
相続登記の免税措置は、土地に限定して2つの特別なケースで適用されます。建物の相続登記は対象外となりますので、この点は必ず覚えておきましょう。
1. 土地を相続した人が相続登記の完了前に死亡している場合
最初の相続(一次相続)で土地を取得した相続人が、相続登記をしないまま亡くなった場合が対象です。この場合、次の相続人が一次相続の相続登記を申請する際の登録免許税が完全に免税されます。
例えば、祖父A→父B→子Cという相続が発生した場合、父Bが祖父Aからの相続登記をしないまま亡くなった時、子Cが父Bの名義にする相続登記の登録免許税が免税になります。
注目すべき点は、父Bがその土地を生前に第三者に売却していたとしても、一次相続についての相続登記の登録免許税は免税となることです。これは意外に知られていない特例といえるでしょう。
2. 相続した土地の評価額が100万円以下である場合
土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合も免税対象となります。令和4年の税制改正により、従来の10万円以下から100万円以下に大幅に拡大されました。
また、同じく令和4年の改正で、市街化区域外の土地に限定されていた条件が撤廃され、市街化区域内の土地も対象になりました。これにより、都市部の小規模な土地でも免税措置を受けられる可能性が高まっています。
相続登記の免税措置を受けるためには、いくつかの重要な要件と期限があります。これらを満たさない場合、免税措置を受けることができませんので注意が必要です。
申請期限は令和9年3月31日まで
当初は令和7年3月31日までの予定でしたが、令和7年度の税制改正により2年間延長され、令和9年3月31日まで適用されることになりました。
相続登記は司法書士などの専門家に依頼しても2~3か月程度の時間を要することがあります。そのため、期限までに確実に登記申請ができるよう、余裕を持って手続きを開始することが重要です。
申請書への記載要件
免税措置を受けるためには、登記申請書に免税の根拠となる法令の条項を正確に記載する必要があります。
この記載を忘れると免税措置を受けられなくなり、一度納付した登録免許税は返還されませんので、十分注意してください。
法務局における相続登記の登録免許税の免税措置について
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html
相続登記の免税手続きは、通常の相続登記手続きに特別な記載を追加するだけで完了します。複雑な追加書類は必要ありませんが、確実に手続きを進めるために詳細を確認しておきましょう。
基本的な手続きの流れ
必要書類一覧
固定資産税評価証明書は、土地の評価額が100万円以下であることを証明する重要な書類です。この評価証明書により土地の評価額を判定できるため、他に特別な添付書類は不要です。
申請書作成のポイント
申請書の「課税価格」欄には固定資産税評価額を記載し、「登録免許税」欄には「租税特別措置法第84条の2の3第○項により非課税」と記載します。
持分での相続の場合は、不動産の評価価格に持分の割合を乗じて計算した価格が課税標準額となります。例えば、評価額200万円の土地の2分の1を相続する場合、100万円となり免税対象になります。
相続登記免税措置により実際にどの程度の節税効果があるのか、具体的な計算方法を理解しておくことで、手続きの価値を正確に把握できます。
登録免許税の基本計算
通常の相続登記では、土地の固定資産税評価額に対して0.4%(1000分の4)の税率で登録免許税が計算されます。
計算例。
一次相続未登記ケースの節税効果
一次相続未登記の免税措置には金額の上限や土地の条件がありません。そのため、評価額の高い土地や多数の土地を相続している場合に、大きな節税効果が期待できます。
例えば、評価額3,000万円の土地の場合。
3,000万円 × 0.4% = 120,000円の登録免許税が完全に免税されます。
複数の土地を相続している場合は、その合計額に対して免税措置が適用されるため、節税効果はさらに大きくなります。
100万円以下土地の節税効果
評価額100万円以下の土地では、最大4,000円の登録免許税が免税されます。金額としては小さく見えますが、小規模な土地を多数所有している場合は、累積で相当な節税効果が期待できます。
また、マンションの敷地権についても適用可能です。分譲マンションの土地持分が100万円以下であれば、免税措置の対象となります。
相続登記の免税措置は、専門家の中でも存在を知らなかったり、適用場面を間違えていたりする場合があります。これは相続人にとって大きな経済的損失につながる可能性があります。
専門家でも知らないケースがある現実
法務局の公式情報によると、この免税措置について十分に理解していない専門家が存在することが指摘されています。特に以下の点で誤解が生じやすいとされています。
適切な専門家選びのポイント
依頼前に免税措置について質問し、正確な知識を持っているか確認しましょう。
令和4年の要件緩和や令和7年の期限延長について正確に把握しているか確認します。
あなたの土地の評価額に基づいて、具体的な節税金額を計算して説明できる専門家を選びましょう。
免税措置を見逃した場合のリスク
一度通常の登録免許税を納付して相続登記が完了してしまうと、後から免税措置を適用することはできません。納付した税金の返還もありませんので、事前の確認が極めて重要です。
特に令和6年4月から相続登記が義務化されており、3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。期限に追われて急いで手続きをする際に、免税措置を見逃すリスクが高まりますので注意が必要です。
国税庁による相続登記の登録免許税免税措置のパンフレット
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018003-081-01.pdf
相続登記の免税措置は、適切に活用すれば大きな節税効果をもたらします。令和9年3月31日までの期限内に、正確な知識を持った専門家と連携して手続きを進めることで、登録免許税の負担を軽減できるでしょう。