

月給制の正社員でも、最低賃金を下回ると会社が50万円以下の罰金を科される可能性があります。
2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,121円となりました。前年度の1,055円から66円の引き上げで、1959年の制度開始以来、最大の上昇幅を記録しています。引き上げ率は6.3%です。
重要なポイントが1つあります。2025年度はついに全47都道府県で時給1,000円を突破しました。これは日本の賃金史における大きな転換点です。
下表に、2025年度の全国都道府県別最低賃金ランキングを掲載します。
| 順位 | 都道府県 | 最低賃金(円) | 前年比(円) | 発効日 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 1,226 | +63 | 2025年10月3日 |
| 2位 | 神奈川県 | 1,225 | +63 | 2025年10月4日 |
| 3位 | 大阪府 | 1,177 | +63 | 2025年10月16日 |
| 4位 | 埼玉県 | 1,141 | +63 | 2025年11月1日 |
| 5位 | 千葉県 | 1,140 | +64 | 2025年10月3日 |
| 5位 | 愛知県 | 1,140 | +63 | 2025年10月18日 |
| 7位 | 京都府 | 1,122 | +64 | 2025年11月21日 |
| 8位 | 兵庫県 | 1,116 | +64 | 2025年10月4日 |
| 9位 | 静岡県 | 1,097 | +63 | 2025年11月1日 |
| 10位 | 三重県 | 1,087 | +64 | 2025年11月21日 |
| 11位 | 広島県 | 1,085 | +65 | 2025年11月1日 |
| 12位 | 滋賀県 | 1,080 | +63 | 2025年10月5日 |
| 13位 | 北海道 | 1,075 | +65 | 2025年10月4日 |
| 14位 | 茨城県 | 1,074 | +69 | 2025年10月12日 |
| 15位 | 栃木県 | 1,068 | +64 | 2025年10月1日 |
| 16位 | 岐阜県 | 1,065 | +64 | 2025年10月18日 |
| 17位 | 群馬県 | 1,063 | +78 | 2026年3月1日 |
| 18位 | 富山県 | 1,062 | +64 | 2025年10月12日 |
| 19位 | 長野県 | 1,061 | +63 | 2025年10月3日 |
| 20位 | 福岡県 | 1,057 | +65 | 2025年11月16日 |
| 21位 | 石川県 | 1,054 | +70 | 2025年10月8日 |
| 22位 | 福井県 | 1,053 | +69 | 2025年10月8日 |
| 23位 | 山梨県 | 1,052 | +64 | 2025年12月1日 |
| 24位 | 奈良県 | 1,051 | +65 | 2025年11月16日 |
| 25位 | 新潟県 | 1,050 | +65 | 2025年10月2日 |
| 26位 | 岡山県 | 1,047 | +65 | 2025年12月1日 |
| 27位 | 徳島県 | 1,046 | +66 | 2026年1月1日 |
| 28位 | 和歌山県 | 1,045 | +65 | 2025年11月1日 |
| 29位 | 山口県 | 1,043 | +64 | 2025年10月16日 |
| 30位 | 香川県 | 1,036 | +66 | 2025年10月18日 |
| 31位 | 大分県 | 1,035 | +81 | 2026年1月1日 |
| 32位 | 熊本県 | 1,034 | +82 | 2026年1月1日 |
| 33位 | 愛媛県 | 1,033 | +77 | 2025年12月1日 |
| 33位 | 島根県 | 1,033 | +71 | 2025年11月17日 |
| 33位 | 福島県 | 1,033 | +78 | 2026年1月1日 |
| 36位 | 山形県 | 1,032 | +77 | 2025年12月23日 |
| 37位 | 宮城県 | 1,038 | +65 | 2025年10月4日 |
| 38位 | 秋田県 | 1,031 | +80 | 2026年3月31日 |
