

時間単位で有給を5日分フルに使い切っても、会社から「年5日の有給取得義務」を別途求められて驚いた——そんな経験をしたことはありませんか。
時間単位の有給休暇(時間単位年休)とは、通常は1日単位で取得する年次有給休暇を、1時間単位で細かく使える制度のことです。労働基準法第39条第4項に根拠があり、2009年(平成21年)の法改正で導入されました。
制度が使えるのは、企業が労使協定を結んでいる場合に限られます。つまり、全員に自動的に適用されるわけではありません。就業規則への明記と労使協定の締結が必須条件です。
具体的な使い方としては、病院の予約が午後2時からある、子どもの参観日で午前だけ休みたい、役所手続きで2時間だけ外出したい——といった場面で威力を発揮します。
これが制度の原点です。
1日単位や半日単位の有給では「もったいない」と感じて取得を遠慮してしまう人でも、時間単位なら必要な分だけ使えるため、有給休暇全体の取得率向上にもつながるとされています。
制度の活用がカギです。
時間単位で取得できる有給休暇は、1年につき5日分が上限です。これは労働基準法施行規則第24条の6に定められた法律上の制限であり、労使間でどれだけ合意しても、この上限を超える設定は無効となります。
「5日分」とは、時間換算では所定労働時間✕5日分の時間数に相当します。所定労働時間が8時間の場合は40時間分、7時間の場合は35時間分(1時間未満は切り上げのため実質40時間)が取得上限です。
たとえば1日の所定労働時間が8時間の会社に勤めていれば、時間単位年休は年間で最大40時間分まで使えます。東京—大阪間を新幹線で往復するのに必要な時間がおよそ5〜6時間であることを考えると、40時間はかなりの余裕があるように見えますが、毎週少しずつ使うとあっという間に消化してしまいます。
5日の上限は原則です。ただし、法定日数を超えて会社が付与している「法定外有給休暇」の超過分については、上限なく時間単位で与えることが認められています。
この点は後の章で詳しく解説します。
時間単位年休を使うには、企業側で2つの手続きを完了させる必要があります。これがなければ、いくら希望しても制度が存在しないことになるため注意が必要です。
第一は、就業規則への記載です。常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則に時間単位年休の制度内容(上限日数・取得単位・申請方法など)を明記しなければなりません(労働基準法89条)。
第二は、労使協定の締結です。労働者の過半数が加入する労働組合、または過半数代表者との間で書面による協定を結ぶ必要があります。協定では①対象者の範囲、②取得できる年間日数(5日以内)、③1日分の時間換算数、④取得単位(1時間など)の4項目を必ず記載します。
なお、この労使協定は労働基準監督署への届出は不要です。ただし、就業規則の変更については監督署への届出が必要になるため混同しないよう注意してください。
届出先が違うということですね。
制度導入時に両方を整備しないと、従業員が時間休を申請しても会社が合法的に対応できなくなります。これは採用競争力の低下や職場満足度の低下にも直結するリスクです。
有給休暇は取得しきれなかった分を翌年度に繰り越せますが、時間単位年休には重要な注意点があります。繰り越した分があっても、時間単位で取得できる日数の上限は繰越を含めて年5日のままです。
具体例で確認します。前年度に時間単位年休を2日分しか使わず、3日分(24時間分)を翌年度に繰り越したとします。この場合、翌年度に時間単位で使えるのは「繰越3日+新規5日=8日」ではなく、繰越3日と新規2日を合わせた合計5日分が上限になります。
つまり、翌年度の新規付与分から時間単位で取得できるのは2日分だけになります。残りの3日分は通常の1日単位か半日単位で取得するしかありません。
これは意外ですね。
この仕組みは、「繰り越せば得をする」と思っていた人には損に感じられるかもしれません。特に、前年度に取得機会が少なかった従業員にとっては不満の原因になりやすいポイントです。
勤怠管理システムで残数を「繰越分含む5日上限」として自動計算しているかどうかを確認する習慣をつけておくと、申請時のトラブルを防げます。
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には年5日以上の取得が義務化されています。問題は、時間単位で取得した有給休暇がこの「年5日の取得義務」にカウントされない点です。
