フレックスタイム制とは簡単に仕組みとメリットをわかりやすく解説

フレックスタイム制とは簡単に仕組みとメリットをわかりやすく解説

フレックスタイム制とは簡単にわかりやすく解説:仕組みからメリット・デメリットまで

フレックスタイム制では1日10時間働いても、その日は「残業ゼロ」になる場合があります。


この記事でわかること
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フレックスタイム制の基本

清算期間・コアタイム・フレキシブルタイムとは何か、仕組みを簡単に解説します。

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残業代・給料への影響

1日8時間超えても残業にならないケースや、逆に給料が減るパターンを詳しく解説します。

⚠️
知らないと損する注意点

コアタイムの遅刻ペナルティや、金融業14.4%の導入率など意外な事実を紹介します。


フレックスタイム制とは何か簡単に説明する


フレックスタイム制とは、あらかじめ決められた「清算期間」の中で、総労働時間の範囲内であれば、日々の始業・終業時刻を従業員が自由に決められる制度です。厚生労働省が「働き方改革」の一環として普及を後押ししており、2019年4月の法改正で清算期間の上限が1か月から3か月に延長されました。


わかりやすくいうと、「月の合計で〇〇時間働けばOK」という枠の中で、毎日の出退勤を自分で調整できる仕組みです。月曜日に早く帰って水曜日に長く働く、というような働き方が合法的にできるようになります。


ただし、「完全自由」というわけではありません。多くの企業では「コアタイム(全員が必ずいる時間帯)」と「フレキシブルタイム(自由に選択できる時間帯)」を設定しており、コアタイム中は出社が義務付けられます。この2つの時間帯の組み合わせが、フレックスタイム制の基本的な構造です。


なお、コアタイムをまったく設けない形態は「スーパーフレックス制」と呼ばれ、ソニーや富士通などの大手企業で導入が進んでいます。つまり、フレックスタイム制はコアタイムのある一般型とない完全自由型の2種類があると覚えておけばOKです。


参考:厚生労働省による制度の公式解説と導入手引きです。清算期間・コアタイムのルールが詳しく説明されています。


フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省


フレックスタイム制の清算期間と総労働時間の計算方法

フレックスタイム制の中核にあるのが「清算期間」と「総労働時間」という2つの概念です。清算期間とは、労働時間の過不足を精算する一定の区切り期間のことで、最短1か月・最長3か月の範囲で会社が設定します。


総労働時間とは、その清算期間内に「合計で何時間働くか」をあらかじめ決めた時間のことです。これがいわゆる所定労働時間にあたります。


たとえば清算期間が1か月(31日)の場合、法定労働時間の上限は177.1時間です。計算式は「週40時間 × 暦日数 ÷ 7日」となります。


清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠(上限)
31日(1か月) 177.1時間
30日(1か月) 171.4時間
92日(3か月) 525.7時間


清算期間が3か月の場合、月をまたいで労働時間を調整できるため、6月に多めに働いた分を8月の夏休み期間に短く調整する、といったことが可能になります。これは共働き家庭や、子どもの夏休みに合わせて休みたい人にとって特に大きなメリットです。


ただし清算期間が1か月を超える場合には注意点があります。それは、月ごとに「週平均50時間」を超えた労働時間については、清算期間の終了を待たずにその月の給与として残業代を支払わなければならないというルールです。


つまり「3か月まとめて精算するから途中はいくら働いてもOK」というわけではなく、月単位の上限チェックも同時に必要になります。清算期間が長いほど柔軟になる一方、管理が複雑になる点も覚えておくと大丈夫です。


フレックスタイム制で残業代と給料がどう変わるか

ここが多くの人が誤解しやすいポイントです。フレックスタイム制では、1日8時間を超えて働いても、その日はすぐに「残業」にはなりません。これは通常の固定時間制とは大きく異なります。


フレックスタイム制における残業(時間外労働)は、清算期間全体の実労働時間が、法定労働時間の総枠を超えた時点で初めて発生します。たとえば1か月(31日)の清算期間で、月の合計が180時間になった場合、上限の177.1時間を超えた約2.9時間分が残業として割増賃金の対象になります。


つまり、1日10時間働いた日があっても、別の日に6時間しか働かなければ、月トータルで上限内に収まれば「残業代ゼロ」になるということです。


逆に、注意が必要なのが「総労働時間が不足した場合」です。清算期間内の実労働時間が所定の総労働時間に満たなかった場合、その不足時間分の給料が差し引かれます。たとえば月の総労働時間を160時間に設定していた場合、実際に150時間しか働けなかったなら、10時間分の賃金が控除される可能性があります。


痛いですね。これがフレックスタイム制の「給料が減る」と言われる原因です。


不足時間は翌月の総労働時間に繰り越すことも可能ですが、その場合も法定労働時間の枠を超えてはなりません。体調不良などで思ったより働けなかった月は、翌月の働き方で調整するという発想が必要です。


