
在外子会社の財務諸表を連結する際には、外国通貨で表示された各項目を円貨に換算する必要があります。この換算は財務諸表の項目によって異なる為替レートを使用し、複雑な手続きが求められます。
損益計算書の収益および費用については、原則として期中平均相場(AR:Average Rate)による円換算額を付します。これは事業年度内における1年間の平均相場を意味し、実務の簡便性を考慮した処理です。ただし、決算時の為替相場による円換算額を付することも妨げられていません。
貸借対照表の資産・負債項目については、決算時の為替相場(CR:Current Rate)で換算します。一方、純資産の部については項目ごとに異なる処理が必要となります。
純資産の換算における具体的な処理。
この複数の為替レートを使用した換算により、必然的に貸借差額が発生します。この差額が為替換算調整勘定として処理される仕組みとなっています。
為替換算調整勘定は、在外子会社の財務諸表項目を異なる為替レートで換算することにより生じる貸借差額を調整する科目です。この勘定は連結財務諸表特有の科目であり、連結貸借対照表の純資産の部に計上されます。
為替換算調整勘定の本質的な性格は、在外子会社への投資により生じた「未実現の為替差損益」と考えることができます。そのため、在外子会社に非支配株主が存在する場合には、為替換算調整勘定についても非支配株主持分に按分する必要があります。
税効果会計の適用については特別な留意が必要です。為替換算調整勘定が生じると連結財務諸表固有の一時差異が生じますが、この一時差異は在外子会社への投資を外部へ売却しない限り解消されません。したがって、在外子会社への投資を売却する意思が明確なケースを除き、税効果を認識する必要はありません。
為替換算調整勘定が発生する主な要因。
親子間の外貨建取引については、特別な換算ルールが適用されます。期中に親子間で外貨建取引があった場合、その取引については親会社が換算に用いたレートを使用する必要があります。
この特例処理により、子会社側で期中平均レートを使用した場合と親会社側の取引レートとの間に差額が生じます。この差額は為替差損益として処理され、連結損益計算書に計上されます。
親子間取引の換算における実務的な流れ。
この処理により、親子間取引の消去が適切に行われ、連結財務諸表の整合性が保たれます。
海外子会社との連結決算時には、実務の煩雑さを軽減するため簡便化された為替換算が認められています。刻々と変動を続ける為替レートに合わせて膨大な取引を処理するのは経理業務が過度に複雑になるためです。
実務上認められる簡便化処理。
在外子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社等の貸借対照表項目の換算は、在外子会社等の決算日における為替相場を用いて換算します。この処理により、決算日の違いによる換算の複雑化を防止できます。
在外子会社がさらに子会社(在外孫会社)を有している場合、換算処理はより複雑になります。このような多層構造では、2つの連結方法が認められています。
多層連結における換算方法。
後者の方法を採用する場合、在外子会社と在外孫会社との投資と資本の消去は親会社の連結手続上で実施する必要があります。この際の在外子会社の投資勘定および在外孫会社の支配獲得時の資本勘定については、支配獲得時の為替相場を用いて円貨で記録し、資本連結手続きを行います。
在外孫会社に係るのれんの処理では、決算時レートによって換算され、のれん償却額については他の損益項目と同様に原則として期中平均レートで換算されます。この処理により、外貨建のれんからも為替換算調整勘定が発生することになります。
多層連結構造における為替リスク管理では、各階層での為替変動が最終的な連結財務諸表に与える影響を総合的に評価する必要があります。特に、中間持株会社が存在する場合、為替換算調整勘定の配分計算が複雑になるため、事前のシミュレーションが重要です。
このような複雑な構造では、為替予約等のヘッジ取引を活用した為替リスク管理戦略の検討も重要となります。子会社への純投資に係るヘッジにより生じる換算差額を為替換算調整勘定に計上することで、連結レベルでの為替リスクをある程度軽減できる可能性があります。