たとえば、年間を通じて時間単位で計40時間分(5日分)の有給を消化したとします。この場合、会社からすると「義務の5日取得はまだゼロ」として扱われるため、改めて1日単位または半日単位で5日分の有給を取得させなければなりません。
二重管理が必要ということです。企業側にとってはかなり煩雑な運用が求められ、この仕組みを知らずに時間単位の有給だけで「5日義務クリア」と誤解してしまうと、労働基準法違反につながります。違反した場合、対象者1人あたり30万円以下の罰金が科されるリスクがあります。
従業員の立場からは、「時間単位でたくさん休めている気がするのに、会社からまだ有給を取るよう催促される」という不思議な状況が生まれます。これは制度上の必然であり、双方が正しく理解している必要があります。
時間単位分と義務5日分を別々に管理できる勤怠システムの導入が、このリスクを回避する現実的な手段になります。たとえば「ジンジャー勤怠」や「KING OF TIME」といったクラウド型の勤怠管理ツールは、この二重管理に対応した集計機能を持っているものが多いため、確認してみる価値があります。
制度のあまり知られていないポイントの一つが、「法定外有給休暇の超過分には時間単位の5日上限が適用されない」という事実です。
法律上の義務(法定有給休暇)は勤続年数に応じて最大20日ですが、企業によってはその日数を上回る有給休暇を自社の制度として付与しているケースがあります。たとえば、法定の義務が10日であるのに会社が18日を付与している場合、超過分の8日については時間単位で付与することに法的制限がありません。
つまり、この従業員は「法定5日+法定外8日」の合計13日分を時間単位で利用できる計算になります。
ベースが8時間であれば104時間分です。
これは使えそうです。
ただし、法定外有給休暇分を時間単位で管理するには、法定分と法定外分を分けて管理する仕組みが必要です。多くの企業ではここまで整備できていないのが現実で、一律「5日上限」として運用しているケースが少なくありません。
この例外を活かしたい企業は、まず就業規則上の有給休暇日数が「法定超えになっているか」を確認し、超えている場合は労使協定の書き直しと勤怠システムの設定変更を検討するのが現実的なステップです。
「時間単位」という名称ではありますが、その最小単位は厳密に「1時間」です。30分単位・15分単位などの分単位での取得は、労働基準法上認められていません。
これは見落とされやすいポイントで、良かれと思って就業規則に「30分単位で取得可」と書いてしまった企業は、法令違反の状態にある可能性があります。実際、このような記載を発見した労働基準監督署の監査で指摘を受けるケースも報告されています。
法律上の取得単位は「1時間以上の時間数」です。
2時間や3時間は問題ありません。
ただし、1日の所定労働時間を超える時間での取得は認められないため、たとえば所定労働時間が8時間の場合、1回の申請で9時間の時間単位年休を取得することはできません。
正しい最小単位は「1時間」が原則です。端数処理の際は、1日分に対応する時間数を計算するときも1時間未満の端数は切り上げる形で換算されます(所定労働時間が7時間30分の場合、1日分は8時間として計算する)。
社内での周知が不十分な場合は、就業規則の確認と同時に、従業員向けの案内文を再作成しておくことで無用なトラブルを防げます。
時間単位年休はパート・アルバイト従業員にも適用できますが、取得できる上限日数の考え方が異なります。比例付与対象者、すなわち「週所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が4日以下」の短時間労働者は、付与される有給休暇の日数が少ないため、時間単位で取得できる上限も変わってきます。
具体的には、比例付与によって付与される日数が5日に満たない労働者については、その付与日数の範囲内で時間単位年休を取得できます。たとえば週2日勤務で年3日分しか有給が付与されない場合、時間単位で使えるのは最大3日分(≠5日分)です。
一方、パートであっても週30時間以上または週5日以上勤務の場合はフルタイムと同じ扱いとなり、時間単位年休の上限も「年5日分」が適用されます。パートだからといって一律に上限が減るわけではありません。
この区分を誤ると、パート従業員への有給休暇の付与と時間単位管理が法定から外れてしまうリスクがあります。企業の人事担当者は、雇用形態ごとに「付与日数」と「時間単位取得可能日数」を別々に設定し、システムで自動管理できる体制を整えておくことが大切です。比例付与の日数区分を把握しておくのが基本です。
