
相続人調査は、被相続人の戸籍を調査して法定相続人が誰であるかを調べることを指します。遺産分割や遺産の名義変更等各種手続きをしていく上で「相続人は誰なのか」を確認するために、戸籍謄本等で調べて確定する作業です。
遺産分割協議の有効性を確保するため
遺産分割協議は、相続人全員で成立させる必要があります。一部の相続人だけで協議を成立させても、無効となってしまうため、相続手続きを進めるにあたって相続人調査を行うことは不可欠です。
相続人調査を省略することには、再度遺産分割協議を開催するなど、後々大変な面倒が発生するリスクがあります。万が一、相続人が一人でも漏れていると、その後の遺産分割協議は全て無効となってしまいます。
想定外の相続人が判明する可能性
調査をしてみると過去に別の人と結婚していて子供がいたというケースや、孫や甥姪と養子縁組をしていたというケースがあり、新たな相続人が判明する場合があります。よくあるのは、被相続人に認知した子がいるのを把握できていなくて、戸籍謄本を調べて判明したというケースです。
金融機関等での手続きに必要
金融機関等の手続きでは、相続人であることを客観的に証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人の現在の戸籍の提出を求められます。相続人調査は相続手続きを進める際に、避けては通ることができません。
相続人調査の具体的な作業は、「必要な戸籍を揃えること」になります。被相続人の出生から死亡までの連続した全ての戸籍謄本(戸籍、除籍、改製原戸籍)を取り寄せます。
基本的な調査手順
本籍地の特定方法
被相続人の本籍地がわからない場合、被相続人の最後の住所地の役場にいき、住民票の除票に本籍地を記載してもらうように請求すれば確認できます。戸籍の取得は郵送でも可能です。
法定相続情報証明制度の活用
収集した戸籍一式を法務局に提出すると、相続関係を一覧図にした「法定相続情報一覧図の写し」を無料で発行してもらえます。これを使えば、金融機関や法務局での手続きの際に、戸籍の束を何度も提出する必要がなくなります。
相続人調査では、被相続人の人生の軌跡を戸籍で辿る必要があります。そのため、複数の種類の戸籍謄本が必要になることがあります。
戸籍謄本(現在戸籍)
現在有効な戸籍で、最新の家族関係が記載されています。被相続人が死亡した時点での戸籍がこれに該当します。
除籍謄本
戸籍に記載されていた人全員が死亡や結婚などにより除籍された戸籍です。被相続人が結婚や転籍により別の戸籍に移った場合、元の戸籍が除籍謄本として保管されます。
改製原戸籍(かいせいげんこせき)
戸籍制度の改正により、様式が変更された際の旧様式の戸籍です。昔の戸籍は手書きで作成されており、読み解くのが困難な場合があります。
取得枚数の目安
個別の状況により大幅に異なりますが、人によっては戸籍を何十通も集めなければならないこともあります。本籍地が何度も変わっていたり、相続人が多数であったりすると、戸籍の収集は意外と大変です。
保存期間と取得の注意点
除籍謄本や改製原戸籍の保存期間は150年(平成22年改正前は80年)となっています。古い戸籍が廃棄されている場合もあるため、早めの取得が重要です。
相続人調査は思っているよりもかなり大変な作業です。長い場合には、所要期間が約2ヶ月もかかることがあります。
時間と労力の大幅な削減
戸籍は本籍地のある役所でしか取得できないため、本籍地が何度も変わっていたり、相続人が多数であったりすると、戸籍の収集は意外と大変です。専門家に依頼することで、この煩雑な作業から解放されます。
専門知識による正確な調査
昔の戸籍は様式が違う上に、手書きのものもあるため、読み解くには戸籍に関する知識が必要です。不慣れな方だと戸籍を読み解くことが難解で、相続人を見落とすおそれがあります。
費用対効果の検討
専門家に依頼する場合の費用は、戸籍謄本の発行料(数千円~数万円)にプラスして5万円前後が目安となります。時間や労力、正確性を考慮すると、専門家への依頼は合理的な選択といえます。
対応可能な専門家
相続人調査は、司法書士、行政書士、弁護士などの専門家に依頼することができます。それぞれの専門分野や費用を比較して選択することが重要です。
実際の相続人調査では、様々な複雑なケースに遭遇することがあります。事前に想定される問題を知っておくことで、適切に対処できます。
認知した子が判明するケース
婚外子(非嫡出子)を認知している場合、戸籍にその記載が残ります。父親が認知した子は法定相続人となるため、遺産分割協議に参加する権利があります。認知の事実を家族が知らない場合も多く、調査で初めて判明することがあります。
養子縁組の見落としケース
孫や甥姪との養子縁組、再婚相手の連れ子との養子縁組など、普通養子縁組が行われている場合があります。養子は実子と同じ相続権を持つため、見落とすと大きな問題となります。
前婚での子の存在
離婚歴がある被相続人の場合、前配偶者との間に子がいることがあります。離婚により配偶者は相続人ではなくなりますが、子は引き続き相続人の地位を保持します。
本籍地の頻繁な移転
転勤族や事業経営者などで本籍地を頻繁に移転している場合、戸籍の取得が非常に複雑になります。各地の役所から戸籍を取り寄せる必要があり、時間と費用が大幅に増加します。
戸籍の読み取り困難
明治時代や大正時代の戸籍は、変体仮名や旧字体で手書きされており、現代人には読み取りが困難です。専門的な知識がないと、重要な情報を見落とす可能性があります。
海外居住者がいるケース
相続人の中に海外居住者がいる場合、在外日本領事館での手続きや、現地での公証手続きが必要になることがあります。国際郵便の遅延なども考慮して、早めの対応が必要です。
これらの問題に直面した場合は、無理に自分で解決しようとせず、専門家に相談することをお勧めします。正確で迅速な相続手続きを進めるためには、適切な専門知識とノウハウが不可欠だからです。