CDPスコアで見る日本企業2024年の実力と課題

CDPスコアで見る日本企業2024年の実力と課題

CDPスコアで見る日本企業2024の評価と投資への影響

CDPスコアがAの日本企業の株式は、Aスコアを持たない同業他社より過去10年間で平均6%高いリターンを出し続けている。


📊 この記事の3つのポイント
🏆
2024年Aリスト:日本が世界最多132社

気候変動部門で世界462社がAスコアを取得。 そのうち日本企業は132社と世界最多。 製造業が最もAスコア獲得割合が高いセクターとなった。

💰
142兆ドルの機関投資家がCDPを活用

現在、世界で142兆米ドル以上の資産を管理する700社以上の機関投資家がCDPスコアを投資判断に活用。スコアが低いと資金調達コストが上がるリスクがある。

⚠️
回答企業の98%はAリスト外

世界22,777社が回答したが、Aスコアを獲得できたのはわずか2%(515社)のみ。残り98%は投資家に「差別化できていない」と見られている現実がある。


CDPスコアとは何か:日本企業2024年の基礎知識

CDP(Carbon Disclosure Project)は、2000年にイギリスで設立された国際的な環境非営利団体です。企業の環境活動に関する質問書を毎年送付し、その回答内容に基づいてスコアを付与します。スコアは8段階(A・A-・B・B-・C・C-・D・D-)で評価され、最高評価の「A」を取得した企業が「Aリスト企業」と呼ばれます。


2024年は、世界全体で22,777社がCDPの質問書に回答しました。


これは前年比7%増にあたります。


日本からはプライム市場上場企業の70%超を含む約2,100社以上が回答しており、前年比9%増と世界平均を上回るペースで拡大しています。


スコアリングは「情報開示→認識→マネジメント→リーダーシップ」という4段階の評価フレームワークに基づきます。


この4段階が基本です。


単に環境データを開示するだけでは高評価にならず、リスクへの認識・具体的な管理体制・業界のリーダーシップを示すアクションまで問われます。


2024年の大きな変化として、これまで「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト(森林)」の3つに分かれていた質問書が、1つのコーポレート質問書に統合されました。つまり1度の回答で3分野すべてを開示できるようになりました。さらに新たに「プラスチック」と「生物多様性」のモジュールも追加され、評価の幅が広がっています。


金融に関心がある方には特に知っておいてほしい点があります。CDPスコアは単なる環境評価ではなく、142兆米ドル以上の資産を管理する700社以上の機関投資家が、投資や購買の意思決定に直接活用しているデータである、という事実です。


CDP公式:Aリスト2024発表リリース(日本語)


CDPスコア2024の評価基準:8段階の詳細とAリスト認定プロセス

CDPスコアの評価段階と意味を整理すると、次のとおりです。


| スコア | 評価レベル | 主な意味 |
|---|---|---|
| A | リーダーシップ(最高) | 業界の模範となる取り組みを実践 |
| A- | リーダーシップ | 優れた取り組みだが一部改善の余地あり |
| B | マネジメント | 環境への影響を管理・対策を実行 |
| B- | マネジメント | 管理体制はあるが取り組みに差がある |
| C | 認識 | 環境問題との関係を理解しているが対策は限定的 |
| C- | 認識 | 理解が始まった段階 |
| D | 情報開示 | 基本的な情報開示のみ |
| D- | 情報開示 | 最低限の開示に留まる |


「Aリスト」の認定を受けるには、スコアがAレベルの閾値をクリアするだけでは不十分です。2024年から新たに「エッセンシャルクライテリア(必須要件)」という考え方が導入されました。


これが条件です。


必須要件を満たさない企業は、他の設問で高得点を取っていてもAリストには入れません。


具体的に求められる主な要件を確認しましょう。気候変動分野では、1.5℃目標に整合した移行計画の策定・公開、スコープ1・2・3の排出量算定と第三者検証(スコープ1・2は95%以上)、再エネ利用比率10%以上などが評価に直結します。また、バリューチェーン全体のエンゲージメント(サプライヤーへの環境要件の設定・準拠確認)も重要な加点要素です。


スコアリングの特徴として、環境テーマを横断した設問(モジュール1〜6)と、気候変動に特化した設問(モジュール7)が独立して評価されます。そのため、気候変動でAを取っても、水セキュリティやフォレストで低スコアだと「ダブルA」「トリプルA」にはなりません。3分野全てでAを取る企業は世界でも8社だけです。


厳しいところですね。


ブライトイノベーション:CDP2024質問書・気候変動スコア向上のポイント詳解


2024年CDPスコア:日本企業の全体的な結果と世界比較

2024年のCDP結果が正式に発表されたのは2025年4月17日です。気候変動部門でAスコアを取得した企業は世界462社で、前年の346社から116社増加しました。