2024年12月、政府の規制改革推進会議が「時間単位年休の上限を年次有給休暇付与日数の50%程度に緩和する」という中間答申を公表しました。厚生労働省はこの方針を受け、令和7年度(2025年度)中に結論を出す方向で検討を進めており、早ければ2026年4月から施行される可能性があります。
現行制度では年20日付与されている従業員でも、時間単位で使えるのは5日分(25%)に過ぎません。これが50%緩和されれば、10日分(80時間)まで時間単位で取得できるようになります。たとえば毎週月曜の午前中2時間を時間休にしても、年間40回分の余裕が生まれる計算です(80時間÷2時間=40回)。
ただし、緩和後も年5日の取得義務との二重管理は維持される見込みです。つまり、時間単位の取得枠が広がるだけで、日単位の取得義務カウントのルールは変わりません。
また、緩和後に取得上限が付与日数の50%に変わると、企業の人事・労務担当者は従業員ごとに「付与日数×50%」を自動計算できるシステムへの設定変更が必要になります。この改正への対応が早い企業ほど混乱が少なく済む可能性が高く、今から勤怠システムの対応状況をベンダーに確認しておくことが有効です。
政府の最新動向はこちらで確認できます。
厚生労働省「第2回労働基準関係法制研究会 議事録」(時間外労働上限規制・年休指定義務など法制度改正の背景資料)
法定の有給休暇を時間単位で年5日を超えて付与した場合、労働基準法第39条第4項違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるリスクがあります。これは会社(使用者)側に課されるペナルティです。
「たかが有給の扱い」と軽視されがちですが、実際に違反状態が発覚した場合は労働基準監督署の指摘だけでなく、社名の公表や行政指導のリスクも生じます。対象者が複数いれば罰金も倍加する可能性があります。
10人分なら最大300万円です。
一方、法定外有給の超過分を時間単位で付与することは問題ありません。つまり「5日を超えた全てが違法」ではなく、「法定有給の5日超えが違法」という点が正確な理解です。
この区別が必要です。
罰則を回避するための現実的な手順は2つです。まず、現在の就業規則・労使協定に「時間単位年休の上限5日」が明記されているかを確認します。次に、勤怠管理システムが上限超過の申請を弾けるよう設定されているかをチェックします。
これだけで大半のリスクは防げます。
厚生労働省のモデル労使協定も確認しておくと、就業規則の整備に役立ちます。
厚生労働省「時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう」(PDF)(モデル労使協定の記載例・時間換算の方法などを収録)
労使協定が締結されていない職場では、時間単位年休の制度が存在しないため、従業員は原則として1日単位でしか有給を取得できません。半日単位の取得も、就業規則に明記されていなければ会社の任意対応となります。
「うちは労使協定を結んでいない」という企業は、意外に多くあります。特に従業員10人未満の小規模事業者や設立間もないスタートアップ企業では、制度整備が後回しになりがちです。
この状態で従業員から「1時間だけ有給を取りたい」という申請があった場合、会社は「制度がないため対応できない」と断ることが法律上は可能です。しかし、こうした対応が積み重なると、採用市場での評価低下や離職につながります。
時間単位年休の導入は義務ではありません。しかし、従業員エンゲージメントやウェルビーイングの観点から、中小企業でも導入を検討する価値があります。特に金融業界のように高度なスキルを持つ人材の確保が課題となる職場では、柔軟な休暇制度が競争優位の一つになり得ます。
社会保険労務士などの専門家に相談することで、労使協定の作成から就業規則の改定まで一括してサポートを受けることができます。
まずは相談から始めるのが現実的です。
時間単位年休の申請には、通常の有給休暇と同様に「事前申請」が基本です。申請タイミングや方法は会社の就業規則に従いますが、多くの企業では取得希望日の前日または数日前までに申請書や社内システムへの入力を求めています。
ただし、通常の有給休暇と同様に「取得理由の申告は不要」です。時間単位だからといって、育児・通院・介護など特定の目的がある場合だけ認めるような運用は違法となります。
目的を問わないことが大前提です。
会社が時季変更権(時季を別の日に変えるよう求める権利)を行使できるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。忙しいシーズンや他の従業員が多数休んでいるなど、客観的に業務に支障が出る場合だけが該当します。
