
休業手当は労働基準法第26条により定められた制度で、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に適用されます。この制度は、会社都合で労働者が働けない状況に対する最低限の生活保障を目的としています。
参考)労働基準法第26条とは?休業手当についてわかりやすく解説!
使用者の責に帰すべき事由とは、経営不振による操業停止、機械故障による休業、資材不足による作業停止などが含まれます。判例では、天災事変などの不可抗力を除き、かなり広範囲の事由が対象となると解釈されており、労働者の生活保障のため使用者の帰責事由の範囲は広く設定されています。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/financial-aid-during-closure/
🔍 意外な事実として、監督官庁の勧告による操業停止や親会社の経営難による資金・資材の獲得困難も「使用者の責に帰すべき事由」に該当します。これは労働者保護の観点から、使用者により厳格な責任を課している結果といえるでしょう。
参考)労働相談Qhref="https://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/qa/data/QA_08.html" target="_blank">https://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/qa/data/QA_08.htmlamp;A|8.休業中の賃金
休業補償は労働基準法第76条および労働者災害補償保険法により規定された制度で、業務中または通勤中の負傷・疾病による休業が対象となります。労災保険の休業補償給付では、休業開始4日目以降について給付基礎日額の60%が基本給付として支給され、さらに特別支給金として20%が加算されるため、合計80%の補償を受けることができます。
参考)労災の休業補償とは?わかりやすい解説まとめ - 咲くやこの花…
労災認定の要件として、業務上の事由または通勤による病気・怪我で療養中であること、療養のために労働できない期間が4日以上であること、事業主から賃金を受けていないことの3つが必要です。
⚡ 注目すべき点として、労働基準法の休業補償は業務災害のみが対象ですが、労災保険では通勤災害も対象となり、この場合の給付は「休業給付」という名称で呼ばれます。ただし、通勤経路から外れた場所での事故や業務外の事情が強く影響する疾病は対象外となる可能性があります。
休業手当の計算は平均賃金の60%以上という基準で行われ、平均賃金は「休業開始前3か月間の賃金総額÷その期間の暦日数」で算出されます。1日の一部を休業させた場合でも、その日について全体として平均賃金の60%までは支払う必要があり、現実に働いた時間分の賃金が60%に満たない場合は差額の支払いが必要です。
参考)休業手当|WEB労政時報
休業手当は賃金として扱われるため所得税の課税対象となり、通常の賃金支払日に一括して支給することも可能です。会社が直接支給する義務があり、支給元は使用者となります。
参考)【お役立ち情報】「休業手当」と「休業補償」
📊 実務上の特徴として、健康診断結果に基づく休業指示や正当な争議行為であるロックアウト期間中は、使用者の責に帰すべき事由とはならないため休業手当の支払い義務はありません。
休業補償の申請は労働者本人が休業補償給付支給請求書(様式第8号)を労働基準監督署に提出することで行われます。申請には事業主による休業証明や賃金証明、医師による労務不能の証明が必要となります。
参考)休業補償とは?休業手当との違いや計算方法について解説
労災保険から支給される休業補償は原則として被災労働者の個人口座に直接振り込まれますが、受任者払い制度を利用することで会社が立替払いを行い、後に労災保険から会社が受け取ることも可能です。この制度により労働者の生活への配慮と、会社側の社会保険料回収の円滑化を図ることができます。
🏥 特筆すべき制度として、労災指定医療機関では「現物給付」により治療費の直接支払いが行われますが、指定外医療機関では「費用支給」として後日費用を直接支給する仕組みが採用されています。
参考)労災給付の種類
税務上の取扱いは両制度で大きく異なります。休業手当は給与所得として所得税の課税対象となる一方、休業補償は所得税法の規定により非課税となります。この違いは、休業手当が労働の対価としての性質を持つのに対し、休業補償が災害補償としての性質を持つことに起因しています。
参考)https://www.kubokaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/zatsugaku_vol_22.pdf
休業補償と同様に、療養補償や障害補償なども非課税所得として扱われるため、これらの補償金を賃金と合算して所得税計算を行わないよう注意が必要です。
💰 金融業界で知っておくべき重要なポイントとして、労災保険から支給される各種給付は非課税のため、顧客の所得計算や融資審査における収入評価では、これらの性質の違いを正確に把握することが求められます。
参考)No.1905 労働基準法の休業手当等の課税関係|国税庁