訪問歯科医療保険と介護保険の違いと自己負担と併用ルール

訪問歯科医療保険と介護保険の違いと自己負担と併用ルール

訪問歯科医療保険と介護保険の違いの基本整理

訪問歯科医療保険と介護保険の違いを一枚で把握
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治療か支援かという役割の違い

虫歯・抜歯・入れ歯修理など「治療」は医療保険、口腔ケア・リハビリなど「生活支援」は介護保険が基本という軸を押さえます。

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自己負担と家計インパクト

診療報酬・介護報酬の考え方から、1〜3割負担や高額療養費・高額介護サービス費の使い方まで、家計視点で整理します。

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施設区分と併用ルール

居宅・有料老人ホーム・病院・介護保険施設など、どこに住んでいるかで「医療保険か介護保険か」がどう変わるのかを具体的に見ていきます。

訪問歯科医療保険と介護保険の違いは「目的」と「法律」が起点

 

訪問歯科に関わる保険は大きく「医療保険(健康保険・後期高齢者医療制度等)」と「介護保険」の2本立てで、どちらが使われるかは行為の目的と根拠法で決まります。
医療保険は健康保険法等に基づき「病気やけがの治療」を目的とした制度で、訪問歯科では歯科訪問診療料や各種治療の診療報酬として位置づけられます。
介護保険は介護保険法に基づき「要介護・要支援認定を受けた人の自立支援」を目的とし、訪問歯科では居宅療養管理指導などの介護報酬として算定されます。

  • 医療保険:虫歯治療、抜歯、根管治療、入れ歯修理など「治す」ための行為。
  • 介護保険:口腔ケア、口腔機能の維持・向上、家族へのケア指導など「支える」ための行為。
  • 同じ訪問の1回の中でも、「治療部分」と「ケア・指導部分」で保険が分かれるケースが一般的です。

訪問歯科の診療報酬体系を俯瞰すると、歯科訪問診療料・在宅患者歯科治療総合医療管理料などは医療保険、居宅療養管理指導費は介護保険の項目として整理されており、どの行為がどの点数表に載っているかを見ると役割の違いがより明確になります。

 

参考)https://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/sika/16sikahoumontebiki.pdf

訪問歯科の診療報酬と制度全体像を整理した資料(医療保険・介護保険の算定項目や2024年度改定ポイントの参考)
訪問歯科で介護保険は使える?医療保険との違いや適用条件を解説(DENTIS)

訪問歯科医療保険と介護保険の違いがわかる自己負担・家計インパクト

訪問歯科の費用は多くの場合「医療保険の自己負担」と「介護保険の自己負担」の合計で決まり、どちらの比重が大きくなるかで家計へのインパクトも変わります。
医療保険の自己負担は、外来と同様に1〜3割(高齢者は所得別)で、歯科訪問診療料などの基本料+実際の治療内容に応じた診療報酬点数に負担割合を掛けて計算されます。
一方、介護保険の自己負担は「居宅療養管理指導費」などの単位数に1〜3割を掛ける形で決まり、月ごとの利用限度額とは別枠で支払う項目である点が意外と見落とされがちです。

 

参考)訪問歯科で介護保険は適用される?気になる治療費について|お役…

  • 医療保険:高額療養費制度により、月単位で自己負担額が一定額を超えた分は後日払い戻される仕組みがあります。
  • 介護保険:高額介護サービス費の対象になるもの・ならないものがあり、居宅療養管理指導は「区分支給限度基準額の枠外」である点が、訪問系サービスの組み合わせを考えるうえで重要です。
  • 同じ「1〜3割負担」でも、医療保険は医療費全体の一部、介護保険は介護サービス全体の一部として家計に乗ってくるため、年間キャッシュフローで見たときの効き方が異なります。

金融的な視点で見ると、訪問歯科の自己負担は「短期のキャッシュアウト(毎月の支出)」だけでなく、誤嚥性肺炎や栄養低下を防ぐことで入院リスクを下げる「長期の医療費リスクコントロール」という側面も持ちます。

 

参考)【訪問歯科は医療保険?介護保険?】違いと併用ルールを解説 &…

入院・通院の医療費が高額療養費の上限を何度も超えるケースを想定すると、在宅での口腔ケアに介護保険を投じることは、長期的には医療費のボラティリティを抑える保険の「メタ保険」のような役割を果たします。

 

参考)三鷹で歯医者をお探しなら岡崎歯科医院へ訪問歯科で介護保険は使…

訪問歯科医療保険と介護保険の違いを生む施設区分・適用条件

訪問歯科では「どこに住んでいるか」「介護保険の要介護認定の有無」によって、医療保険・介護保険どちらを使うかが変わります。
病院や介護医療院、特別養護老人ホームなど医師が常駐するような医療系・介護保険施設は、原則として医療保険での算定が中心となり、介護保険による居宅療養管理指導は対象外とされるケースが多いのが特徴です。
一方、自宅やサービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、グループホームなどの「居宅・居住系施設」では、要介護認定を受けていれば介護保険の居宅療養管理指導として訪問歯科が算定され、認定がない場合や家族が介護保険を利用しない選択をした場合は医療保険での算定となります。

 

