事業継続力強化計画認定企業一覧の見方と活用法

事業継続力強化計画認定企業一覧の見方と活用法

事業継続力強化計画の認定企業一覧を活用して得られる金融メリット

認定を受けても「3年後に何もしなければ」全メリットが消えます。


この記事でわかること3選
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認定企業一覧の正しい見方

中小企業庁が公開するエクセルファイルの構造と、地域別・年度別の検索方法をわかりやすく解説します。

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認定で得られる5つの金融メリット

低利融資・税制優遇・補助金加点・信用保証枠拡大・損害保険料割引まで、具体的な数字で解説します。

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3年ルールと失効リスク

認定の有効期間は3年。更新率がたった6.3%という現実と、失効した場合に失うメリットを把握しておきましょう。


事業継続力強化計画の認定企業一覧はどこで見られるか

事業継続力強化計画(通称:ジギョケイ)の認定企業一覧は、経済産業省・中小企業庁の公式ウェブサイトで公開されています。取引先の確認、競合調査、融資審査の参考など、さまざまな場面で実際に使えるデータです。


一覧は「地域別」「年度別」に分かれており、北海道から沖縄まで9つの地域ブロックに対応したエクセルファイルとしてダウンロードできます。各ファイルの中は都道府県ごとのシートに分かれているため、目的の都道府県を開けばすぐに該当企業の社名を確認できます。これは使えそうです。


注意点は、掲載期間に制限があるという点です。事業継続力強化計画の実施期間は最長3年のため、認定事業者一覧に載るのは「今年度分+過去3年度分」だけです。4年以上前に認定を受けた企業は一覧から外れてしまいます。さらに、認定を受けた翌月の更新タイミングまでは公表されないため、直近の認定企業をすぐに確認するには少しタイムラグがある点も覚えておく必要があります。



  • 📌 公開先URL:中小企業庁「事業継続力強化計画」認定事業者一覧(chusho.meti.go.jp)

  • 📌 ファイル形式:Excelファイル(地域別・年度別で合計36本以上)

  • 📌 掲載情報:事業者名・都道府県・認定年度(令和6年12月25日以降は公開情報が追加)

  • 📌 更新頻度:毎月更新(認定の翌月に反映)

  • 📌 連携型:複数社が共同申請する「連携事業継続力強化計画」の認定企業は別ファイルで全国一括公開


公認の一覧を見れば、「この取引先は認定を受けているか」を無料で確認できます。金融機関がBCPへの取り組みを融資審査の参考材料にするケースも増えているため、一覧の見方を知っておくだけで情報の使い方の幅が広がります。


中小企業庁の公式ページで最新の認定事業者一覧が確認できます。


「事業継続力強化計画」認定事業者一覧|中小企業庁(経済産業省)


事業継続力強化計画の認定企業数と普及率の実態

2025年11月末時点での累計認定件数は全国で91,369件(中小企業庁公表)に達しています。制度が始まった令和元年(2019年)からわずか数年でこれほどの規模に膨らんだのは、制度設計のシンプルさが受け入れられたためです。


ただ、この数字には重要なコンテキストが必要です。全国には約350万社の中小企業が存在しますが、認定件数は全体の約2~3%にとどまります。取得率がまだ2%台という水準です。都道府県別に見ると、兵庫県で4,097件など、地域差も大きく出ています。


実際に普及率を調べると、ある都道府県では中小企業が14万社以上あるにもかかわらず、認定件数が287件しかないというデータも存在します。普及率にして約0.2%という数値は、制度の認知度がまだまだ低い実態を示しています。



  • 📊 全国累計認定件数:91,369件(令和7年11月末時点)

  • 📊 全中小企業に占める取得率:約2〜3%程度

  • 📊 単独型の更新率(2回目以降):約6.3%

  • 📊 連携型(複数社共同申請)の更新率:約23.5%

  • 📊 BCP策定率(中小企業):約16.5%(中小企業庁報告書より)


注目すべきは更新率の低さです。単独型の更新率はわずか6.3%で、93%以上の企業が「取って終わり」の状態になっているのが現実です。3年後に期限が切れても再申請しない企業が大多数という点は、金融機関から見て取引先の評価を考える際にも参考になります。普及率が低いということは、今の段階で取得しておけば差別化に直結するともいえます。


