
相続放棄をした場合でも、遺族年金を受け取ることができるのは、遺族年金が相続財産ではなく受給者固有の権利として法律で定められているためです。
遺族年金には以下の2種類があります。
これらの年金は、亡くなった方によって生計が維持されていた遺族に対して支給されるものであり、相続によって受け取る財産とは性質が異なります。
法的根拠について
最高裁判所の平成7年11月7日判決において、未支給年金は相続財産ではないという見解が明確に示されています。この判例により、相続放棄をした場合でも年金受給に影響がないことが法的に確定しています。
年金法では相続とは関係なく、独自の立場で遺族年金の受給権を定めているため、相続放棄の手続きを行っても、要件を満たす限り遺族年金を受給することが可能です。
未支給年金とは何か
未支給年金とは、亡くなった年金受給者がまだ受け取っていない年金のことを指します。年金の支給は基本的に毎年偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)に前月と前々月分が支給されるため、亡くなったタイミングによっては受け取れていない年金が発生します。
例えば。
未支給年金の受給権者
未支給年金を受給できる権利がある人は、亡くなった年金受給者とともに生計を立てていた人です。受給順位は以下の通りです。
未支給年金も遺族年金と同様に、相続財産には該当しないため、相続放棄をしても受給することが可能です。
遺族年金の受給要件
遺族基礎年金の受給には以下の要件を満たす必要があります。
遺族厚生年金の場合は、受給対象者の範囲が遺族基礎年金よりも広く設定されています。
受給手続きの流れ
重要な注意事項
民法921条1項では「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、相続を承認したとみなす」と規定されていますが、遺族年金は相続財産に該当しないため、受給していても相続放棄に影響しません。
国民年金関連の給付
遺族基礎年金以外にも、国民年金制度には以下の給付があります。
厚生年金・共済年金関連
厚生年金制度や共済年金制度からも遺族年金が支給されます。
これらすべての年金制度において、相続放棄をしても受給資格に影響はありません。
受給額の計算方法
遺族基礎年金の年額(令和6年度)。
遺族厚生年金の場合は、亡くなった方の厚生年金加入期間や平均標準報酬額に基づいて計算されます。
最適な手続きタイミング
相続放棄と遺族年金受給の手続きには、それぞれ異なる期限が設定されているため、戦略的なタイミング調整が重要です。
相続放棄の期限。
遺族年金の申請。
同時進行のメリット
遺族年金の受給手続きと相続放棄手続きを同時に進めることで、以下のメリットがあります。
専門家への相談タイミング
複雑な状況では専門家への早期相談が効果的です。
遺族年金に関する詳細な情報は日本年金機構の公式サイトで確認できます。
https://www.nenkin.go.jp/
税務上の取り扱い
遺族年金は所得税の課税対象外となるため、確定申告の必要はありません。一方で、相続税の計算には含まれないため、相続税対策としての効果はありません。
相続放棄を検討している場合でも、遺族年金は確実に受給できる貴重な収入源となります。手続きの順序や期限を正しく理解し、適切なタイミングで申請を行うことで、経済的な不安を軽減しながら相続問題に対処することが可能です。