参考)302 Moved Temporarily

  • 居宅・有料老人ホーム・サ高住・グループホーム:介護保険の居宅療養管理指導(要介護認定あり)+医療保険の歯科訪問診療料等。
  • 病院・介護保険施設(特養・老健など):医療保険での訪問歯科衛生指導・歯科治療が中心(介護保険の居宅療養管理指導の対象外)。
  • 介護保険証を持たない若年障害者など:必要に応じて医療保険のみで訪問歯科を利用することも可能です。

ここで意外なのは、「介護保険を持っている=常に介護保険優先」ではなく、訪問先が病院・介護保険施設に該当する場合は、介護保険証を持っていても医療保険で算定するという運用が行われている点です。

また、歯科衛生士が単独で訪問し口腔ケアのみを行うケースでも、居宅なら介護保険(歯科衛生士等による居宅療養管理指導)、病院・施設なら医療保険(訪問歯科衛生指導料)と、訪問先によって制度が切り替わるため、現場では「誰が、どこへ、何をするのか」をセットで確認することが重要になります。

訪問歯科診療の手引き(施設区分・診療報酬算定の基本的な考え方がまとまっている資料)
全国保険医団体連合会「歯科訪問診療の手引き」

訪問歯科医療保険と介護保険の違いと併用ルール・グレーゾーンの実務

訪問歯科では、1回の訪問で医療保険と介護保険を目的別に併用するケースが多く、たとえば「入れ歯の調整(治療)」に続けて「専門的口腔ケアと家族への指導(ケア・指導)」を同日に行うと、それぞれ別の制度で請求されます。
このとき、指導・ケアについては医療保険と介護保険の双方に請求項目が存在するものの、「介護保険が優先される」というルールがあり、要介護認定者の居宅ではまず介護保険で算定するのが原則です。

  • 同日に複数の職種(歯科医師・歯科衛生士)が訪問する場合、それぞれの行為がどの制度で算定されるかを整理しないと、二重請求や取りこぼしのリスクが生じます。
  • 介護保険の居宅療養管理指導は月の算定回数や単位数に上限があり、リハビリや訪問看護など他サービスとの兼ね合いで「どのサービスに枠を割くか」がケアマネ・家族の戦略的な判断ポイントになります。
  • 患者・家族が介護保険の利用を希望しない場合や、訪問先が介護保険施設である場合など、あえて医療保険のみで運用する選択肢が取られることもあります。

実務上のグレーゾーンとして、「どこまでが医療保険の治療で、どこからが介護保険の口腔ケアなのか」という線引きや、短時間の口腔ケアを治療の一環として扱うかどうかなど、記録の書き方で評価が変わり得る領域があります。

金融・リスク管理の視点では、こうしたグレーゾーンを漫然と現場任せにするのではなく、事業所としてルールと記録様式を標準化することで、返戻・監査リスクを抑えつつ、患者にとって必要なサービスを継続的に提供できるかが経営課題になります。

 

参考)https://hodanren.doc-net.or.jp/books/20kaitei/sig/211029sika_homon.pdf

訪問歯科での介護保険・医療保険の適用条件や併用ルールの解説(開業歯科向けにまとまっている参考リンク)
訪問歯科で介護保険は使える?医療保険との違いや適用条件を解説(DENTIS)

訪問歯科医療保険と介護保険の違いを踏まえた「口腔ケア投資」とリスクマネジメント

訪問歯科の費用を「コスト」としてだけ捉えると、「どうせ1〜3割負担なら安いほうで」「訪問回数はなるべく減らしたい」という発想になりがちですが、高齢者の医療費構造を見ると、口腔状態が悪化した結果としての入院・介護度悪化が、トータルの支出を大きく押し上げる要因になっています。
誤嚥性肺炎の再入院や、咀嚼・嚥下機能の低下による栄養障害は、医療保険側の急性期・回復期の費用だけでなく、介護保険側の要介護度上昇や施設入所のリスクにも直結し、「医療+介護」の二重のキャッシュフローに跳ね返ります。

  • 訪問歯科の口腔ケア・指導を介護保険の枠で継続することは、「将来の医療費・介護費のブレ(ボラティリティ)」を抑えるためのリスクヘッジと見ることができます。
  • 医療保険側では、高額療養費制度により大きな医療費は一定程度平準化される一方、介護保険側の費用は長期にわたってじわじわ効いてくるため、早期の口腔ケア介入で要介護度の進行を遅らせることは、ポートフォリオ全体のリスク低減策になり得ます。
  • 歯科医院・訪問歯科事業者にとっても、適正な保険請求とアウトカムの可視化は、地域包括ケアの中でのポジションを高め、将来の診療報酬改定で評価を受けるための「実績作り」という投資と捉えられます。

また、介護保険の居宅療養管理指導は「生活全体の支援」として位置づけられているため、口腔ケアだけでなく栄養・服薬・生活リズムといった情報をケアマネ・主治医と共有するハブにもなります。

独自視点として、訪問歯科の口腔ケアを「単独のサービス」として見るのではなく、「在宅ポートフォリオ」の中で訪問看護・訪問リハ・小規模多機能型居宅介護などとどう組み合わせるかを設計することで、医療保険と介護保険の違いを前提にした“ポートフォリオマネジメント”を行う、という発想も有効です。

訪問歯科と介護保険の関係、自己負担や手続きの基礎を解説している患者向け情報(費用・利用条件の全体像の参考)
訪問歯科で介護保険は使えるの?健康保険との併用や手続きについて(岡崎歯科医院)

 

 


歯科衛生士のための歯科診療報酬入門 2020-2021