実質公債費比率の全国平均と地域格差を徹底解説

実質公債費比率の全国平均と地域格差を徹底解説

実質公債費比率の全国平均と地域格差を読む方法

比率が低いほど財政が健全だと思ったら、マイナス値の自治体に地方債投資の旨みが集中しています。


📊 この記事の3つのポイント
📌
全国平均は令和5年度で7.7%

総務省の地方財政白書によると、令和5年度決算の実質公債費比率の全国平均は7.7%。都道府県・市区・町村でそれぞれ大きく異なります。

⚠️
18%超えると「許可制」に移行

実質公債費比率が18%以上になると、地方債の発行に総務大臣の許可が必要になります。令和5年度は北海道・新潟県など複数の団体が該当。

💡
投資判断にも使える財政指標

地方債を購入する際にこの比率を参照することで、返済余力のある自治体を見極めることができます。金融リテラシーの高い投資家に注目される指標です。


実質公債費比率とは何か:計算方法と全国平均の基礎知識

実質公債費比率とは、地方公共団体の一般財源の標準的な規模に対して、公債費(地方債の元利償還金)および公債費に準じる経費がどれほどの割合を占めるかを示す指標です。簡単に言えば、「税収などの収入のうち、何パーセントを借金返済に使っているか」を表す数値で、低いほど財政に余裕があることを意味します。


この比率の算定方法には重要な特徴があります。単年度の数字ではなく、直近3か年の平均値を使う点です。なぜ3年平均なのかというと、特定年度に大型事業の起債が集中するなどの一時的な要因で数値が大きく変動するのを抑え、財政状況をより安定的に評価するためです。つまり「3か年の平均」が基本です。


令和5年度決算(令和7年版地方財政白書)の最新データによると、全国の実質公債費比率の全国平均は 7.7% となっています。前年度(令和4年度)の7.6%から0.1ポイントわずかに上昇しました。団体区分別に細かく見ると、都道府県が10.1〜10.2%程度、政令指定都市が約7.3%、市区が4.7%、町村が約7.5〜7.6%となっています。都道府県が最も高く、市区が最も低いことがわかります。





























団体区分 実質公債費比率の平均(令和4年度) 早期健全化基準
都道府県 10.2% 25%
政令指定都市 7.3% 25%
市区 4.7% 25%
町村 7.6% 25%


計算式の概要は次の通りです。分子には「元利償還金 + 準元利償還金(公営企業の元利償還金への一般会計からの繰出金などを含む)」が入り、分母には「標準財政規模」が入ります。さらに地方交付税基準財政需要額に算入された公債費相当額は差し引かれます。公営企業(水道・病院など)の借金返済まで含めた幅広い会計範囲を対象としている点が、従来の「公債費比率」よりも実態をより正確に反映していると言われています。これが「実質」という言葉が付いている理由です。


参考:総務省 令和7年版地方財政白書ビジュアル版(実質公債費比率)
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r07data/2025data/r07020402.html


実質公債費比率の全国平均から見た健全化基準と段階的な制限

全国平均の7.7%という数字は、一見すると財政が健全に見えます。しかしながら、この指標には段階的な「警戒ライン」が複数設けられており、それぞれを超えると自治体に対して異なるペナルティが発動します。この仕組みを知っておくことが重要です。


まず最初の関門は 16% です。実質公債費比率が16%を超えると、地方債の発行に際して都道府県知事や総務大臣への「届出」が必要になります。次のライン、18% を超えると「許可制」に移行し、地方債の発行には都道府県知事または総務大臣の許可が必要になります。令和5年度時点で、都道府県では北海道(18.9%)・新潟県(18.2%)がこの許可制に該当していました。


