

あなたが「信用が回復すれば株は上がる」と思っているなら危険です—信用拡大期の90%はすでに利上げが始まっています。
クレジットサイクルとは、信用の拡大と収縮が繰り返される金融市場の「周期」です。中央銀行の金利政策、金融機関の貸し出しスタンス、企業や家計のリスク許容度などが複雑に絡み合い、景気全体を左右します。
たとえば、2010年代の米国では信用残高がGDPの約1.5倍にまで拡大しました。信用拡大期には企業業績が良く見え、株価が急上昇しますが、それが過剰になると一気に逆回転します。つまり信用が成長のエンジンであると同時に、暴落の引き金にもなる構造です。
信用拡大と景気にはタイムラグがあります。過剰融資のピークは景気の転換点の半年〜1年ほど前に現れます。つまり注意が必要です。
これを理解すれば、景気の変調を早めに察知するヒントになりますね。
信用サイクルを読む上で重要なのが「利回りスプレッド」です。Baa格付の社債利回りと国債利回りの差は、信用市場の温度計とも呼ばれます。
たとえば2023年初頭、米国のスプレッドは約1.3%と過去10年で最低水準にありました。この時期、投資家は「リスクを十分に評価していない」と言われていました。半年後、FRBの利上げ局面でスプレッドは2.3%まで急拡大。この1%の変化で、ハイイールド債市場では数兆円規模の損失が発生したのです。
つまり、クレジットサイクルの「後半」で利回りが高く見えても、それは罠のことが多いです。スプレッド拡大期は、信用リスクの顕在化期にあたります。ここに注意すれば大丈夫です。
このようなデータはBloombergや日本取引所グループの統計ページで確認できます。
(参考リンク:スプレッドの推移データの確認に便利です)
JPX統計データ
信用収縮は、企業の資金繰りに最も直接的に影響します。たとえば日本銀行の「貸出態度DI」(銀行の貸出方向を示す指数)が-10を下回ると、実際に企業倒産件数が平均で翌期+12%増加しています。
2020年春、新型コロナ禍でこの指数が一時-25まで下落しました。その結果、資金繰り支援を受けられず自主廃業に追い込まれた中小企業が約7,800社にも上りました。痛いですね。
信用収縮の兆候は何か。貸出の増加ペースが鈍化し始めたときです。利上げ直後より、むしろ「利上げが止まったあと」に急激な引き締めが起こることが統計的に多いのです。つまり落ち着いた頃が危険期です。
この動きを読むなら、日本銀行の短観を定期的にチェックするのが有効です。
日本銀行 短観データ
多くの投資家は「景気が良ければ株も社債も上がる」と考えます。しかし現実には、多くの局面で逆に動きます。
理由は、株式市場が「期待」で動くのに対し、債券市場は「信用コスト」で動くからです。たとえば2022年後半、日本円建てハイイールド債の利回りが5.1%に達した時期、TOPIXは一時的に上昇していましたが、その3カ月後には企業決算悪化で下落に転じています。
つまり、債券市場が先に悲鳴を上げ、株が後追いで崩れる流れです。スプレッド拡大は信用リスクの赤信号ということですね。
このズレを理解すれば、大局的な投資判断が変わるはずです。結論は、債券市場のリスク信号を軽視しないことです。
クレジットサイクルを見分けるには、以下の3点がポイントです。
- 商業銀行の融資姿勢(貸出態度DI)
- 社債スプレッド(リスクプレミアム)
- 政策金利の転換点
これらを同時に観察することで、サイクルのどこにいるかが見えてきます。早い段階でポジションを軽くする判断ができれば、損失を防げるケースは多いです。
逆に、信用収縮期に「バーゲン」と勘違いして投資する人は多く、結果的に資産を半減させるケースも少なくありません。厳しいところですね。
リスクを抑えたい場合は、短期国債やキャッシュ比率を高める戦略が有効です。これは使えそうです。