事業継続力強化計画の認定企業が受けられる5つの金融メリット

認定を受けるメリットは「防災の心がけ」だけではありません。非常に具体的な金融・経済メリットが5つあります。これが原則です。


① 日本政策金融公庫による低利融資
設備資金について、基準利率から0.9%引き下げた金利で融資を受けられます。貸付限度額のうち最大4億円まで金利優遇の対象となり、設備資金は20年以内、長期運転資金は7年以内という長期での借入れが可能です。


② 信用保証枠の拡大(別枠追加)
民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会の保証が通常枠とは別枠で追加されます。普通保険で最大2億円、無担保保険で最大8,000万円、特別小口保険で最大2,000万円が別枠として追加されます。これだけで、実質的に借入できる上限額が2倍に広がる計算です。


③ 防災・減災設備への税制措置(特別償却16%)
認定を受けた計画に基づき取得した設備について、取得価額の16%の特別償却が適用されます。自家発電設備、揚水ポンプ、耐震・制震・免震装置、止水板など幅広い設備が対象です。機械・装置は100万円以上、器具・備品は30万円以上、建物附属設備は60万円以上が取得価額の要件です。つまり100万円の自家発電設備を購入した場合、初年度に16万円分を追加で損金計上できます。


④ 補助金審査での加点措置
ものづくり補助金など、国が実施する一部の補助金審査において認定企業は加点されます。補助金の採択競争率は高く、1点の差が採否を分けることも珍しくないため、この加点は実質的な採択率向上に直結します。


損害保険料の割引
損害保険会社のなかには、認定企業に対して保険料の割引を行う企業があります。2023年5月時点で9社の損害保険会社がこの取り組みを実施しており、日本銀行大阪支店の2026年2月付け資料でも「認定企業のリスク実態に応じた保険料割引」として具体的に言及されています。年間の保険料規模によっては、この割引だけで認定申請の手間が十分ペイするケースもあります。


日本銀行大阪支店が令和8年2月に公開した制度解説資料。損害保険会社との連携や認定企業向けの保険料割引についての記述が確認できます。


事業継続力強化計画認定制度について(日本銀行大阪支店、2026年2月)


事業継続力強化計画の認定企業一覧を取引先チェックに使う方法

認定企業一覧は、自社が認定を受ける用途だけでなく、取引先や融資先のリスク評価にも活用できます。金融機関の担当者、投資家、法人営業の担当者にとっては、相手先が「BCP対応済みか否か」を公的データで確認できる数少ないツールのひとつです。


具体的な使い方は以下のとおりです。まず中小企業庁の一覧ページにアクセスし、取引先の所在地に対応する地域ブロックのエクセルファイルをダウンロードします。次に都道府県のシートを開き、Ctrl+Fで会社名を検索するだけです。認定年度と計画の種別(単独型・連携型)も確認できます。


ただし、一覧に記載がないからといって「BCP未対応」と断言はできません。BCPを内部で策定しているが国への申請はしていないケースや、すでに3年の期限が切れて一覧から外れている企業も多いためです。あくまで「国の認定を受けているか否か」の確認ツールとして位置づけるのが正確です。


一方で、一覧に名前がある企業は「少なくとも一度は国の基準を満たした防災・減災計画を策定し、審査を通過した企業」と判断できます。取引先のリスク管理水準を客観的に評価する根拠として使える点は、活用価値が高いといえます。


金融機関の視点で見ると、融資先がBCPを持っているかどうかは「事業継続リスク(貸倒リスク)」の評価に影響します。自然災害で事業が停止した取引先への貸付金は回収が困難になるためです。認定企業一覧を融資審査の補助情報として使う機関も今後増えてくることが予想されます。


制度概要と認定のプロセスについて、中小機構ポータルサイトでわかりやすく解説されています。


「事業継続力強化計画」の認定制度とは|中小企業基盤整備機構 強靭化支援ポータル


事業継続力強化計画の認定で注意すべき3年ルールと更新の落とし穴

認定を受けてから3年が経過すると、原則としてすべての優遇措置が失効します。ここで注意が必要です。


事業継続力強化計画の実施期間は「最大3年」と定められており、期限が過ぎた後は「変更申請」ではなく、新たにゼロから計画を策定して申請し直す必要があります。更新という言葉を使う解説も見られますが、正確には「再申請」に近い手続きです。補助金に加点されていた認定も、期限切れ後は即座に無効になります。


