介護保険の給付種類を知ると老後資金が変わる

介護保険の給付種類を知ると老後資金が変わる

介護保険の給付の種類と賢い活用法

申請しないと、毎月数万円が戻ってこないまま消えます。


この記事のポイント3選
📋
給付は3種類ある

介護保険の給付は「介護給付」「予防給付」「市町村特別給付」の3つに分類されます。認定区分によって使えるサービスが異なります。

💰
支給限度額は要介護度で変わる

要支援1(月約5万円)から要介護5(月約36万円)まで、要介護度に応じた月ごとの支給上限が設定されています。超えた分は全額自己負担です。

🔄
申請しないと損する給付がある

「高額介護サービス費」は申請しなければ1円も戻りません。一般所得世帯の上限は月44,400円で、超えた分は後日払い戻されます。


介護保険の給付の種類:介護給付・予防給付・市町村特別給付の違い


介護保険の給付は、大きく分けて介護給付・予防給付・市町村特別給付の3種類で構成されています。この区分は介護保険法によって定められており、それぞれ対象者とサービスの目的が異なります。


介護給付は、要介護1〜5の認定を受けた方を対象とするサービスです。食事・入浴・排泄といった日常生活動作の全部または一部に継続的な介護が必要な状態に対応し、かかった費用のうち原則7〜9割が給付されます。


予防給付は、要支援1・2の認定を受けた方が対象です。まだ要介護状態ではないものの、放置すれば悪化するリスクがある方の状態維持・改善を目的としています。つまり「将来の介護費用を抑えるための先行投資」という性格を持つ給付といえます。


市町村特別給付は、介護給付・予防給付には含まれないサービスを、市区町村が独自の条例で上乗せする制度です。配食サービス・移送サービス・紙おむつの支給・寝具乾燥サービスなど、内容は自治体によって異なります。「横出しサービス」とも呼ばれ、実は財政的に余裕のある自治体では非常に手厚い内容が提供されていることがあります。


意外ですね。同じ要介護1でも、住む自治体によって受けられるサービスの種類が大きく変わるのです。金融面でのライフプランを考えるとき、「どの自治体に住むか」が老後の介護費用を左右する要素の一つになっていることは、資産設計において見落としやすいポイントです。


以下に3つの給付区分の基本情報を整理します。


給付の種類 対象者 主なサービス内容 費用負担
介護給付 要介護1〜5 訪問介護・施設入所・デイサービス等 原則1〜3割
予防給付 要支援1〜2 介護予防訪問看護・通所リハビリ等 原則1〜3割
市町村特別給付 要介護・要支援者 配食・移送・おむつ支給等(自治体による) 自治体により異なる


参考:介護保険の給付種類の制度的根拠について
介護保険におけるサービスの範囲の概要(障害保健福祉研究情報システム)


介護保険の給付の種類別・居宅サービスと施設サービスの全体像

介護給付の中に含まれるサービスは、大きく「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3カテゴリに分かれます。金融に関心のある方が介護費用を試算するとき、この分類を理解していないと、実際の出費と大きく乖離した計画になるので注意が必要です。


居宅サービスは、自宅に住みながら利用できるサービスの総称です。さらに「訪問サービス(ヘルパーが来る)」「通所サービス(施設に通う)」「短期入所サービス(数日間だけ施設に泊まる)」の3グループに分かれます。代表的なものとして、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)があります。自宅での生活を維持しながら介護サービスを組み合わせたい場合に活用する区分です。


施設サービスは、自宅から施設に移り住んで受けるサービスです。特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)・介護老人保健施設・介護医療院の3種類が対象となります。なお、介護療養型医療施設は2024年3月末をもって廃止されています。施設に入居すると月々の自己負担は1〜3割で済む一方、食費・居住費は原則として介護保険の給付外となり全額自己負担です。


地域密着型サービスは、市区町村が主体となって地域の実情に合わせて提供するサービスです。夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護・グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・小規模多機能型居宅介護など、柔軟な組み合わせが可能なメニューが揃っています。原則として、そのサービスを提供している市区町村に住んでいる方しか利用できない点が特徴です。居宅サービスとの組み合わせが大切です。


参考:介護保険で受けられるサービスの詳細な一覧について
サービス編 | 介護保険の解説(厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索)


介護保険の給付を受けるための要介護認定と支給限度額のしくみ

介護保険の給付を受けるには、まず市区町村の窓口に要介護認定の申請を行う必要があります。申請後に認定調査員による聞き取り調査と、主治医の意見書をもとに審査が行われ、おおむね1か月ほどで要介護度が決定します。被保険者証が届いたからといって、自動的に給付が始まるわけではありません。これが大前提です。


認定を受けると、要介護度に応じた区分支給限度額が設定されます。月々に介護保険から給付を受けられる上限のことで、要介護度が上がるほど限度額も高くなります。以下に2024年度の支給限度額の目安を示します(1単位=10円で計算した場合)。


