株式評価相続時の計算方法と節税対策完全ガイド

株式評価相続時の計算方法と節税対策完全ガイド

株式評価相続の基本と計算方法

株式評価相続の重要ポイント
📊
上場株式の評価

4つの基準価格から最も低い価格で評価

🏢
非上場株式の評価

株主区分と会社規模により評価方法が決定

💰
節税対策

評価額を下げることで相続税を軽減

株式評価相続税評価額の基本知識

株式を相続する際、その株式の価値を金額で表す「相続税評価額」の算出が必要になります。株式も不動産と同様に「現金にしたらいくらなのか」を計算し、他の相続財産と合算して相続税の課税対象額を決定します。

 

相続税評価額の計算方法は、株式の種類によって大きく異なります。

  • 上場株式:証券取引所での取引価格を基準に評価
  • 気配相場等のある株式:登録銘柄や店頭管理銘柄の取引価格を使用
  • 取引相場のない株式(非上場株式):独自の評価方法が必要

特に非上場株式の場合、市場価格が存在しないため、株式を相続する株主の経営支配力や会社の規模によって評価方式が変わる複雑な仕組みとなっています。

 

相続税の計算では、株式の評価額を正確に算出することが重要です。評価額が高すぎると過度な税負担となり、低すぎると税務署から指摘を受ける可能性があります。

 

上場株式相続時の評価方法と計算

上場株式の相続税評価額は、株価の変動による不公平を防ぐため、複数の基準価格から最も低い価格を採用する仕組みになっています。

 

上場株式の評価基準となる4つの価格

  • 相続発生日の最終価格
  • 相続発生月の最終価格の平均額
  • 相続発生月の前月の最終価格の平均額
  • 相続発生月の前々月の最終価格の平均額

これら4つの価格を比較し、最も低い価格を相続税評価額として採用します。この制度により、相続発生日にたまたま株価が急騰していた場合でも、過度な税負担を避けることができます。

 

計算例
A社株式を100株相続した場合

  • 相続発生日の最終価格:1,200円
  • 相続発生月の平均価格:1,100円
  • 前月の平均価格:1,050円
  • 前々月の平均価格:1,150円

この場合、最も低い前月の平均価格1,050円を採用し、相続税評価額は105,000円(1,050円×100株)となります。

 

株価の情報は、証券会社から残高証明書を取得するか、Yahoo!ファイナンスなどのWebサービスで確認できます。複数の上場株式を相続する場合は、各銘柄ごとに個別に計算を行います。

 

非上場株式の類似業種比準方式と純資産価額方式

非上場株式の評価では、主に3つの評価方式が使用されます。
1. 類似業種比準方式
評価対象の非上場企業と事業内容が似ている上場企業の株価を参考にして評価額を算出する方法です。上場企業の株価を基準とするため、一般的に評価額は抑えられる傾向があります。

 

この方式では、類似業種の上場企業の以下の要素を比較します。

  • 1株当たりの年配当金額
  • 1株当たりの年利益金額
  • 1株当たりの純資産価額

2. 純資産価額方式
会社の資産から負債を差し引いた純資産をもとに株式の評価を行う方法です。相続発生時の会社の貸借対照表を基準として、資産を時価評価し直して計算します。

 

土地や建物などの含み益がある会社では、純資産価額方式による評価額が高くなる傾向があります。

 

3. 配当還元方式
会社から受け取る配当金をもとに評価額を計算する方式です。一般的に他の方式よりも評価額が低くなります。

 

併用方式
中規模の会社では、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせて評価します。会社の規模により併用の割合が決まっており、大会社に近いほど類似業種比準方式の割合が高くなります。

 

評価方式の選択は、株主の立場(同族株主か少数株主か)、会社の規模、会社の特性によって決まるため、専門家への相談が重要です。

 

同族株主と少数株主の評価額違い

非上場株式の評価では、株主を「同族株主」と「少数株主」に区分し、それぞれ異なる評価方法を適用します。この区分により、同じ会社の株式でも評価額が大きく異なる場合があります。

 

同族株主の評価
同族株主とは、株主とその親族等で会社の経営に実質的な支配力を持つ株主グループを指します。同族株主に該当する場合は「原則的評価方法」を適用し、以下の評価方式から選択します。

  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式
  • 両方式の併用

少数株主の評価
少数株主は会社の経営に影響力を持たない株主で、「特例的評価方法」として配当還元方式を適用します。配当還元方式は、年間配当金額を一定の利率(10%)で還元して評価額を計算するため、一般的に評価額が低くなります。

 

評価額の比較例
同じ会社の株式でも、株主の立場により評価額が大きく異なります。

株主区分 評価方式 評価額の特徴
同族株主 原則的評価方法 高い評価額
少数株主 配当還元方式 低い評価額

注意点
少数株主であっても、原則的評価方法による評価額の方が配当還元方式による評価額よりも低い場合は、原則的評価方法による評価額を採用します。

 

この制度を理解することで、相続対策として株式の分散や配当政策の見直しなどの対策を検討できます。

 

株式評価相続の節税対策と事業承継

株式の相続における節税対策の基本は「評価額を下げる」ことです。評価額が下がれば、それに応じて相続税額も軽減されます。

 

主な節税対策手法
1. 生前贈与による株式数の削減
相続税の対象となる株式を生前に贈与することで、相続財産を減らす方法です。ただし、贈与税の課税関係に注意が必要です。

 

2. 自社株の時価切り下げ
会社のオーナーである場合、以下の方法で株価を下げることができます。

  • 決算賞与の支給による利益減少
  • 退職金の支給による純資産の減少
  • 不動産投資による含み益の圧縮

3. 種類株式の活用
事業承継において、種類株式を発行することで評価額をコントロールできます。例えば。

  • 配当優先株式:配当権利を分離して普通株式の評価を下げる
  • 無議決権株式:議決権を持たない株式として評価額を抑制
  • 社債類似株式:社債と同様の評価で株式評価額を固定

4. 事業承継税制の活用
一定の要件を満たす場合、事業承継税制により相続税の納税猶予や免除を受けられます。この制度を活用することで、後継者の税負担を大幅に軽減できます。

 

5. 持株会社の設立
持株会社を設立し、事業会社の株式を持株会社に移転することで、評価額の圧縮効果を得られる場合があります。

 

事業承継における株価対策の重要性
中小企業であっても、含み資産がある場合は数千万円から億単位の相続税が課される可能性があります。適切な株価対策により。

  • 相続税・贈与税の節税効果
  • 後継者の株式取得費用の軽減
  • 事業の円滑な承継

これらのメリットを得ることができます。

 

専門家への相談の重要性
株式評価は複雑で、間違った評価は税務調査のリスクを高めます。税理士や公認会計士などの専門家に相談し、適切な評価と節税対策を実施することが重要です。

 

株式の相続は単なる財産承継ではなく、事業の将来を左右する重要な手続きです。早期の準備と適切な対策により、税負担を抑制しながら円滑な事業承継を実現できます。