さらに、25% を超えると「早期健全化基準」に達し、財政健全化計画の策定が義務付けられます。単独事業に係る地方債の発行にも制限がかかります。最も深刻なのが 35% の「財政再生基準」で、国や都道府県の強制的な監督下に入り、財政再生計画の策定が義務付けられます。令和4年度決算では北海道夕張市のみがこの財政再生基準以上に該当していました。夕張市は令和11年度までの財政再生計画に基づき、固定資産税の超過課税など異例の住民負担増加を続けながら財政改善を進めています。


厳しいところですね。全国平均7.7%は「健全ゾーン」にある一方、一部の自治体は早期健全化基準まで残り7〜8ポイントしかないところもあります。



  • 🟢 16%未満:届出で地方債を発行できる(通常運用)

  • 🟡 16〜18%未満:届出は必要だが比較的自由

  • 🟠 18〜25%未満:許可制移行。起債制限が本格化

  • 🔴 25〜35%未満:早期健全化基準。財政健全化計画が義務

  • 35%以上:財政再生基準。国の監督下で再建


なお、早期健全化基準(25%)と財政再生基準(35%)は地方公共団体財政健全化法によって定められたものです。2007年(平成19年)に施行されたこの法律は、かつての「地方財政再建促進特別措置法」に代わるもので、夕張市の財政破綻(2007年)を教訓に作られました。いわば「第二の夕張を生まない」ための仕組みです。


参考:総務省 早期健全化基準と財政再生基準の解説ページ
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/index3.html


実質公債費比率の全国平均と都道府県間格差:最大16倍の開きがある実態

全国平均だけを見ていると見えてこない事実があります。それは都道府県間の格差が極めて大きいということです。令和5年度の都道府県データを分析すると、最高値が北海道の 18.9% であるのに対して、最低値は東京都の 1.2% です。その差は約15倍以上にのぼります。意外ですね。


北海道が最も高い理由は、広大な面積に対して道路・鉄道・港湾などのインフラ整備に長期間にわたって多額の投資を続けてきた歴史にあります。また、新潟県(18.2%)は上越新幹線や関越自動車道などの大型交通インフラへの投資が現在も重い返済負担として残っています。京都府(16.5%)は観光都市のイメージと裏腹に、地下鉄事業や文化財保護などへの投資が財政を圧迫しています。兵庫県(15.5%)は阪神・淡路大震災(1995年)の復興費用が30年経った今もなお財政に影響しています。


一方、東京都が1.2%という低水準を維持できる理由は、都税収入が約6兆円規模という圧倒的な財政力にあります。地方交付税の不交付団体である東京都は、そもそも借金に頼る必要が少なく、他の46道府県とは別次元の財政状態です。


































順位 都道府県 実質公債費比率 特徴
1位(高) 北海道 18.9% 唯一の許可制移行団体(都道府県)
2位(高) 新潟県 18.2% 大型交通インフラの長期返済
3位(高) 京都府 16.5% 地下鉄・文化財整備の負担
47位(低) 東京都 1.2% 圧倒的な税収力・交付税不交付


注目すべき点は、実質公債費比率と将来負担比率(将来返すべき債務の総額の比率)が必ずしも一致しない自治体が存在することです。たとえば青森県は実質公債費比率が13.1%と高い一方、将来負担比率は74.3%と非常に低い。今がまさに返済のピークであり、今後は負担が軽くなっていく構造を持っています。逆に岐阜県は実質公債費比率7.2%と低いのに、将来負担比率は222.9%と高め。これは据置期間を活用して返済の開始を先送りにしている可能性があり、将来に向けて負担が増えていく構造です。この「タイムラグ」を見抜く力は、財政分析の醍醐味の一つです。


参考:47都道府県の財政健全化法4指標比較(note・stats47)
https://note.com/stats47/n/n2ed31d721531


実質公債費比率の全国平均を金融・投資の視点で活用する独自視点

実質公債費比率は行政の財政管理ツールとして知られていますが、金融に関心のある個人投資家にとっても実は使える指標です。これが意外と知られていません。


地方債(住民参加型市場公募地方債、通称「ミニ公募債」や市場公募債)に投資する場合、発行体である自治体の財政健全性は信用リスクを判断する上で重要な材料になります。実質公債費比率が低く安定的に推移している自治体は、元利償還の履行能力が高いと評価されます。逆に、18%に近づいている自治体が発行する地方債には、将来的に起債制限がかかる可能性があり、資金繰りの柔軟性が低下するリスクがあります。


