
有限責任事業組合(LLP)における**構成員課税(パススルー課税)**とは、組合の事業で得た利益に対し組合段階では法人税を課さず、出資者である組合員への利益分配に直接課税する制度です。この制度により、組合の事業で利益が出た場合、組合を通り越して(パススルーして)その構成員に対して課税が行われる仕組みとなっています。
LLPは法人格を持たない組織であり、民法組合の特例として制度化された事業体です。法人税基本通達14-1-1では、任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属が各組合員に帰属することが明示されており、LLPもこの任意組合等に含まれています。
🔍 意外な事実:LLPで損失が出た場合、組合員の他の事業所得と損益通算が可能となり、節税効果を得られるケースがあります。例えば、個人事業主が別事業で利益を上げている場合、LLPの損失分を差し引いて所得税を計算できるのです。
組合員の当該組合事業に係る損益の額は、原則として当該組合の損益の額のうち分配割合に応じて分配を受け又は負担すべき損益の額となります。組合契約において損益の分配の割合が定められていない場合には、出資割合に従って損益を分配することになります。
具体的な計算方法として、法人税基本通達14-1-1では以下の2つの方法が示されています:
📋 実務上の注意点:実際の利益分配金額にかかわらず、LLPの事業利益を分配割合に応じてあん分した金額が各構成員に課税される点に留意が必要です。現金での分配がなくても、帳簿上の利益に対して課税されます。
国税庁の組合事業による損益の詳細な取扱いについて
LLP自体には法人税が課されないため、組合自体の申告は不必要です。しかし、組合員の税務処理のために、各組合員に対し税務処理上の資料を提供する義務があります。
具体的な税務手続きとして、以下の書類作成・提出が必要です。
提出期限は、組合契約書が定めた計算期間終了の翌年1月31日までとなっています。組合員が個人の場合は支払調書を確定申告書に添付し、法人の場合は分配された利益を法人の収入として処理します。
💡 実務の工夫:多くの税理士事務所では、組合員への分配計算と支払調書作成を同時に行う専用システムを活用し、効率的な税務処理を実現しています。
消費税についても、構成員課税の仕組みが適用されます。LLPの組合事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等について、その組合員が当該組合事業の持分の割合又は利益の分配割合に対応する部分につき、それぞれ資産の譲渡等又は課税仕入れ等を行ったこととして処理されます。
この仕組みにより、消費税の納税義務判定においても分配効果が生じます。例えば、LLPの年商3000万円、組合員4名(個人)で損益分配割合が均等の場合、各人の課税売上は750万円となり、1000万円を下回るため消費税の納税義務が生じないケースが考えられます。
📈 節税効果の実例。
東京地裁令和6年2月16日判決では、組合員としての地位が単なる名義人にすぎず、その収益又は資産の譲渡等に係る対価を享受しない場合の課税関係が問題となりました。
この判決では、有限責任事業組合の組合員が当該組合事業の業務執行に関与しないなど、組合員としての地位が単なる名義人にすぎず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、当該収益は実際に収益を享受する者に帰属するとして課税されることが示されました。
⚖️ 判例のポイント。
実務上は、組合員が実質的に事業に関与し、適切な損益分配を受けることで、構成員課税の適用を確実にすることが重要です。形式的な組合員関係だけでは、税務上の問題が生じる可能性があります。
有限責任事業組合の課税関係に関する最新判例の詳細解説
この構成員課税制度により、LLPは二重課税を回避しながら柔軟な事業運営が可能となり、特に共同研究開発や産学連携などの分野での活用が期待されています。ただし、実務における税務処理や法的リスクを十分に理解した上で活用することが重要です。