
国際的なビジネスや投資において、同一の所得に対して居住地国と源泉地国の両方で課税される「二重課税」は避けることのできない問題です。
例えば、日本の法人が海外で事業を行った場合、その所得は海外で現地の法人税が課税されると同時に、日本でも全世界所得課税の原則により法人税が課されることになります。この結果、同一の所得100に対して海外で10%、日本で30%の税率が適用されれば、合計40%という高い税負担が発生してしまいます。
この二重課税の問題は、FX取引においても重要な意味を持ちます。海外のFXブローカーを通じて取引を行った場合、利益に対して源泉地国で課税されることがあり、同時に日本でも総合課税や申告分離課税の対象となる可能性があります。
国際的な税務当局も、このような不合理な二重課税は回避すべき事柄であると理解しており、各国は独自の救済措置を設けています。日本においては「外国税額控除」という制度がその中心的な役割を果たしています。
外国税額控除の適用対象となる「外国税額」には明確な定義があります。控除対象となるのは、日本の法人税・所得税に類似した外国の税金のみであり、海外の消費税や付加価値税などは対象外です。
具体的には以下のような特徴を持つ税金が対象となります。
外国税額控除を適用するタイミングについても重要なルールがあります。原則として、海外支店で申告があった事業年度に適用しますが、例外として納付することが確定した外国法人税を費用計上した事業年度に適用することも可能です。
この制度は、特に海外に支店や子会社を持つ法人にとって重要な意味を持ちます。外国支店を通じて事業を行う場合、その支店で発生した所得は内国法人の法人税の課税所得に含めて申告納税を行う必要がありますが、同時に外国で課された法人税については外国税額控除の適用を受けることができます。
外国税額控除の計算において最も重要なのが「控除限度額」の概念です。控除できる外国税額は無制限ではなく、以下の計算式により上限が設定されます:
控除限度額 = 法人税額 × 国外所得金額 ÷ 全世界所得金額
この計算において、実際に控除される金額は「外国税額」と「控除限度額」のいずれか少ない金額となります。残りの部分については3年間の繰越しが可能です。
国外所得金額の計算は複雑で、以下の要素を考慮する必要があります。
さらに、欠損金控除前課税所得の金額の90%という上限も設定されており、これらの計算を通じて適正な控除限度額が算定されます。
地方税についても、法人税の控除限度額を基準として以下の控除限度額が設定されます:
外国税額控除制度と密接な関係にあるのが「租税条約」です。租税条約は、二国間または多国間で締結される国際協定で、国際的二重課税の排除と脱税防止を目的としています。
租税条約の主な機能には以下があります。
租税条約により税率の軽減・免除を受けられる場合でも、外国税額控除の適用は可能です。ただし、軽減・免除規定を超える外国法人税が課された場合には、超過部分について別途検討が必要となります。
FX取引においても、取引を行う国との間に租税条約が締結されている場合、源泉地国での課税が軽減される可能性があります。これにより、外国税額控除の計算においても有利な条件で適用を受けることができる場合があります。
また、租税条約には「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)」の概念も含まれており、これにより外国での事業活動が課税対象となる基準が明確化されています。
外国税額控除の適用において、実務上注意すべきポイントが数多く存在します。まず、外国税額控除と外国税額の損金算入の選択について、法人は有利不利の判定を行う必要があります。
有利不利判定の基準:
控除の順序についても厳格なルールが定められており、法人税→地方法人税→道府県民税→市町村民税の順序で控除を行います。繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額については、発生年度の古い順、かつ同一年度については国税、次いで地方税の順に控除します。
また、国外支店を有する法人の場合、内部取引の認識も重要な要素です。日本の本店と海外支店との間の取引については、移転価格税制の文書化の対象となる可能性があります。
共通費用の配分計算も複雑で、以下の算式が適用されます。
共通費用 = 双方で生じた販管費の額 × 外国支店の売上総利益 ÷ 全世界の売上総利益
共通利子 = 双方で生じた負債利子の額 × 前期及び当期末の海外支店の総資産 ÷ 前期及び当期末の全体の総資産
これらの計算を通じて、適正な国外事業所等帰属所得を算定し、外国税額控除の基礎となる数値を確定させる必要があります。