所定外労働の免除と育児の知らないと損する全知識

所定外労働の免除と育児の知らないと損する全知識

所定外労働の免除と育児の基本から申請の注意点まで

時短勤務を使えば残業もゼロになると思っていませんか?実は、時短勤務だけでは残業は免除されず、所定外労働の免除を別途申請しないと残業を命じられても断れません。


📋 この記事の3つのポイント
📅
2025年4月から対象が大幅拡大

「3歳未満」だった対象が「小学校就学前(6歳)」まで拡大。より多くの育児中の労働者が残業免除を申請できるようになりました。

⚠️
自動適用ではなく「申請が必要」

この制度は本人の申請があって初めて効力を発揮します。申請しなければ残業を断る権利は生まれません。手続き方法を正しく知ることが大切です。

💰
固定残業代・給与への影響を把握する

申請すると固定残業代(みなし残業手当)が減額されるケースがあります。収入への影響を事前に確認しておくことが、家計管理の観点からも重要です。


所定外労働の免除(育児)とは何か?時間外労働の制限との違い

所定外労働の免除とは、育児・介護休業法(第16条の8)にもとづく制度で、一定の年齢以下の子を養育する労働者が申請した場合に、会社が所定労働時間を超える残業をさせることを禁じるルールです。つまり、定時以降に働かせることを完全にゼロにする制度、というのが正確な理解です。


ここで多くの人が混同しやすいのが「時間外労働の制限」との違いです。


| 制度名 | 対象年齢 | 内容 |
|---|---|---|
| 所定外労働の免除 | 小学校就学前まで(2025年4月改正後) | 所定労働時間を超える残業をゼロにする |
| 時間外労働の制限 | 小学校就学前まで | 法定労働時間超の残業を月24時間・年150時間以内に制限する |


つまり、所定外労働の免除は「残業ゼロ」、時間外労働の制限は「残業を一定量に抑える」という点で大きく異なります。結論は、「完全に残業したくない」場合は所定外労働の免除を選ぶ、ということです。


さらに重要な点があります。両者は請求時期が重複しないように申請する必要があります。同時に利用することはできないため、どちらの制度を使うかを状況に応じて選択しなければなりません。


また、「所定労働時間」という言葉にも注意が必要です。これは就業規則に定められた始業・終業時間によって決まる「会社ごとの定時」を指しており、労働基準法が定める「1日8時間・週40時間」という法定労働時間とは異なります。たとえば就業規則上の所定労働時間が7時間の会社であれば、7時間を超えた時間がすべて「所定外労働」となります。


所定外労働の免除と時間外労働の制限、違いをしっかり把握しておきましょう。


厚生労働省による育児・介護休業法の公式解説ページ(制度の対象者・手続き方法を網羅):
所定外労働の制限(残業免除)|育児休業制度特設サイト – 厚生労働省


所定外労働の免除の申請方法と育児中の手続きの流れ

この制度は「申請制」です。対象となる年齢の子を養育しているだけでは自動的に適用されません。本人が会社に対して申し出をして、初めて効力が生じます。申請しないまま残業を続けていても、制度上の権利は主張できないため注意が必要です。


申請には以下の情報を書面(またはメール・FAX等、会社が認めた方法)で提出する必要があります。


- 請求の年月日
- 申請する労働者の氏名
- 対象となる子の氏名・生年月日・続柄
- 免除を希望する期間(開始日・終了日)
- 対象の子が養子の場合は養子縁組の効力が生じた日


申請のタイミングにも厳格なルールがあります。制度の利用を始めたい日(制限開始日)の1か月前までに申し出なければなりません。また、1回の申請で設定できる期間は「1か月以上1年以内」と決まっています。この期間ルールは原則です。ただし、申請自体は何度でも行えます。


つまり「1年ごとに更新申請する」という運用が一般的になります。申請期限の1か月前を過ぎてしまうと、希望の開始日から使い始めることができなくなるため、カレンダーにリマインダーを設定しておくことを強くおすすめします。


一方で会社が申請を断れるケースも存在します。それは「事業の正常な運営を妨げる場合」です。ただし、この理由は非常に厳格に判断されます。単に「業務が忙しい」「その人でないとできない」という理由だけでは認められず、会社は通常考えられる相当の努力(人員の再配置など)を行った上でなお困難な場合でなければ、拒否することはできません。


申請を拒否された場合には、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」に相談することが最初のステップとなります。


所定外労働の免除が育児中の固定残業代に与える影響

意外と見落とされやすいのが、固定残業代(みなし残業手当)への影響です。金融機関で働くような残業が多い職場に限らず、給与に固定残業代が含まれている人は特に注意が必要です。


