バーチャル株主総会の参加型と出席型の違いと選び方

バーチャル株主総会の参加型と出席型の違いと選び方

バーチャル株主総会の参加型・出席型を徹底比較

参加型でオンライン視聴した株主は、事前に議決権行使書を出さないと議決権がゼロになります。


📋 この記事の3つのポイント
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参加型と出席型の本質的な違い

「参加型」はオンラインで傍聴するだけで会社法上の「出席」にならず、議決権行使も質問権も使えない。「出席型」は会場参加と同等の権利を持つ。この違いを知らないと大切な議決権を行使できないまま終わる。

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参加型で起こりがちな議決権の失効リスク

参加型でオンライン視聴をする場合、当日のリアルタイム議決権行使は認められない。事前に書面または電磁的方法で議決権行使を完了させておかないと、保有株式の議決権が完全にゼロ扱いになるケースがある。

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出席型を選ぶ企業は2%にとどまる現状

2025年6月の日本経済新聞の調査によると、当日オンラインで質疑応答・議決権行使ができる出席型は全体の約2%にすぎない。自分が保有する企業がどちらの型か確認することが株主として不可欠。


バーチャル株主総会とは何か・参加型と出席型の基本的な仕組み


バーチャル株主総会とは、インターネットを通じてオンライン上から参加または出席できる株主総会の形態です。従来の株主総会は指定された会場に足を運ぶ必要がありましたが、近年では遠方に住む株主の利便性向上や感染症対策などを背景に、オンライン参加を認める企業が急増しています。


バーチャル株主総会には大きく分けて2種類があります。1つは「ハイブリッド型」で、リアル会場とオンラインを同時に開催するもの。もう1つは「バーチャルオンリー型」で、物理的な会場を一切設けずオンラインのみで開催するものです。


ハイブリッド型はさらに2つに分かれます。それが「参加型」と「出席型」です。この2つは名称が似ているため混同されがちですが、株主として持つ権利の範囲がまったく異なります。


参加型(ハイブリッド参加型バーチャル株主総会)は、オンラインで審議を視聴・傍聴できるものの、会社法上の「出席」とは認められない形態です。つまり、リアル株主総会には「出席していない」扱いになります。映像や音声でリアルタイムに総会を確認できますが、法律上は傍聴者に近い立場です。


出席型(ハイブリッド出席型バーチャル株主総会)は、オンラインからの参加が会社法上の「出席」として認められる形態です。会場に出向いた株主と同等の権利を持ち、リアルタイムでの議決権行使も質問も行えます。ソフトバンクグループは2022年にこの出席型を採用し、「オンラインでの出席や議決権行使、質問などができる株主専用ウェブサイトを活用」したと公表しています。


つまり、参加型は「見るだけ」で出席型は「フル参加」という理解が基本です。


項目 参加型 出席型
会社法上の出席 ❌ 認められない ✅ 認められる
リアルタイム議決権行使 ❌ 不可 ✅ 可能
質問権(会社法314条) ❌ 不可 ✅ 可能
動議提出 ❌ 不可 ✅ 可能
事前議決権行使の要否 ⚠️ 必須 任意(当日行使可)


参加型が現在も最も多く採用されている形態です。経済産業省によると、2021年6月の株主総会では317社がバーチャル株主総会を開催しましたが、そのうち出席型はわずか14社(約4.4%)で、303社が参加型でした。これが原則です。


▶ バーチャル株主総会の種類と違いを法的観点から解説(契約ウォッチ)


バーチャル株主総会の参加型で議決権を行使する正しい手順

参加型のバーチャル株主総会に参加する株主が最も注意しなければならないのは、議決権の行使方法です。ここを誤ると、せっかく株を保有していても経営への意思表示ができなくなります。


参加型では、オンラインで視聴中の株主は会社法上「出席していない」扱いとなります。そのため、当日リアルタイムで議決権を行使することができません。議決権を行使したい場合は、株主総会当日よりも前に「書面による議決権行使(議決権行使書の郵送)」または「電磁的方法による議決権行使(インターネット投票)」を完了させておく必要があります。


招集通知に同封されている議決権行使書に各議案への賛否を記入して返送するか、インターネット投票のURL・QRコードを使ってオンライン投票を済ませる、この2つが事前行使の主な方法です。行使期限は各社の招集通知に明記されていますが、一般的には「株主総会前日の営業時間の終了時」まで(会社法311条1項)とされています。