要介護度 支給限度基準額(単位) 目安の月額上限(円換算)
要支援1 5,032単位 約50,320円
要支援2 10,531単位 約105,310円
要介護1 16,765単位 約167,650円
要介護2 19,705単位 約197,050円
要介護3 27,048単位 約270,480円
要介護4 30,938単位 約309,380円
要介護5 36,217単位 約362,170円


※1単位あたりの単価は地域や事業者種別によって異なり、実際の限度額は上記と異なる場合があります。


この限度額を超えてサービスを利用することは可能です。ただし、超えた分は介護保険の給付対象外となり、全額自己負担になります。「使えるだけ使えばいい」という発想は、家計に大きなダメージを与えます。ケアマネジャーと連携して、限度額内に収まるケアプランを設計することが重要です。


また、要介護度が3段階以上上がった場合(たとえば要支援1から要介護3など)には、住宅改修費20万円の限度額が「リセット」されて再び利用できる例外ルールも存在します。これは知っておくと資産計画に活きる知識です。


参考:要介護認定から介護サービス利用までの流れ
介護保険の給付とは?一覧表でわかりやすく紹介!(そよ風 介護コラム)


介護保険の給付の種類に含まれる「高額介護サービス費」と「住宅改修費」

介護保険の給付の種類を語るうえで、見落とされやすいのが金銭的な戻り系の給付です。サービスの現物給付だけが介護保険の給付だと思っている方は多いですが、実際には「払いすぎた費用が戻る仕組み」も正式な保険給付として位置づけられています。


高額介護サービス費は、1か月間の自己負担の合計が所得区分に応じた上限額を超えた場合に、超過分が後日払い戻される制度です。一般的な所得の方(世帯合計)の上限額は月44,400円で、年収約770万円以上の世帯は93,000円、住民税非課税世帯は15,000〜24,600円など、所得に応じて細かく設定されています。


注意点があります。この制度は「申請しなければ1円も戻らない」仕組みです。対象となった月の3か月後ほどに自治体から案内が届くことが多いですが、初回は必ず申請が必要です。一度申請すれば、2回目以降は自動的に振り込まれます。申請を放置して損している家庭は少なくありません。


住宅改修費の給付も、見逃せない制度です。手すりの設置・段差解消・滑り止め床材への変更などのリフォームに対して、1人につき生涯20万円を上限に、所得に応じて7〜9割が給付されます。1割負担の場合は18万円分が戻る計算です。自宅をバリアフリー化するコストを大幅に下げられるため、老後の住まい費用を見直す際に積極的に活用すべき給付です。


さらに、特定福祉用具販売として、介護用ポータブルトイレ・入浴補助用具・簡易浴槽・腰掛け便座などは購入費として年間10万円を限度に給付が受けられます。貸与(レンタル)ではなく購入が基本の品目に適用されます。これが原則です。


  • 🔁 高額介護サービス費:月の自己負担が上限(一般世帯44,400円/月)を超えた分が払い戻される
  • 🏠 住宅改修費:手すり・段差解消など対象工事に、生涯20万円を上限に7〜9割が給付
  • 🛒 特定福祉用具購入費:入浴補助具など指定9品目に年間10万円を上限に給付


参考:高額介護サービス費の上限額・申請方法について
高額介護サービス費とは?知っておきたい払い戻し制度や申請方法(LIFULL介護)


参考:住宅改修費の給付対象・上限・手続きについて
介護保険における住宅改修(厚生労働省)


介護保険の給付を賢く活用するための金融的視点:老後資金計画との連動

金融に関心がある方にとって、介護保険の給付は「リスクヘッジの制度」として理解することが大切です。老後に必要な資金を試算するとき、「介護費用はいくらかかる?」という問いに答えるためには、公的給付でどこまでカバーできるかを正確に把握する必要があります。


たとえば、要介護3で在宅介護を続ける場合、月の支給限度額は約270,480円分のサービスを1〜3割負担で利用できます。1割負担であれば自己負担は月27,048円程度で済む計算です。一方、高額介護サービス費の上限が44,400円以下の場合は、超過分の払い戻しも受けられます。介護保険の給付を最大限活用できれば、老後に取り崩す資産を大幅に圧縮できます。これは使えそうです。


反対に、給付を知らずに民間の介護サービスをフルに自費で利用し続けた場合、月10万〜20万円単位の出費が積み上がります。数年間で見ると数百万円規模の差が生じることも珍しくありません。


介護保険の給付には、現物給付(サービスそのもの)と現金的払い戻し(高額介護サービス費・住宅改修費など)の両方があります。どちらも「申請しなければ受け取れない」ものが含まれている点が要注意です。


資産形成の観点で言えば、まずは介護保険の給付でカバーできる範囲をしっかり把握し、それを超える部分を民間介護保険や預貯金・投資で補う設計が合理的です。介護保険の給付を「知っているか・いないか」だけで、老後の手元に残る資産額が変わります。ライフプランを見直すタイミングで、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する行動が、具体的な一歩になります。


参考:介護費用の払い過ぎを防ぐ負担軽減制度の解説


参考:介護保険制度の仕組みと給付の概要(公的機関)
介護保険のサービス解説(厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報」)






【中古】介護保険にかかるお金がわかる本 / 服部万里子 (単行本)