PE課税恒久的施設の仕組みと課税対象範囲解説

PE課税恒久的施設の仕組みと課税対象範囲解説

PE課税恒久的施設の仕組み

PE課税恒久的施設の基本構造
🏢
恒久的施設の定義

事業を行う一定の場所として認定される施設

📊
課税権の配分原理

居住地国と源泉地国での税収配分システム

⚖️
国際税務の基本原則

PEなければ課税なしの根本的考え方

PE課税恒久的施設の基本定義と概念

恒久的施設(Permanent Establishment: PE)は、国際課税において極めて重要な概念です。PEとは、一般的に事業を行う一定の場所等を指し、「PEなければ課税なし」という基本ルールが国際税務の根幹となっています。
外国法人が日本国内で事業を行う際、日本国内にPEを有していない場合には、その外国法人の事業所得は日本で課税されることはありません。しかし、PEの存在が認定された場合、日本を源泉とする所得のすべてが課税対象となる「総合主義」に基づく課税が行われます。
国際課税では、企業の本店所在地国(居住地国)とPE所在地国(源泉地国)との間で課税権の配分が行われ、この配分原理により二重課税の回避や適切な税収確保が図られています。

PE課税恒久的施設の3つの分類体系

恒久的施設は、国内法において以下の3つの区分に分類されています:
1. 支店PE
支店、事務所、工場、出張所、倉庫、作業場などが該当します。平成30年の税制改正により、保管・展示などを目的とした施設でも、その活動が事業遂行に重要な場合はPEに認定されることとなりました。
2. 建設PE
建設工事や据付工事、組立等の建設作業などの現場で1年を超える期間存続するものです。契約期間を細分化することによるPE認定回避に対応するため、人為的に契約期間を分割した場合は、分割された期間を合計して1年超の判定を行うように改正されています。
3. 代理人PE
非居住者のためにその事業の契約を結ぶ権限があり、その権限を常習的に行使する者や、商品等の資産を保管し、顧客への引き渡しを行う者、注文の取得等の重要な部分を行う者が該当します。

PE課税恒久的施設の課税対象となる所得範囲

PE課税において、課税対象となる所得は明確に定められています。恒久的施設を有する非居住者に対する使用料等の対価について、その対価が恒久的施設に帰せられる所得である場合は、原則として源泉徴収の上で課税されます。
総合主義による課税
PEの存在が認定された場合、日本を源泉とする所得のすべてが課税対象となります。これは、PE所在地国である日本が包括的な課税権を行使することを意味します。
投資所得との区分
国内にPEが無く、外国法人が利子・配当・使用料等の投資所得を受領する場合は、所得税の源泉徴収だけで国内の課税関係が完結します。PEの対象となる所得は事業所得に限定されることが重要なポイントです。
AOA(Authorized OECD Approach)の導入
PE所得の算定においては、AOAの導入により、より精緻な所得算定が求められるようになりました。これにより、PEに帰属する所得の計算がより実態に即したものとなっています。

PE課税恒久的施設の認定回避防止措置

近年、進出先国でPEの定義に抵触しない活動のみを行い、PEに該当することを人為的に回避する行為が国際的な問題となっています。BEPS行動7において、PE認定回避の防止措置が盛り込まれ、日本でも平成30年度税制改正で対応策が講じられました。
契約分割による回避防止
建設PEにおいて、PE認定回避を主たる目的として人為的に契約期間を分割した場合は、分割された期間を合計して1年超の判定を行うことになりました。
密接関連者規定の導入
密接に関連する者(直接・間接の持分割合50%超の関係その他の支配・被支配の関係にある者)との関係を考慮したPE認定が行われるようになりました。
準備的・補助的活動の範囲見直し
従来はPEから除外されていた準備的・補助的な性格の活動についても、実質的な判定が行われるようになり、事業遂行における重要性が評価基準となっています。

PE課税恒久的施設の実務判定における独自視点と注意点

PE課税における実務的な判定では、形式的な判断だけでなく、機能的な側面を重視した判定が行われます。特に、デジタル化の進展により、従来のPE概念では捉えきれない新しいビジネスモデルが登場しており、実務上の課題となっています。
インターネット販売事業での判例
東京地方裁判所の判決(平成24年(行ウ)第152号)では、非居住者がアメリカから輸入した商品をインターネットで日本国内の顧客に販売していた事案で、日本国内のアパートがPEに認定されました。この判例では、単なる保管場所ではなく、販売事業の唯一の販売拠点としての役割・機能を担っていたことが認定の決め手となりました。
BEPS2.0とデジタル課税への対応
経済のデジタル化が進み、グローバルIT企業が巨額な利益をタックスヘイブンなどに移転する問題が顕在化しています。OECDはBEPS2.0プロジェクトの中で、デジタル経済に対する課税ルールについて議論を進めており、将来的にはPE概念の更なる見直しが予想されます。
租税条約との調整
わが国が締結した租税条約において、国内法上のPEと異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上のPEを国内法上のPEとする調整規定が整備されています。これにより、国際的な整合性が確保されています。
実質的判定の重要性
PE認定においては、単に施設や場所の存在だけでなく、そこで行われる活動の実質的な内容が重要な判断要素となります。業種・業態に応じて個別の判断が必要であり、企業は自社の事業形態を十分に分析した上で、適切なPE対策を講じる必要があります。
PE課税と恒久的施設の概念は、国際的なビジネス展開において避けて通れない重要な論点です。特に、平成30年度税制改正やBEPS行動計画の影響により、従来よりも厳格な判定が行われる傾向にあるため、企業は事前の十分な検討と専門家への相談を通じて、適切な税務リスク管理を行うことが求められています。

 

国際税務調査の重要性に関する詳細情報
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2883.htm
PE関連規定の改正内容について
https://www.yamada-partners.jp/reform/h30/k01-review-of-scope-of-permanent-establishment
恒久的施設の実務判定事例集
https://www.fsa.go.jp/news/30/20190322.html