忘れやすいのが「行使書を出さずに視聴だけしてしまう」ケースです。参加型の場合、視聴のみで議決権行使書を提出していなければ、その株主は完全に棄権したものとして扱われます。これは直接的な損失ではないものの、経営判断に関与できない機会損失につながります。


また、招集通知にはオンライン参加に必要なIDやパスワード、アクセスURLが記載されています。これらの情報も確認したうえで、当日の視聴に備える必要があります。


💡 事前議決権行使のポイントをまとめると以下のとおりです。


  • 📬 書面行使:招集通知に同封の議決権行使書に記入・返送。締め切りは総会前日の営業時間終了時が一般的。
  • 💻 インターネット行使:招集通知のQRコードまたはURLからログインし、議案ごとに賛否を選択。24時間対応で利便性が高い。
  • 📋 代理人委任:信頼できる代理人に委任状を渡す方法も有効。当日の議論を踏まえた柔軟な判断が可能。


事前に議決権を行使することが基本です。参加型で視聴するつもりの株主は、行使書の締め切りを見落とさないよう、招集通知が届いたら最初に期限を確認することをお勧めします。


バーチャル株主総会の出席型で知っておくべき議決権の優先順位ルール

出席型のバーチャル株主総会では、オンライン参加が会社法上の「出席」として認められるため、当日リアルタイムで議決権を行使できます。ここまでは多くの株主が認識していますが、意外と知られていないのが「事前に議決権行使書を提出していた場合の扱い」です。


事前に議決権行使書を郵送またはインターネット投票していた株主が、当日になって出席型でバーチャル出席した場合、議決権の効力はどうなるのでしょうか?


経済産業省の「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド別冊事例集」によると、事前の議決権行使をしている場合の優先順位は以下のとおりとされています。


  1. ① バーチャル出席中の議決権行使(最優先)
  2. ② 事前のインターネットによる議決権行使
  3. ③ 議決権行使書用紙(書面)による事前行使


つまり、事前に行使書を出していたとしても、当日出席型でログインして別の意思表示をすれば、そちらが優先されます。これは「予定が変わって当日参加できることになった」株主にとって有利なルールですが、このルールを知らないまま当日に誤って議決権を行使してしまうリスクもあります。


また、出席型でバーチャル参加した後に何も行使しなかった場合、事前の議決権行使が有効として残るかどうかは各企業の規定によって異なります。この点については招集通知に明記されているため、事前に確認しておくことが重要です。


さらに注意が必要なのが通信障害のリスクです。出席型では株主が会社法上の出席者として扱われるため、通信障害によってオンライン参加が途絶えた場合、決議の有効性が争われる可能性があります。厳しいところですね。経済産業省のコーポレートガバナンス研究会(2025年1月)でも「通信障害時の株主総会決議取消リスクに特段の手当がなされていない」点が課題として挙げられています。


バーチャル株主総会の参加型・出席型のメリット・デメリット比較

参加型と出席型はどちらを選ぶのが有利なのでしょうか? 株主側の立場から、それぞれのメリット・デメリットを整理します。


参加型のメリットとしては、まず企業側の準備・運営負担が少ないため実施企業数が多い点が挙げられます。2021年時点で参加型303社に対して出席型はわずか14社という数字が示すとおり、多くの上場企業が採用しているのは参加型です。つまり株主として「バーチャルで視聴できる機会」自体は確保されやすいといえます。


また参加型は、複数の企業の株主総会を同日にオンラインで傍聴できる点も大きなメリットです。毎年6月末に株主総会が集中しますが、参加型であれば複数社の総会を「はしご視聴」できます。これは特にアクティブな個人株主にとって有益です。


一方、参加型のデメリットは、議決権・質問権・動議権がすべて当日には使えない点です。経営に積極的に関与したい株主にとっては大きな制約です。


出席型のメリットは、会場に行かなくても完全な株主権を行使できる点です。遠方に住む株主や、移動が困難な株主でも質問や議決権行使がリアルタイムで可能になります。これは使えそうです。


出席型のデメリットとして最も深刻なのは、通信障害リスクです。2025年6月の日本経済新聞によると、出席型を採用している企業は全体の約2%にとどまります。その主な理由の一つが「通信障害による決議取消リスクへの懸念」であり、経済産業省の調査では採用検討企業の79%がこのリスクを障壁として挙げています。


