
暗号資産ETFの規制承認状況は、2024年から2025年にかけて大きな転機を迎えています。米国での現物ビットコインETF承認を皮切りに、世界各国で暗号資産に対する規制環境が急速に整備されており、投資家保護とイノベーション促進の両立を目指した新たな法的枠組みが構築されています。
米国では2024年1月に複数の現物ビットコインETFがSECによって承認され、取引が開始されました。これに続き、2024年7月には現物イーサリアムETFも承認されており、暗号資産ETF市場の基盤が着実に構築されています。
2025年2月13日には、米SECがグレースケールとNYSEアーカのXRP現物ETFの審査を開始したことが話題となりました。これまで仮想通貨規制に積極的であったSEC委員長の交代もあり、ドージコインやソラナなど多数のアルトコインETFも審査段階に入っています。
現在申請中のアルトコインETF一覧 💎
米SECは申請の受理から約15日以内に審査に関する判断を下すとされており、DTCC登録まで完了している申請については近日中の承認発表も期待されています。
ただし、SECは現在すべての上場に適用できる一般規則の作成に取り組んでおり、新たな暗号資産現物ETFの承認は秋の初めごろになる可能性があると報じられています。これまで必要だった19b-4様式の申請書を省略できる新ルールの導入により、承認プロセスの効率化が図られる見込みです。
日本では2024年12月現在、暗号資産ETFは承認されておらず、どの証券会社でも購入することができません。しかし、金融庁をはじめとする規制当局による制度整備の議論が本格化しています。
2025年6月25日、加藤勝信財務相兼金融担当相が金融審議会に「暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討」を諮問しました。この諮問では、「国内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえ、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行う」ことが明記されています。
金融庁の主要な検討項目 ⚖️
2025年7月には、金融庁が暗号資産・ブロックチェーン専門の新役職を設置することが発表されました。これは日本が仮想通貨関連企業を誘致し、技術発展を促進する上で国際的な競争力を維持するための重要な一手とされています。
SBIホールディングスは、日本初のビットコイン・XRP連動ETFの計画を発表しており、「規制当局の承認を得た後に商品を提供する」方針を示しています。金融庁との協議が進行中である可能性があり、承認が得られれば日本の厳格な金融市場において初めての暗号資産ETFとなる見通しです。
世界各国では、それぞれ異なるアプローチで暗号資産ETFの規制枠組みを構築しています。特に注目すべきは、各国の規制当局が投資家保護と市場の健全性確保を重視しながらも、イノベーション促進にも配慮した制度設計を行っている点です。
ブラジル 🇧🇷
2025年2月19日、世界で初めてXRPの現物ETFが承認されました。ブラジルは2024年8月に世界初となるSOLの現物ETFも承認しており、現物ETF承認に積極的な姿勢を示しています。
欧州連合(EU) 🇪🇺
EUではMiCA(Markets in Crypto-Assets)規制が施行されており、暗号資産を投資商品、電子マネー、ユーティリティトークンの3つのカテゴリーに分類しています。この包括的な規制枠組みにより、暗号資産の法的地位が明確化され、ETF組成への道筋が整備されています。
中国 🇨🇳
中国では暗号資産取引の全面禁止政策が継続されており、ETFの承認は見込めない状況です。分散型台帳技術(DLT)の応用としての暗号資産が金融法的関係に与える影響を重視し、厳格な規制を維持しています。
シンガポール 🇸🇬
金融管理庁(MAS)による段階的な規制整備が進んでおり、デジタル資産の枠組み構築を急速に進めています。機関投資家向けの暗号資産投資商品の拡充が図られています。
これらの国際的な動向を受けて、日本でも競争力を維持するための制度整備が急務となっています。特に、EU、シンガポール、米国などの先進的な取り組みを参考にしながら、日本独自の規制アプローチの構築が求められています。
暗号資産ETFの規制承認プロセスにおいて、最も重要な課題の一つが投資家保護と技術革新のバランスです。規制当局は消費者の利益を守りながら、同時にブロックチェーン技術の発展を阻害しないよう慎重な対応を求められています。arxiv
主要なリスク要因 ⚠️
米SECのHester Peirce委員(通称「クリプトママ」)は、ビットコインETFの承認プロセスが「ひどく誤って管理された」と批判し、長引く遅延がイノベーションを阻害したと述べています。このような指摘は、規制当局が技術革新を適切に評価し、迅速な意思決定を行う必要性を示しています。
オルタナティブ投資運用協会(AIMA)は、SECに対し他の資産クラスのETPと同様の承認基準を暗号資産ETPにも適用し、現物拠出・償還(in-kind creation and redemption)を可能にすることで、より堅牢で透明性の高い枠組みを構築するよう提言しています。
日本における課題と対応策 🎯
日本では、暗号資産が現在「決済手段」としての法的地位を有していますが、金融庁の提案が承認されれば、一部トークンは証券として扱われることになります。これにより、ETFの組成が可能となり、暗号資産に対する課税負担も軽減される可能性があります。
暗号資産ETFの規制整備は、FX取引に従事する投資家にとって新たな投資機会と戦略の多様化をもたらす可能性があります。特に、為替市場との相関性や、ヘッジ手段としての活用が注目されています。
FX取引者にとってのメリット 💼
従来、FX取引者が暗号資産に投資する際は、専用の取引所での口座開設や複雑な税務処理が必要でした。しかし、ETFの形での提供により、既存の証券口座を通じた簡便な取引が可能になります。
暗号資産ETFの承認は、単なる事務的な手続きではなく、新しい資産クラスに対する規制当局の理解と受容の度合いを示すバロメーターとして機能しています。承認の遅延や加速は、技術的な問題や市場の成熟度だけでなく、規制当局の根本的な考え方や政治的影響力の変化を反映しています。
今後の展望 🔮
投資家にとって重要なのは、これらの制度変更を見据えた長期的な投資戦略の構築です。規制環境の整備により、暗号資産は投機的な資産から、機関投資家も参加する成熟した投資商品へと変化する可能性が高まっています。
参考:金融庁の暗号資産制度検討に関する詳細情報
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/soukai/siryou/20250625.html
参考:米SECの暗号資産ETF承認プロセスの詳細
https://www.sec.gov/spotlight/cryptocurrency-enforcement-actions
参考:EUのMiCA規制全文(日本語要約版)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1114/oj