| 38位 | 岩手県 | 1,031 | +79 | 2025年12月1日 |
| 38位 | 長崎県 | 1,031 | +78 | 2025年12月1日 |
| 41位 | 鳥取県 | 1,030 | +73 | 2025年10月4日 |
| 41位 | 佐賀県 | 1,030 | +74 | 2025年11月21日 |
| 43位 | 青森県 | 1,029 | +76 | 2025年11月21日 |
| 44位 | 鹿児島県 | 1,026 | +73 | 2025年11月1日 |
| 45位 | 高知県 | 1,023 | +71 | 2025年12月1日 |
| 45位 | 宮崎県 | 1,023 | +71 | 2025年11月16日 |
| 45位 | 沖縄県 | 1,023 | +71 | 2025年12月1日 |
| — | 全国加重平均 | 1,121 | +66 | — |
出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」のデータをもとに作成。
参考リンク(都道府県別の最新最低賃金額の確認に)。
厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧
最高額の東京都(1,226円)と最低額の高知・宮崎・沖縄(1,023円)の差は203円です。1日8時間・週5日フルタイムで働いた場合、1ヵ月(約22日)で約35,700円もの差がつく計算になります。これは地方と都市の賃金格差が依然として大きいことを示しています。
地域間格差はあります。ただし2025年度は、地方部での引き上げ率が高くなっており、格差縮小の傾向は続いています。
2025年度の最低賃金引き上げが過去最大となった理由を理解するには、近年の賃金政策の流れを押さえる必要があります。
2022年度から2025年度にかけての最低賃金の推移は次の通りです。
| 年度 | 全国加重平均 | 前年比(円) | 引き上げ率 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 961円 | +31 | 3.3% |
| 2023年度 | 1,004円 | +43 | 4.5% |
| 2024年度 | 1,055円 | +51 | 5.1% |
| 2025年度 | 1,121円 | +66 | 6.3% |
2025年度の引き上げ幅66円は、2022年度の31円と比べると約2倍以上です。増加幅が急速に拡大しているのがわかります。
背景には2つの大きな要因があります。1つ目は長引く物価高騰への対応です。2022年以降の円安や原材料費の高騰により生活コストが上昇し続けており、最低賃金の引き上げで実質的な生活水準を守る必要に迫られました。2つ目は、政府が掲げる「2020年代中に全国平均1,500円」という目標の実現です。現状の1,121円から1,500円へ到達するには、単純計算で年平均75円超の引き上げが必要になります。厳しいペースですね。
金融市場への影響という視点でも最低賃金引き上げは注目されています。消費支出の増加は国内消費を底上げするため、内需関連株にとってポジティブな材料となります。一方で、人件費が上昇した中小企業の業績悪化リスクにも注意が必要です。これは投資家なら知っておくべき情報です。
参考リンク(最低賃金引き上げと生活・経済への影響を解説した記事)。
最低賃金の計算は「時間給との比較」で行います。ここが落とし穴になりやすいポイントです。
時給制の場合はシンプルです。支払われる時給そのものが最低賃金以上であればOKです。問題は月給制の場合で、次の計算式を使います。
月給制の時給換算 = 月給 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額
たとえば東京都で月給20万円・1ヵ月の所定労働時間が163時間の正社員の場合、時給換算すると約1,227円です。東京都の最低賃金1,226円をわずか1円上回るだけとなります。ほぼ最低ラインということですね。
重要なのは、月給の中に含まれる手当のうち、最低賃金の計算対象外となるものが存在する点です。以下の手当は計算から除外します。
具体的な例で確認しましょう。基本給16万円+通勤手当1万円+残業代2万円=月給19万円の従業員がいる場合、最低賃金の計算対象は基本給の16万円のみです。所定労働時間が163時間とすると、時給換算で約981円になります。東京都では1,226円を大きく下回り、最低賃金違反となる危険性があります。