参考:フレックスタイム制の残業代・不足時間の計算ルールについて、実務的な解説が充実しています。


フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説|マネーフォワード クラウド


フレックスタイム制のコアタイム遅刻で賃金控除はできない意外な事実

「コアタイムに遅刻したら当然給料が引かれる」と思っている方は多いでしょう。実は、これは法律上の誤解です。


フレックスタイム制では、コアタイムに遅刻したとしても、その月の総労働時間の合計が所定の時間を満たしている限り、会社は遅刻分の賃金を控除することができません。これは厚生労働省も明確にしているルールです。


通常の固定時間制であれば、9時始業に10時出社した場合、1時間分の賃金が控除されます。しかしフレックスタイム制の場合、「1日いつ働いたか」ではなく「月の合計が何時間か」で判断するため、コアタイム遅刻=即賃金控除とはならないのです。つまり、コアタイム遅刻は「給料の問題」ではなく「就業規則のルール違反の問題」という扱いになります。


ただし、賃金控除はできなくても、就業規則に基づいて「懲戒処分」や「人事評価への反映(賞与の減額など)」はできます。コアタイムに何度も遅れていれば、昇給・昇格に影響が出るケースも実際に多いため、「減給にならないからいい」と甘く見るのは危険です。


自分がフレックス勤務の対象で、コアタイムが設定されている場合は、コアタイムの開始時刻には確実に出社するのが原則です。


参考:コアタイム遅刻と賃金控除の関係について、判例を踏まえた実務的な解説があります。


人事担当者必見!フレックスタイム制の「落とし穴」10選と正しい運用法|NEC


フレックスタイム制の金融業における独自視点:導入率14.4%が示す意味

金融業・保険業におけるフレックスタイム制の導入率は、厚生労働省の就労条件総合調査によると14.4%です。全産業平均の約8%と比較すると、金融業は比較的導入が進んでいる業界といえます。


情報通信業(30%)や学術研究・専門技術サービス業(18%)には及ばないものの、金融業・保険業が平均を大きく上回る背景には、オフィスワーク中心の業務スタイルと、高い自己管理能力を持つ人材が多い点があります。


これは使えそうです。


ただし、金融業界でフレックスタイム制が全員に適用されているわけではありません。窓口業務や支店のカウンター担当など、定められた営業時間内での対応が必要な職種には、フレックスタイム制はなじみません。導入は主にバックオフィス業務(経理・人事・システム部門など)やリサーチ・アナリスト職に偏る傾向があります。


金融業界でフレックスタイム制が導入されていない職場に転職を検討する際、「フレックスがある会社=全社員が対象」と思い込んでいると、実際の勤務条件とのギャップが生まれます。求人票に「フレックスタイム制あり」と書かれていても、自分が配属される部署が対象かどうかは、面接時に必ず確認することが重要です。


業界 フレックスタイム制の導入率
情報通信業 30%
学術研究・専門技術サービス業 18%
金融業・保険業 14.4%
全産業平均 約8%


また、フレックスタイム制を採用している金融機関でも、業務の性質上コアタイムを長めに設定しているケースが多く、実質的な自由度は他業界と比べて低い場合もあります。「フレックスタイム制があるから自由な働き方ができる」と単純に判断せず、コアタイムの時間帯や清算期間の長さも確認することが実際の働き方を知る近道です。


フレックスタイム制のメリット・デメリットを整理して正しく活用する

フレックスタイム制のメリットは大きく3つに整理できます。1点目は「ワーク・ライフ・バランスの向上」です。子どもの送迎や通院などを平日に組み込みやすくなり、生活の質が上がります。2点目は「通勤ストレスの軽減」で、ラッシュ時を避けた時間帯に通勤できるため、1日の体力消耗を減らせます。3点目は「生産性の向上」で、自分のパフォーマンスが高い時間帯に集中して働けるため、業務効率が上がりやすいとされています。


一方、デメリットとして見落とせないのが次の点です。


  • ⚠️ コミュニケーションのタイムラグ:出社時間がバラバラになるため、チーム内や取引先との連絡に時間差が生じやすくなります。緊急案件への対応が遅れるリスクがあります。
  • ⚠️ 自己管理能力が試される:自由に使える時間が増えた分、だらけてしまって月末に総労働時間が不足するケースも実際にあります。給料が減る直接原因になります。
  • ⚠️ 勤怠管理の複雑化:会社側の管理工数が増え、給与計算のミスが起きやすくなります。従業員側も自分の残り時間数を常に意識しておく必要があります。


特に注意したいのが、「フレックスタイム制だから残業を命じられることはない」という認識です。これも誤解の一つです。


会社が「今月中に仕上げてほしい」と期限を設けた業務について、従業員が自発的に残業する場合は問題ありません。しかし、会社側が特定の時間帯に業務命令として残業を命じることは、フレックスタイム制の趣旨に反します。フレックスタイム制である以上、始業・終業の決定権は従業員にあるのが原則です。


フレックスタイム制のメリットを最大限に活かすには、月の合計労働時間を週ごとにセルフチェックする習慣が欠かせません。手軽に確認できる勤怠管理アプリ(たとえばジョブカンやキングオブタイムなど)を活用すれば、月末に慌てることなく労働時間を調整しやすくなります。


参考:フレックスタイム制のよくある誤解と正しい運用の考え方について、実務担当者向けに詳しく解説されています。


フレックスタイムの給与計算とは?残業・不足時の注意点|マネーフォワード クラウド




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