課税になるリスク

住民票と現住所が異なる状態で給与支払報告書の提出先を誤ると、深刻なトラブルに発展することがあります。


八千代市(千葉県)の公式サイトでは、「住民登録をしていない市町村に住んでいる場合、住民登録地と二重課税になる等の問題が発生する可能性がある」と明記しています。これは決して他人事ではありません。


具体的にどういう状況が起きるかというと、次のようなケースです。従業員Aさんが住民票を旧居のA市に残したまま新居のB市に実際は住んでいるとします。会社が誤ってA市に給与支払報告書を提出してしまうと、A市はAさんに住民税を課税します。一方、B市にも「実際の居住者」として課税する権限があるため、両方から住民税の通知が届く事態になりかねません。


二重課税は最終的に解消される仕組みになっています。市区町村同士が情報連携し、どちらかの課税を取り消す手続きが行われます。しかし、その解消作業に時間がかかり、従業員が一時的に多額の住民税を支払わされるリスクがあります。厳しいところですね。


こうした問題を未然に防ぐには、担当者が年末調整の時期に従業員の現住所を一斉確認することが最も効果的です。「住民票の住所」ではなく「実際に生活している住所」を記入してもらうよう、従業員に案内する一言が大きなトラブル防止につながります。


なお、神戸市の公式FAQでも、「給与支払報告書は、住民票のある住所に限らず、勤務先に届出された住所の市区町村に提出される」と説明されています。つまり、勤務先に届け出された現住所が提出先の判断基準として機能することが確認できます。


神戸市から住民税が課税されているのはなぜですか?|神戸市公式FAQ


退職者の給与支払報告書と「30万円以下」の特例を正しく理解する

在職中の従業員だけでなく、年の途中で退職した元従業員についても、原則として給与支払報告書の提出が必要です。これを見落としている担当者は少なくありません。


ただし、唯一の例外があります。前年中に退職した従業員の年間給与支払総額が30万円以下の場合は、提出を省略できるとされています(地方税法の規定による)。この条件は非常に限定的です。


30万円という金額がどの程度かイメージしてみましょう。月給25万円の従業員であれば、わずか1か月分強の給与にあたります。フルタイム勤務で年度途中に退職した場合、ほとんどのケースでは30万円を超えるため、提出が必要になります。この特例が使えるのは、短期アルバイトや数週間だけ勤務した人など、ごく限られた場合です。


さらに注意したいのが、多くの市区町村では「30万円以下でも提出してほしい」と案内していることです。大阪市・船橋市・木更津市など多数の自治体が、法的義務がなくても任意での提出に協力を呼びかけています。提出しておいた方が、元従業員の住民税が適正に計算されるため、後々のトラブルを避けられます。


退職者の場合の提出先も確認しておきましょう。退職者については、退職日時点に住んでいた市区町村に提出するのが基本です。在職者とは基準日が異なる点に注意が必要です。


退職者の給与支払報告書については以下のリンクで詳しく解説されています。提出が必要なケースと不要なケースが整理されており、実務上の参考になります。


給与支払報告書が提出不要になる条件は?30万円以下の場合や提出しない場合を解説|マネーフォワードクラウド


給与支払報告書の提出を怠ると起きる法的リスクと実務対策

給与支払報告書の提出は任意ではありません。地方税法第317条の6により、給与を支払う事業者には法定義務として課されています。これは金融や経営に携わる人が必ず知っておくべき知識です。


提出しなかった場合の罰則は、地方税法第317条の7に「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と明記されています。さらに、この罰則には「両罰規定」が存在します。両罰規定とは、違反行為を行った担当者個人だけでなく、その担当者が所属する会社(法人)にも同じ罰則を科すことができる仕組みです。つまり、担当者と会社の両方にペナルティが及ぶ可能性があります。痛いですね。


虚偽の内容を記載して提出した場合も、同様の罰則対象となります。「何となく数字を合わせておいた」という軽い対応でも、虚偽記載として扱われるリスクがある点は肝に銘じておく必要があります。


提出が遅れた場合にも実害が発生します。期限(翌年1月31日)を過ぎると、従業員の住民税の特別徴収(給与天引き)の手続きが間に合わなくなります。その結果、従業員が会社を通じた天引きではなく、自分で住民税を納付する「普通徴収」に切り替わることがあります。


実務上の対策として、以下の点を年間スケジュールに組み込んでおくことをおすすめします。


| チェック時期 | 確認事項 |
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| 11〜12月 | 従業員の現住所を全員分確認・更新 |
| 12月末 | 年の途中で引越しした従業員がいないか最終確認 |
| 翌年1月中旬まで | 年末調整の完了と個人別明細書の作成 |
| 翌年1月31日まで | 各市区町村への提出(退職者分含む)|


提出枚数が前々年の源泉徴収票提出数で100枚以上の場合、eLTAX(地方税ポータルシステム)または光ディスク等による電子提出が義務付けられています。これは電子申告のレベルでも罰則の対象となる可能性があるため、従業員数が多い会社は特に確認が必要です。


eLTAXについての公式情報は以下から確認できます。利用届出の方法から申告手続きまで詳しく掲載されています。


初めてeLTAXで給与支払報告書等をご提出される方へ|地方税共同機構(eLTAX公式)