それだけではありません。認定事業者一覧への掲載も、期限が切れると削除されます。つまり、取引先から一覧で確認されていた「認定済み企業」というステータスも失うことになります。


実際のデータとして、単独型ジギョケイの2回目以降の更新率はわずか約6.3%です。制度の手間や存在を忘れてしまうことが大きな要因として挙げられています。認定件数は増えているのに更新率が極端に低い原因のひとつに、「一度取ったから安心」という思い込みがあります。「取って終わり」では意味がないということですね。


税制措置(特別償却16%)も、認定日から1年以内に対象設備を取得・使用開始しなければ適用されないという期間制限があります。認定を受けた後に設備投資のスケジュールを組む際は、この1年以内という制約を必ず確認してください。



  • ⏰ 計画の実施期間:最大3年以内(変更申請は不可、再申請が必要)

  • ⏰ 特別償却の適用期間:認定日から1年以内に設備取得・使用開始

  • ⏰ 申請期限:特になし(随時申請可能)

  • ⏰ 申請費用:無料(書類の郵送費のみ実費)

  • ⏰ 認定後の一覧掲載:翌月更新のタイミングで公表


認定の期限切れを防ぐには、認定日から2年半を過ぎたころに次の計画策定を始めるのが現実的なスケジュールです。中小企業診断士協会連合会が実施する「実効性向上支援事業」(単独型認定企業向け)を活用すると、診断士が訪問して計画のブラッシュアップを支援してくれるため、更新作業の負担を減らせます。3年ルールに注意すれば大丈夫です。


認定後の実効性向上支援(診断士による訪問サポート)の詳細が確認できます。


事業継続力強化計画 実効性向上支援事業(日本中小企業診断士協会連合会)


金融機関・投資家が見落としがちな認定企業一覧の独自活用術

認定企業一覧を単なる「BCP認定の有無の確認」だけに使っていると、そのデータが持つポテンシャルを半分も引き出せていない可能性があります。金融や投資の視点から、一歩踏み込んだ使い方をまとめます。


サプライチェーンの強靭性評価に使う
製造業や建設業では、自社だけがBCP対応していても、仕入先・外注先が被災すれば事業が止まります。取引先が認定企業かどうかを定期的に一覧でチェックすることで、「どのサプライヤーがリスク要因か」を無料で可視化できます。認定されていないサプライヤーに対して計画策定を促す際の、客観的な根拠材料にもなります。


信用調査の補完情報として使う
帝国データバンクやTDB(東京商工リサーチ)などの信用調査報告書には、BCP対応の記載があることがあります。しかし、認定企業一覧で実際に「国の審査を通過しているか」を突き合わせることで、自己申告ベースの情報との差異を確認できます。2025年6月時点の累計認定件数が83,099件(TDB調査時点)であることを踏まえると、信用調査でBCP策定済みとなっている企業の中にも、国の認定を受けていない企業が相当数含まれると考えられます。


公共調達・入札で優位に立つための情報戦略
一部の自治体では、入札参加条件や評価点にジギョケイ取得の有無を反映するケースが出てきています。競合他社が認定を取得しているかどうかを一覧で確認すれば、自社の入札戦略にも活かせます。地域によっては「認定取得企業が当たり前」という状況になりつつあるためです。


ESG・非財務情報の開示ツールとして位置づける
近年、大企業だけでなく中小企業にもESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが求められる場面が増えています。ジギョケイ認定は「S(社会)=事業継続性」や「G(ガバナンス)=リスク管理体制の整備」に対応した取り組みとして位置づけることが可能です。取引先や投資家向けの開示資料に認定番号とロゴマークを掲載することで、非財務情報の可視化に役立ちます。認定ロゴマークは自社の名刺・ウェブサイト・営業資料にも使用できるため、営業活動における信頼の可視化ツールとしても機能します。


帝国データバンクが2025年8月に公開した認定事業者の分析レポート。業種・所在地・規模・損益・業歴別の特徴が詳細にまとめられており、一覧の解釈に役立つデータが揃っています。


事業継続力強化計画認定事業者(2025年度)の分析|帝国データバンク