意外ですね。


日本企業の気候変動Aスコア取得数は132社で、世界全体の約29%を占める圧倒的な数字です。気候変動とウォーター(水セキュリティ)の両部門で「Aリスト企業が最も多い地域はアジア(日本)」とCDP自身が公式発表しています。


各分野の結果をまとめると、以下のとおりです。


- 🌡️ 気候変動Aリスト:世界462社(日本132社)
- 💧 ウォーター・セキュリティAリスト:世界133社(日本43社)
- 🌲 フォレストAリスト:世界26社(日本4社)
- 🏅 3分野すべてでAリスト(トリプルA):世界8社


トリプルAを獲得した企業には花王・豊田通商・ユニ・チャームなどが名を連ねています。花王は5年連続でトリプルAを取得しており、その継続性は金融市場でも高く評価されています。


一方で見逃せない事実があります。世界22,777社が回答した中で、Aスコアを獲得できたのはわずか2%(515社)にとどまっています。


つまり98%の企業はAリスト外です。


509社がBスコアを取得するにとどまっており、CDPそのものが「意欲が行動に追いついていない」と指摘しています。


また、2024年のCDP気候変動質問書の回答数は国内2,172社と過去最多を更新しましたが、回答企業が増えた分だけAリストの競争も激化しています。つまり回答すれば評価される、という単純な話ではありません。


サステナブルジャパン:2024年世界CDP Aリスト企業一覧(3分野別)


CDPスコア2024:日本企業の業種別・セクター別の傾向

業種別の傾向は投資判断において非常に参考になります。2024年のCDP独自調査(エスプールブルードットグリーン社)によると、Aスコア獲得割合が最も多かったのは「製造セクター」でした。


製造業が最多です。


具体的なデータを確認すると、製造業が気候変動AリストのTop企業を最も多く輩出しています。これは製造業が長年にわたってGHG排出量の算定・管理の仕組みを整えてきた結果です。サプライチェーンのエンゲージメントにも積極的な傾向があります。


金融・保険業では11社、情報通信業では10社、不動産業では9社がAリストに入っています。金融・保険業でAリストに入っている企業は少数ながら存在し、MS&ADインシュアランス・グループ・ホールディングス、東京海上ホールディングス、SOMPOホールディングスなどが含まれています。


注目すべき傾向として、不動産セクターでのAリスト企業が増えています。積水ハウス・三菱地所・東急不動産ホールディングスなどが気候変動と水セキュリティの両分野でAリスト入りを果たしており、不動産企業におけるESG経営の深化が数字に表れています。


いいことですね。


一方、非製造業全般(流通・サービス等)では、製造業と比べてAスコアの取得率がまだ低い状況です。WWFジャパンの分析でも「製造業の企業がSBTの取得をリードしており、非製造業は相対的に遅れている」との指摘があります。このギャップは投資先選定において注目に値します。


WWFジャパン:日本企業気候アクションの現在地(業種別の取り組み比較)


CDPスコア2024と投資家の関係:142兆ドルが動く評価基準

CDPスコアが金融市場でどれほど影響力を持つか、数字で見ると実感できます。現在、CDPには142兆米ドル以上の資産を管理する740社以上の機関投資家が署名しており、企業の環境行動を評価するプラットフォームとして活用しています。142兆米ドルというのは、日本のGDPの約25倍規模に相当します。


これは使えそうです。


CDPスコアとESG投資の関係は具体的には次のような形で現れます。


- 📈 ESG指数への組み入れ:FTSE4Good IndexやDow Jones Sustainability Indexなど著名なESG指数の銘柄選定でCDPスコアが活用されています。


- 🏦 グリーンボンド・ESG債の評価基準:CDPスコアは資金調達コストに影響する可能性があります。高スコアは有利な調達条件につながるケースがあります。


- 💬 機関投資家とのエンゲージメント:高スコアは投資家との建設的な対話を促進し、長期的な企業価値評価に寄与します。


重要なデータがあります。CDPの分析によると、Aリストにランクインした企業は、同業他社と比べて過去10年間で平均6%高い株式リターンを記録しています。年間6%の差は複利効果で考えると非常に大きな差になります。10年で積み上げると、元本100万円の投資に対して単純計算で60万円以上の差が生まれる可能性があります。


ESG投資が拡大するなか、CDPスコアは単なる「環境への配慮」の指標を超えて、企業の長期的な収益性・リスク管理能力を映す鏡として機能しています。投資判断の参考情報を体系的に集めたい場合、ESG情報サービス(MSCI ESGレーティングやBloombergのESGデータ)と組み合わせて確認するとより精度の高い分析ができます。