  • 参加型のメリット:実施企業が多く視聴機会が豊富、複数社の総会を同日傍聴できる
  • ⚠️ 参加型のデメリット:当日の議決権・質問・動議は行使不可、事前行使の忘れで完全棄権になるリスク
  • 出席型のメリット:会場不参加でもフル株主権を行使できる、遠方株主に配慮
  • ⚠️ 出席型のデメリット:採用企業が約2%と少ない、通信障害による決議取消リスクあり


どちらの型かを株主として事前に把握することが条件です。招集通知の記載をしっかり確認することが、権利行使の第一歩になります。


バーチャル株主総会のバーチャルオンリー型との違いと今後の動向

参加型・出席型のハイブリッド型に加えて、近年注目されているのが「バーチャルオンリー株主総会(場所の定めのない株主総会)」です。これは、物理的な会場を一切設けずにすべてオンラインで開催するもので、2021年6月16日の改正産業競争力強化法の施行によって、条件を満たした上場会社に限り認められるようになりました。


バーチャルオンリー株主総会を開催するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。


  • 📌 上場会社であること
  • 📌 経済産業大臣・法務大臣の確認を受けること
  • 📌 定款に「場所の定めのない株主総会を開催できる」旨を定めること(特別決議が必要)
  • 📌 株主総会の招集決定時に省令要件を充足すること


日本初のバーチャルオンリー株主総会を実施したのは株式会社ユーグレナで、2021年8月26日に臨時株主総会として開催。そのアンケートでは参加者の99.5%が「評価する」と回答した実績があります。


ただし普及は非常に遅れています。大和総研の2025年2月のレポートによると、バーチャルオンリー株主総会の実施状況は「極めて低調」と評されており、2024年11月末時点での定款変更済み企業は458社にとどまります。主な障壁は手続きの煩雑さと通信障害リスクです。


この背景を受けて、政府は2025年以降の法改正検討の中で、通信障害が発生した場合でも決議が取り消されないための特則規定の整備を議論しています。今後、法改正が進めばバーチャルオンリー型の採用企業が増え、株主にとっての利便性はさらに向上するでしょう。いいことですね。


現時点では、参加型・出席型・バーチャルオンリー型の3つが並存している状態です。株主として賢く権利を行使するためには、まず保有株の企業がどの形態を採用しているかを招集通知で確認することが最も重要なステップになります。


▶ 内閣府規制改革推進会議「バーチャルオンリー総会の現状と課題について」(2024年12月・最新データあり)


バーチャル株主総会への参加で株主が実践すべき5つの確認事項

バーチャル株主総会に参加する株主として、実際に行動に移す際に押さえておくべき確認事項を整理します。これらは参加型・出席型いずれの場合も関係するため、総会シーズン前のチェックリストとして活用してください。


① 招集通知の受け取りと形態の確認


招集通知には、その総会が「参加型」か「出席型」かが明記されています。日本郵政の招集通知のように「ライブ中継を通じての議決権行使及び質疑はできません」と明示している場合は参加型です。この一文を見落とすと、権利行使の機会を逃します。


② 事前議決権行使の期限を即確認


参加型の場合、事前の議決権行使が唯一の意思表示手段です。招集通知が届いたらまず議決権行使の期限を確認し、カレンダーやスマートフォンのリマインダーに登録しておきましょう。これだけ覚えておけばOKです。


③ オンラインアクセスに必要なIDとURLの保管


バーチャル参加のためのID・パスワード・URLは、招集通知に記載されています。当日になって見つからないケースが多発しているため、デジタルメモや写真で保存しておくことをお勧めします。


④ 出席型の場合の通信環境チェック


出席型でリアルタイム議決権行使を行う場合は、安定したインターネット接続環境が必要です。Wi-Fiとモバイル回線の両方を確保しておくと安心です。株式会社アドウェイズのように接続テスト用URLを事前発行している企業もあるため、そういった機会は活用しましょう。


⑤ 参加企業ごとの規定の違いを把握


議決権行使の優先順位ルールや、バーチャル出席後の事前行使の有効性については企業ごとに規定が異なります。招集通知の「議決権行使の取り扱い」セクションを必ず一読することが原則です。


バーチャル株主総会に関する最新情報の収集には、東証(東京証券取引所)が公開しているコーポレートガバナンス白書や、各社の招集通知(電子版)が信頼性の高い情報源となります。また、スマートフォンからも電子投票ができる「議決権電子行使プラットフォーム(ICJが運営)」を利用することで、複数社の議決権行使を一元管理することも可能です。




株主総会の手引き なるほどQ&A〈2026年版〉