

HSコードの分類を通関業者に丸投げすると、関税を10%も多く払い続けることがあります。
HSコード(Harmonized System Code)は、世界税関機構(WCO)が定めた国際共通の品目分類番号です。現在180を超える国・地域が採用しており、世界の貿易量の98%以上がこのコードで管理されています。
コードの構造は4階層になっています。上2桁が「類(Chapter)」、上4桁が「項(Heading)」、上6桁が「号(Subheading)」で、この6桁までは世界共通です。日本ではこれに独自の3桁(統計細分)を加えた9桁のコードを使用しています。
| 桁数 | 名称 | 意味・例 |
|---|---|---|
| 上2桁 | 類 | 大分類(例:08=果実類) |
| 上4桁 | 項 | 中分類(例:0808=リンゴ) |
| 上6桁 | 号 | 国際共通番号(例:0808.10) |
| 9桁 | 統計細分 | 日本独自の追加番号(例:0808.10-000) |
つまり「9桁=日本仕様」が基本です。
輸出申告には「輸出統計品目表」の9桁を、輸入申告には「実行関税率表」の9桁を使う点も押さえておきましょう。同じ商品でも輸出・輸入で参照する表が異なります。
なお、インボイス(商業送り状)に記載するHSコードは輸入先国のものを使います。アメリカへ輸出する場合はアメリカの「HTSコード(10桁)」、イギリスへ輸出する場合はイギリスの「Commodity Code」を記載しなければなりません。日本のコードをそのまま書いてしまうミスが実務では意外と多いので注意が必要です。
品目分類とHS:税関 Japan Customs(HSコードの構造や事前教示制度について公式に解説)
HSコードを調べる最も基本的な方法は、日本税関の公式サイトにある「品目分類キーワード検索」ツールです。無料で使え、常に最新の品目表が参照できます。これは必須です。
実際の手順は次のとおりです。
ここで重要なのが、ステップ5の「注」の確認です。商品をキーワードで検索してもヒットしない場合があります。その理由は、品目表の分類が「材質」で決まるケースと「用途」で決まるケースが混在しているからです。たとえばプラスチック製の食器は「プラスチック製品」として第39類に分類され、食器という用途では決まりません。一方で革製の鞄と革製の靴では、どちらも革製品ですがHSコードが異なり、関税率も変わります。
検索のコツとして、一般名称でヒットしない場合は「ばれいしょ(じゃがいも)」「みかん(柑橘類)」のように品目表独自の表現を試してみましょう。
実際の例を示します。「テーブルナイフ」を調べる場合、まず第82類「卑金属製の工具・刃物等」に目星をつけ、「8211」(刃を付けたナイフ)から絞り込むと「8211.91.000」が該当します。このように「部→類→項→号」の順に絞り込むことが分類の基本です。
なお、セット品(複数商品のセット)の場合は、そのセットに重要な特性を与えている商品のHSコードを用いるというルールがあります。個別申告か一括申告かの判断を誤るトラブルも多いため、セット品は特に注意が必要です。
税関 品目分類キーワード検索ツール(商品名からHSコード候補を直接検索できる公式ツール)
自分で調べても答えが出ない、あるいは分類ミスのリスクを避けたい場合に最も頼りになるのが「事前教示制度」です。これは無料で使える制度です。
税関に書面(またはオンライン)で照会を行うと、原則30日以内にHSコードや関税率についての正式な回答を受け取れます。そして、その回答は原則3年間、税関の実務において尊重されます。これは非常に大きなメリットです。
なぜなら、一度取得した回答を保管しておくことで、継続取引における通関トラブルを防止できるからです。事前教示の回答書は「法的根拠のあるエビデンス」として機能します。特に高額商品や大量取引、EPA(経済連携協定)を活用する予定がある場合は、この制度を使わない理由がありません。
照会に必要な情報は以下のとおりです。
申請はオンラインで可能です。書面回答を依頼することで、問い合わせ内容と回答を記録として残せます。
事前教示制度の注意点として、照会内容と現品が異なる場合や、HS改正によって番号が変更された場合は、3年以内でも回答が無効になります。HSコードは約5年ごとに改訂されており(現行は2022年発効の「HS2022」)、2028年1月には次期改正「HS2028」が発効予定です。継続取引をしている商品については、改正後もコードが変わっていないか定期チェックが必要です。
事前教示制度オンライン申請(税関 Japan Customs):無料で照会でき、書面回答が3年間有効
HSコードを正確に特定することが、関税コスト削減に直結します。これが金融・貿易に関心がある方にとって最も重要なポイントです。
日本は現在、21の経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)を締結しており、RCEP、CPTPP(TPP11)、日EU EPA、日英EPAなど主要貿易国をカバーしています。これらを活用すると、通常の関税(MFN税率)よりも低い「特恵税率」が適用されます。日英EPAでは英国側で全品目の約99%の関税が撤廃されるほど大きな効果があります。
特恵税率を受けるには、原産地証明書の提出が必要です。そして原産地証明書には、商品のHSコードの記載が必須となっています。ここでHSコードの正確な特定が欠かせない理由があります。
具体的な仕組みを示します。EPAの「原産地規則」はHSコードごとに設定されており、代表的なものに「関税分類変更基準(CTC)」があります。これは、原材料のHSコードと完成品のHSコードが一定桁数で異なることを証明するルールです。この判定において、1桁でも分類が異なれば結論が変わることがあります。
また、HSコードを通関業者に丸投げしていると、適切なコードが選ばれずに高い関税を支払い続けることがあります。実際、適切なHSコードを選択するだけで、多い場合は10%もの関税を削減できるケースがあります。100万円の輸入品なら10万円、1000万円なら100万円の差が商品を扱い続ける限りずっと積み重なります。痛いですね。
HSコードとEPA適用の流れをまとめると次のとおりです。
関税率とEPA税率の比較にはJETROの「World Tariff(世界各国の関税率)」が使いやすいです。HSコードを入力するだけで、相手国のMFN税率・EPA税率を一覧で確認できます。
JETRO:HSコードとEPAの活用に関する基礎解説(原産地規則・原産地証明書の実務ポイントを網羅)
HSコードの分類ミスは「たかが数字の間違い」では済みません。関税の追徴課税、通関保留、FTA適用除外、さらには輸送会社からのブラックリスト扱いまで発展したケースが実際に存在します。
カナダ税関の発表によると、カナダに輸入される貨物のおよそ20%がHSコードの分類ミスを含むと報告されています。2015〜2016年の1会計年度だけで、HSコードミスによる追徴課税が2,100万カナダドル(約23億円)に達したというデータもあります。決して他人事ではありません。
日本においても、税関事後調査で分類ミスが発覚すると「過少申告加算税」が課されます。税関から調査通知を受けた後に修正申告した場合は増加税額の10%、通知前に自主申告した場合は5%が加算されます。さらに延滞税は納期限翌日から2か月以内は年率7.3%、2か月超は年率14.6%が適用されます。数年分さかのぼって追徴課税を受けるケースもあり、金額が大きくなりやすい点に注意が必要です。
具体的なミスのパターンとして以下が挙げられます。
対策の第一歩は、「社内でHSコードの付番基準を文書化する」ことです。担当者が変わってもルールが引き継がれる体制を作ることが重要です。分類に迷う商品は自己判断せず、税関への事前教示制度や通関士への相談を活用しましょう。また、HS改正のタイミング(次回は2028年1月)には、取り扱い全商品のコードを一斉見直しすることを社内カレンダーに登録しておくことをおすすめします。
税関カスタムスアンサー:修正申告・過少申告加算税・延滞税の計算方法(公式情報)