実際のところ、国内市場では地方債に国の「暗黙の保証」があると広く認識されており、個別の信用格差が金利に大きく反映されにくいのが現状です。しかし、長期的な保有や将来の財政悪化による流動性リスクを考えるなら、実質公債費比率はチェックすべき指標の一つです。つまり「信用リスク」の事前チェックに活用できます。


活用の手順としては、①総務省の財政状況資料集から投資候補の自治体の実質公債費比率を確認する、②過去3〜5年の推移を見て改善傾向か悪化傾向かを判断する、③将来負担比率と合わせて「今の重さ」と「将来の重さ」の両面から分析する、という3ステップが基本です。この手順で評価するだけで、財政の"体力"を立体的に把握できます。


総務省の「財政状況資料集」では、全自治体の財政指標が毎年度公表されており、無料で閲覧できます。特に「財政比較分析表」では、類似団体との比較もグラフで確認できるため、投資前の下調べに非常に役立ちます。地方債に限らず、不動産投資(その地域の将来性判断)や株式投資(地場企業の事業環境評価)にも間接的に役立てることが可能です。これは使えそうです。


参考:総務省 財政状況資料集の説明ページ
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/jyoukyou_shiryou/h22/setumei.html


参考:地方債協会 地方債の安全性(実質公債費比率の説明含む)
https://www.chihousai.or.jp/02/03.html


実質公債費比率の全国平均推移と今後の見通し:金利上昇時代の注意点

全国平均の推移を振り返ると、2000年代後半のピーク時(平成18年度頃には都道府県平均で16〜17%台に達していたとされる)から比べると、令和5年度の7.7%は大幅に改善されています。これは、三位一体改革(2004〜2006年)以降の地方の財政規律強化と、借入金の低金利化・繰上償還による残高圧縮が功を奏した結果です。


しかし、ここで注意したいのが金利動向です。日本銀行が2024年以降に利上げ方向にかじを切ったことで、将来の地方債の新規発行コストが上昇しています。現在は低金利で借り換えた地方債が返済の中心ですが、今後の新規起債が高金利環境下で行われると、元利償還金の額が増加し、実質公債費比率が上昇に転じるリスクがあります。金利上昇は注意が必要です。


また、社会インフラの老朽化への対応も財政を圧迫する要因として注目されています。橋梁・トンネル・上下水道などの公共施設の更新費用は2030年代にかけて急増すると試算されており、これらへの投資は地方債の発行増加につながります。全国市長会や総務省の資料によると、公共施設等の老朽化対応コストの全国総額は年間約5〜6兆円規模に達するとも言われており、これが将来の実質公債費比率を押し上げる主要因の一つです。


一方で、人口減少が進む自治体では標準財政規模(分母)が縮小していくため、借金の絶対額が変わらなくても比率が上昇するリスクがあります。特に過疎地域の町村では、この「分母の縮小」リスクが現実の問題になりつつあります。金融に関心がある方は、単に現時点の数字を見るだけでなく、「この数字がどう変化するか」という動態的な視点で実質公債費比率を捉えることが大切です。結論は「推移と背景を見る」ことが条件です。


将来の比率変化をウォッチしたい場合は、総務省が毎年秋(9〜10月頃)に発表する「健全化判断比率等の状況」のプレスリリースをチェックする習慣をつけると、最新の全国平均や注目自治体の動向をいち早く把握できます。投資判断に活かす情報として、参考にしてみてください。


参考:総務省 令和5年度決算に基づく健全化判断比率等の状況(資料編)
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/r07data/2025data/r07czs03-00.html