
加熱式たばこは、従来の紙巻きたばことは異なる課税方式が適用されています。現在の税制では、紙巻きたばこと加熱式たばこの間には明確な税率の差があります。具体的には、紙巻きたばこ1箱あたりの税額が304.88円であるのに対し、加熱式たばこは252.67円と約50円の差が存在しています。
この税率差が生じている主な理由は、加熱式たばこが「パイプたばこ」として分類され、重量に基づいて課税されているためです。加熱式たばこは1本あたりの重量が比較的軽いため、価格に占める税の割合が低くなっています。
現在の加熱式たばこ製品別の課税状況を見てみると、以下のような違いがあります。
一方、紙巻きたばこ1箱(定価440円)の税額は244.88円で、課税割合は55.7%となっています。このように、同じたばこ製品でも種類によって税負担に大きな差があるのが現状です。
加熱式たばこの課税方式見直しが進められている背景には、いくつかの重要な要因があります。最も大きな理由は、紙巻きたばことの税負担の公平性を確保することです。現行制度では加熱式たばこの税負担が紙巻きたばこより低く、この不均衡を是正する必要があると考えられています。
また、防衛力強化に係る財源確保という側面も見逃せません。政府・与党は防衛増税の財源の一つとしてたばこ税を位置づけており、加熱式たばこの増税はその一環として検討されています。防衛費財源として、たばこ、法人、所得の3税を対象とし、政府は2027年度時点で1兆円強を確保したい考えです。
健康リスクの観点からの議論も見直しの背景にあります。自民党内には、健康リスク低減のため、紙巻きたばこより低い税率を維持すべきとの意見もありますが、厚生労働省は加熱式たばこの方が健康リスクが低いという証拠はないとしています。
課税方式見直しの主な目的は以下のとおりです。
これらの目的を達成するため、加熱式たばこの課税方式を段階的に見直し、最終的には紙巻きたばこと同等の税負担となるよう調整が進められています。
2026年(令和8年)から実施される加熱式たばこの新課税方式は、2段階に分けて導入される予定です。具体的には、2026年4月1日と同年10月1日の2回に分けて実施されます。
新課税方式の主な特徴は、加熱式たばこの紙巻きたばこへの換算本数を見直し、課税標準を「A+B」とする点です。具体的な実施スケジュールと換算方法は以下の通りです。
実施時期 | 現行の換算方法(A) | 改正後の換算方法(B) |
---|---|---|
現行 | 現行の換算本数×1.0 | – |
2026年4月1日(第1段階) | 現行の換算本数×0.5 | 新換算本数×0.5 |
2026年10月1日(第2段階) | – | 新換算本数×1.0 |
新換算本数の計算では、以下の3つのルールが適用されます。
この新しい換算方法により、加熱式たばこと紙巻きたばこの税負担の差は徐々に解消されていくことになります。現在、たばこ税は1箱あたり紙巻き304.88円に対し加熱式たばこは252.67円と約50円の差がありますが、新課税方式の完全実施後はこの差が解消される見込みです。
加熱式たばこの課税方式見直しは、消費者に様々な影響を与えることが予想されます。最も直接的な影響は、加熱式たばこの小売価格の上昇です。現在、加熱式たばこは紙巻きたばこより税負担が低いため、税率が同等になれば価格上昇は避けられません。
具体的な消費者への影響としては以下のようなものが考えられます。
消費者が取りうる対策としては、以下のようなものが考えられます。
加熱式たばこユーザーは、2026年の増税に向けて、自身の喫煙習慣と支出を見直す良い機会と捉えることができるでしょう。
加熱式たばこと電子たばこ(VAPE)は、しばしば混同されますが、税制上は大きく異なる扱いを受けています。この違いを理解することは、今後のたばこ製品選択において重要なポイントとなります。
加熱式たばこと電子たばこの税制上の違い
加熱式たばこは、たばこの葉を加熱して吸引するもので、現在たばこ税が課されています。一方、電子たばこ(VAPE)は、ニコチンを含まず葉たばこを使用していないため、現状ではたばこ税は課されていません。
製品タイプ | 課税状況 | 課税理由 |
---|---|---|
加熱式たばこ(アイコス、グロー等) | たばこ税課税対象 | たばこの葉を使用 |
電子たばこ(VAPE) | たばこ税非課税 | ニコチンを含まず、葉たばこ不使用 |
今後の展望
たばこ税制の今後については、以下のような展望が考えられます。
現在非課税の電子たばこも、将来的には何らかの形で課税される可能性があります。特に健康への影響や紙巻きたばこからの移行が進む中、税収確保の観点から検討される可能性があります。
2026年の課税方式見直し以降も、健康増進や税収確保の観点から、たばこ製品全般に対する税率引き上げが継続される可能性があります。
たばこ業界は常に新製品を開発しており、新たな製品カテゴリーが登場した場合、それに対応する税制の整備が行われる可能性があります。
グローバル企業が展開するたばこ製品については、国際的な税制の調和が進む可能性もあります。
加熱式たばこユーザーにとっては、2026年の課税方式見直しは大きな転換点となりますが、電子たばこユーザーも将来的な課税の可能性を視野に入れておく必要があるでしょう。たばこ製品の選択においては、価格だけでなく、健康への影響や将来的な税制変更も考慮することが重要です。
加熱式たばこの税制変更に関する最新情報
加熱式たばこの税制に関する最新の動向としては、2023年12月に政府・与党が防衛増税の財源の一つとして、加熱式たばこの増税方針を固めたことが報じられています。この方針は与党税制大綱に盛り込まれましたが、増税の実施時期は当初明記されませんでした。その後、2026年4月と10月の2段階での実施が決定されています。
たばこ税制の変更は消費者の喫煙行動に大きな影響を与えるため、今後も政府の動向や税制改正の詳細に注目していく必要があります。