対象外の手当が多いほど計算上の時給が下がりやすいという点に注意が必要です。
参考リンク(最低賃金の計算方法を厚労省が公式解説)。
厚生労働省|最低賃金額以上かどうかを確認する方法
最低賃金法に違反した場合のリスクは、想像以上に深刻です。罰則が厳しいということですね。
最低賃金法第40条には「50万円以下の罰金」が定められています。これは法人への適用もあります。さらに罰金だけではなく、以下のような連鎖リスクも発生します。
3年分の差額遡及というのは、数字にすると非常に大きなインパクトがあります。月給で1,000円不足していた従業員が5名いた場合、月あたり約8万円、3年間で約300万円の追加支払いが発生するケースもあります。
東京商工リサーチの調査(2025年10月)では、「最低賃金を下回る時給での雇用がある」と回答した企業が27.1%に達しています。約4社に1社は要注意という状況です。特に注意が必要なのは、アルバイト・パートではなく月給制の正社員やパート従業員に「みなし残業」や各種手当を多く付けているケースです。手当を除いた基本給が実は最低賃金を割っている可能性があります。
中小企業がこのリスクを防ぐために活用できる制度として「業務改善助成金」があります。賃金引き上げと設備投資を同時に行う場合、最大600万円の助成を受けられる可能性があります。
参考リンク(最低賃金違反の罰則と企業リスクを社労士が解説)。
社労士事務所Steady|最低賃金を守らないとどうなる?企業が負う罰則・リスクと防止策
「最低賃金は地域別に1種類だけ」と思っていると、見落としが生じることがあります。実は最低賃金には2種類あります。
1つ目は「地域別最低賃金」で、都道府県ごとに設定され全労働者に適用されるものです。2つ目は「特定(産業別)最低賃金」で、特定の業種に従事する労働者に適用されるものです。全国で223件が設定されています(2025年1月現在)。
特定最低賃金は地域別最低賃金より高く設定されるのが原則です。例として、北海道の「電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業」の特定最低賃金は1,116円で、北海道の地域別最低賃金1,075円を41円上回っています。
自動車製造業や鉄鋼業など技術水準の高い産業では、地域の最低賃金よりも高い金額が設定されているケースが目立ちます。これが条件です。
地域間の賃金格差という観点でも、興味深いデータがあります。2002年頃は最高額に対する最低額の割合が約85%と格差は小さめでしたが、2006年以降に格差が急拡大し、近年は徐々に回復傾向にあります。2025年度は地方部の引き上げ率(7〜8%台)が都市部(5〜6%台)を上回る形で設定されており、格差縮小が加速しています。
金融面での見方をすると、地方の賃金引き上げは地方銀行や地域密着型の小売・サービス業の消費底上げにもつながります。地方関連銘柄の動向を把握する際の参考データとして活用できます。これは使えそうです。
参考リンク(特定最低賃金の対象業種を全国一覧で確認できる公式サイト)。
厚生労働省|特定(産業別)最低賃金全国一覧
最低賃金の引き上げ動向は、個人投資家や金融に関心のある方にとって、重要なマクロ経済指標の1つです。単なる労働者の話にとどまりません。
現政権は「2020年代中に全国平均1,500円」という目標を維持しています。現状の1,121円からこの目標を達成するには、残り5年弱で計379円の引き上げが必要です。単純計算で年約75〜80円の引き上げが求められますが、2025年度の実績は66円でした。目標達成はかなり厳しいペースです。
最低賃金の上昇が金融市場に与える影響は、主に次の3つの経路で考えられます。
日本の最低賃金の国際的な位置づけも重要です。OECDの常勤労働者の中央値に対する比率でみると、日本は法定最低賃金制度を持つ30カ国中で下から5番目という低い水準にあります。欧米主要国と比べると、まだ引き上げ余地があるとも解釈できます。
投資家としての実践的なアクションとしては、毎年8〜9月頃に公表される最低賃金審議会の答申に注目することが挙げられます。その数値は、秋以降の国内景気・消費動向を読む上での先行指標になり得ます。最低賃金の引き上げ幅が大きい年は、消費関連セクターへの資金流入が強まりやすい傾向があるためです。
参考リンク(最低賃金と実質賃金・日本経済の関係を専門家が解説)。
三菱UFJ信託銀行|経済指標の見方・読み方~日本の雇用環境:人手不足と賃上げ~