実務では、申請→承認→勤怠システムへの反映という流れが標準的ですが、時間単位の申請が増えると承認フローが細分化されて担当者の負担が増加します。特定の時間帯(例:始業・終業の前後2時間以内)のみ取得可能とするなど、業務への影響を最小限にするルールを就業規則に盛り込む工夫が現場では有効です。
金融業界では、マーケットの開閉時間・決算スケジュール・コンプライアンス対応など、勤務時間の管理が他業種以上に厳格になるケースが多くあります。そのため、時間単位年休の申請が業務に与える影響は、一般的な事務職以上に慎重な判断が必要です。
たとえば株式・FX・投資信託を扱う業務では、マーケットが開いている時間帯(9時〜15時30分など)に時間休を取得することが制限される場合があります。会社が就業規則で「市場取引時間中の時間単位年休の取得は不可」と定めている場合でも、その合理性が認められれば適法です。
また、金融機関では内部監査・コンプライアンス研修・行政検査への対応が突発的に発生することがあります。こうした業務との兼ね合いで、時間単位年休の申請が差し替えになるケースも珍しくありません。
一方で、フィンテック系やIT金融系の職種では、リモートワークが進み、従来型の業種に比べて時間単位年休を活用しやすい環境にあります。自分の勤務形態・職種・職場のルールを正確に把握した上で制度を活用することが、賢い時間管理につながります。
金融機関の就業規則における時間単位年休の申請制限については、会社の規則が労働基準法の趣旨に反しないかを確認するため、社内のコンプライアンス担当や社会保険労務士に確認するのが確実です。
年次有給休暇には2年間の時効があります(労働基準法115条)。これは時間単位年休にも適用されるため、付与日から2年が経過すると未消化分は消滅します。
たとえば2024年4月に付与された有給休暇は、2026年3月末で消滅します。このうち時間単位年休に割り当てていた5日分(40時間分)も同様に消えてしまいます。
時効には期限があります。
繰越分は優先消化が推奨されており、「古い年度の分から先に使う」という管理ルールが一般的です。ただし、時間単位年休の残数管理が正確でないシステムを使っている場合、いつの付与分がどれだけ残っているかが不明確になりがちです。
未消化の有給休暇は、企業が買い取ることも一部認められています(退職時の未消化有給の買取など)が、時効消滅した分は対象外です。
消えた有給は取り戻せません。
有給休暇の残数と期限を定期的に確認するためには、社内の勤怠システムに「残日数アラート」機能が備わっているかを確認することが実用的です。年に一度、付与日の前後に自分の有給残数・時間単位残数・期限をセットで見直す習慣がリスク回避につながります。
ここまで解説してきた内容を整理すると、時間単位年休には「知らないと損するポイント」が複数存在することがわかります。
まず、取得上限は年5日分(所定労働時間×5日分の時間数)という法定ルールが大原則です。
これを超えた付与は法律違反になり得ます。
一方で、法定外有給休暇の超過分には上限制限がありません。
| 区分 | 時間単位取得上限 |
|------|----------------|
| 法定有給休暇(最大20日) | 年5日分まで |
| 法定外有給休暇(超過分) | 上限なし(全部時間単位でも可) |
| 比例付与対象者(週4日以下等) | 付与日数の範囲内(最大5日) |
次に「年5日の取得義務」との二重管理ルール。時間単位で有給を消化しても、1日・半日単位の取得義務5日は別カウントです。これを混同すると会社側に罰則リスクが生まれます。
さらに繰越時も上限は「5日」のまま変わらず、時効も2年で消滅するという期限管理の重要性。最小単位は「1時間」で、30分単位は法律上使えないという実務上の注意点も見逃せません。
最後に、2026年4月施行の可能性がある上限緩和(付与日数の50%まで)への準備。年20日付与の従業員であれば最大10日(80時間)まで時間単位取得が可能になる見込みで、就業規則・労使協定・勤怠システムの3点を今から整備しておくことが重要です。
法改正の最新情報は以下の公式資料でも確認できます。
厚生労働省「年次有給休暇の時間単位付与(モデル協定例)」(PDF)(上限日数・時間換算・協定例など実務に直結する内容を掲載)

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