
弁論準備手続は、民事訴訟法第168条以下に規定される争点整理手続の中核的な制度です。この手続は、裁判所内の準備室において非公開で実施されるのが基本的な形態であり、原告・被告双方の当事者または代理人が裁判官と直接面談しながら争点整理を行います 。
参考)弁論準備手続きとは?
実務においては、弁論準備手続の期日では当事者の一方が現実に出頭している場合に限り、他方の当事者が電話会議システムやウェブ会議システムを利用した通信による出頭が認められています 。この制度により、遠方に居住する当事者の負担軽減が図られています。
参考)http://civilpro.sx3.jp/kurita/procedure/lecture/pretrial1.html
弁論準備手続では、準備書面の陳述や書証の取り調べが正式に実施でき、和解の協議も行うことが可能です 。また、手続調書が作成されるため、期日での発言内容が正式に記録として残ります 。
参考)民事IT裁判FAQ3~弁論準備との違いは?~
書面による準備手続は、民事訴訟法第175条以下に規定される最も特殊な争点整理手続です。この手続の最大の特徴は、当事者が裁判所に出頭せずに済むという点にあります 。
参考)【争点整理手続】書面による準備手続の様子 - 夕陽ヶ丘法律事…
実際の運用では、「裁判所には裁判官だけがおり、双方の弁護士は電話で参加する」形態、または「裁判官、双方の弁護士がウェブ会議システムを使って手続を行う」形態が採用されています 。この方式により、当事者の地理的制約を完全に排除できます。
ただし、書面による準備手続には重要な制約があります。提出された書面は正式な陳述扱いにならず、証拠も正式な取り調べとはならないため、後日の口頭弁論期日において改めて正式な陳述と証拠調べが必要になります 。
参考)準備的口頭弁論,弁論準備手続,書面による準備手続 - 原孝至…
弁論準備手続では、民事訴訟法第170条第2項により書証の取り調べが正式に実施できます 。これは弁論準備手続の大きな利点の一つで、争点整理と同時に証拠の確認も行えるため、訴訟の効率化に大きく貢献します。
準備書面についても、弁論準備手続では民事訴訟法第170条第1項および第5項により正式な陳述として扱われます。これにより、当事者の主張が訴訟記録上確定し、後日の口頭弁論期日で改めて陳述する必要がありません 。
さらに、弁論準備手続では和解の協議も可能であり(民事訴訟法第170条第1項)、争点整理から和解による解決まで一貫した対応が取れます 。これは実務上、非常に重要な機能です。
書面による準備手続の最大の制約は、正式な陳述や証拠調べができないことです 。民事訴訟法第175条以下には、弁論準備手続のような陳述や証拠調べに関する明文の規定がないため、書面や証拠の提出は事実上のものに留まります。
この制約により、書面による準備手続では手続調書も作成されません 。そのため、期日での発言内容を記録に残したい場合は、「令和○年○月○日の書面について、以下のように補充する」といった形で、改めて書面を提出する必要があります。
また、和解手続についても書面による準備手続では実施できないため 、和解を希望する場合は弁論準備手続への移行または口頭弁論期日の開催が必要になります。これは実務上、大きな制約となります。
両手続の使い分けは、事案の性質と当事者の状況により決定されます。弁論準備手続は、複雑な争点がある事件や証拠調べが必要な事件に適しており、当事者間の直接的な議論が重要な場合に選択されます 。
参考)https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20505102.pdf
書面による準備手続は、当事者が遠隔地に居住している場合や、争点が比較的単純で書面による整理で十分な場合に活用されます 。しかし、実務では弁論準備手続と比較して利用頻度が低いのが現状です。
参考)https://ameblo.jp/satoshi-maruno/entry-12593664430.html
2022年の民事訴訟法改正により、IT化が進展し、ウェブ会議システムの活用が本格化していますが、これにより書面による準備手続の相対的な重要性は変化している可能性があります 。金融業務においては、契約関係の複雑さを考慮すると、弁論準備手続の選択がより適切な場合が多いと考えられます。
参考)https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2024_04/lbr_2024_04.pdf