固定残業代とは、毎月一定額の残業代をあらかじめ給与に含めて支給する仕組みで、「月20時間分の残業代込み」といった形で設定されることが多いです。所定外労働の免除を申請すると、残業が実質ゼロになるため、残業を前提に支払っていた固定残業代の全部または一部が減額されるケースがあります。


ここが実はお金に直結するポイントです。


ただし、固定残業代を全額不支給にすることが常に合法かというと、そうとも限りません。全社の平均残業時間がみなし残業時間を大きく下回っている場合、差分については「恒常的に支給されている手当」と見なされ、全額カットは不利益変更と判断されるリスクがあります。


裁判例においても「実態と乖離した形での固定残業代の不支給は違法」と判断されたケースがあります。会社から固定残業代の減額を提示された場合は、まず「全社平均の残業時間」と「みなし残業時間の設定」の両方を確認することが重要です。


減額の説明があった際は、口頭だけで同意するのではなく、書面での確認を取るのが鉄則です。申請前に給与明細と就業規則の両方を照らし合わせ、固定残業代がいくら含まれているかを確認しておきましょう。


固定残業代の取り扱いに関する実務的な解説(所定外労働免除申請時の留意点を含む):
所定外労働時間免除時等の固定残業代の扱い – HUMANLINK


所定外労働の免除の対象外となる育児中の労働者の条件

「育児中なら誰でも使える制度」と思い込むと、後で申請を断られてもなぜ断られたかわからないことになります。実は対象から外れるケースがはっきりと法律で定められています。


まず法律上、最初から制度の対象外となる人がいます。


- 日々雇用(日雇い)の労働者:雇用形態の性質上、対象外です。


- 労働基準法第41条該当者(いわゆる管理監督者):労働時間規制が適用されない立場にある人は、この制度の対象にもなりません。


「管理監督者」については注意が必要です。会社から「管理職」と呼ばれていても、実態が管理監督者に当たらない場合は、この制度の対象となります。逆に、「主任」や「係長」という肩書でも、労務管理における経営者と一体的な立場にある場合は適用外になり得ます。肩書ではなく、実態で判断されます。


次に、労使協定が締結されている会社の場合、以下の人を対象外にできます。


- 入社1年未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者


週2日以下で働いているパートタイムの方は対象外になる可能性があります。ただし、これは労使協定がある場合に限られます。労使協定がなければ、週2日勤務の方も原則として対象です。


なお、配偶者が専業主婦(夫)であることや育児休業中であることを理由に対象から外すことは認められていません。これは2010年の法改正で廃止されています。配偶者が育休中だからという理由で申請を断られた場合は、明確な違法行為です。


育児中の労働者に対する就業制限ルール一覧(制度比較も確認できる詳細解説):
【育児期間中の残業免除】育児中労働者の時間外労働免除について – 東和社会保険労務士事務所


2025年4月改正で所定外労働の免除が育児に与えた変化と今後の活用法

2025年4月1日に施行された育児・介護休業法の改正は、所定外労働の免除に関して大きな転換点となりました。これまで「3歳未満の子を養育する労働者」に限られていた対象が、「小学校就学前(6歳)の子を養育する労働者」にまで拡大されたのです。


この変化の意味は大きいです。


小学校入学前の子を持つ親にとって、保育園の送り迎えや習い事への対応など、定時後の時間が必要な場面は非常に多くあります。これまでは子が3歳を超えると制度が使えなくなり、フルタイム勤務と育児の板挟みになるケースが多くありました。それが小学校入学前まで使えるようになったことで、働く親の選択肢が大きく広がりました。


申請ルールは以前と変わらず「1か月前までに、1か月〜1年以内の期間を指定して申し出る」です。2025年4月以降に子が3歳を迎えた方、または改正前に3歳を超えていてこれまで制度を使えなかった方も、改めて申請できます。まず会社の担当部署(人事・総務)に問い合わせてみることが最初のアクションです。


さらに2025年10月施行分では、3歳から小学校就学前の子を持つ労働者向けに「柔軟な働き方支援措置」も義務化されました。これは時短勤務・フレックスタイム・テレワークなど複数の選択肢の中から会社がメニューを整備し、従業員が選べるようにする制度です。所定外労働の免除と組み合わせながら活用できる可能性があります。


なお、会社がこれらの義務に違反した場合には行政指導・是正勧告が行われます。勧告に従わない場合は企業名が公表されるほか、虚偽の報告などがあった場合には20万円以下の過料が科されます。育児中に権利を侵害されたと感じたら、各都道府県の労働局「雇用環境・均等部(室)」に相談するルートを覚えておきましょう。


厚生労働省 育児介護休業法 令和7年改正の公式ポイント解説(所定外労働の対象拡大を含む):
育児・介護休業法 令和7年(2025年)改正のポイント – WAM NET