PRTimes:CDP2024最高評価Aリスト選定企業(花王)のプレスリリース・142兆ドル言及あり


CDPスコア2024:サプライチェーンへの影響と中小企業のリスク

CDPスコアの影響は上場大企業だけの話ではありません。


これが大きなポイントです。


CDPはサプライチェーンプログラムを運営しており、大手購買企業(バイヤー)がサプライヤーにCDP質問書への回答を要請する仕組みになっています。


つまり、大企業がCDP回答を必須にするサプライヤー評価基準を設けた場合、回答しない中小企業は取引を失うリスクに直面します。特に欧米の多国籍企業をクライアントに持つ日本の中小企業・中堅企業にとっては、無視できないリスクです。


2024年の質問書では、大企業がサプライヤーへの環境要件(SBT設定など)を準拠させているかどうかも評価項目に含まれています。これはサプライヤー側に環境開示を求める圧力が高まることを意味します。実際に、CDP2024のコーポレート質問書では、「重要なサプライヤーに対してCDP回答を要求し、かつ一定割合が準拠しているか」という点が加点要素になっています。


中小企業向けには「CDP SME(中小企業版)」が2024年から本格整備されました。通常のコーポレート質問書よりも設問数が少なく、気候変動に絞ったシンプルな構成になっています。SME版は中小企業のリソースに配慮した設計です。ただし2024年度はリーダーシップレベルのスコア設定はなく、将来的に追加される予定です。


中小企業がCDPへの回答を検討するきっかけとして最も多いのは「取引先(大手バイヤー)からの要請」ですが、自社の排出量を把握できること自体が省エネコストの削減や経営効率化にもつながります。


CDP回答は攻めの経営戦略です。


まず自社のGHG排出量(スコープ1・2)を把握するところから始めるのが、現実的な第一歩です。


リクロマ:中小企業のCDP回答がビジネス機会を拡大する理由・詳細解説


CDPスコア2024の評価向上:日本企業がAリストに入るための実践ポイント

2024年のCDP評価向上のポイントは、「エッセンシャルクライテリア」の導入によって従来より高いハードルが設定されています。Bスコア企業がA-以上に上げるために特に重要なポイントを整理します。


【気候変動モジュールで差がつく主要ポイント】


- 🎯 1.5℃整合の移行計画を公開していること(移行計画の公開・株主フィードバック収集の仕組みが必須)
- 🔬 シナリオ分析を定量・定性の両面で実施(1.5℃〜4℃の複数シナリオ、組織全体を対象)
- ✅ スコープ1・2排出量の95%以上を第三者検証(検証書類の添付も必須)
- 🌱 再エネ比率10%以上(25%・75%・99%以上で段階的に加点)
- 🔗 サプライヤーへの環境要件設定と準拠確認(SBT設定をサプライヤーに求めるなど)


数字を示すと、排出削減目標については年間削減率4.2%以上が最高加点のラインとなっています。これはSBTi(科学的根拠に基づく削減目標イニシアティブ)のパリ協定整合レベルに相当します。SBTiの承認を得ている企業はCDPルートよりも有利に評価される「SBTルート」を選択できます。


また、インターナル・カーボンプライス(社内炭素価格)を「複数のビジネス上の意思決定プロセスに適用している」かどうかも評価されます。単に社内炭素価格を設定するだけでなく、実際の投資判断や調達判断に使っているかが重要です。


スコアアップを目指す企業にとって、CDP回答支援サービスを提供するコンサルタント会社(エスプールブルードットグリーンやブライトイノベーションなど)の活用も有効な手段です。2024年のCDP質問書でエスプールブルードットグリーンは185社・243件の回答支援を実施しており、独自調査資料も公開しています。スコア向上のために外部知見を借りるのは問題ありません。


リクロマ:CDP BスコアからA-スコアに上げるための具体的対策


独自視点:CDPスコアは「株式スクリーニング指標」として使えるか

金融に関心がある個人投資家にとって、CDPスコアを「株式銘柄スクリーニングの一指標」として活用するアプローチは、あまり語られていない視点です。


これは使えそうです。


まず認識しておく必要があるのは、CDPの公式サイト上でCDPスコアを「ESG投資、パフォーマンス分析、投資分析を目的として使用することはできない」と明記されている点です。あくまで情報開示のプラットフォームとしての制限です。しかし、第三者の調査機関や機関投資家は実際にCDPデータを企業評価に組み込んでいます。


投資家目線でCDPスコアを分析すると、注目すべき点がいくつかあります。


- 🔍 AリストはAリストになった年だけ見るのでは不十分 → 複数年にわたって継続してAスコアを取得しているか(継続性)が企業の環境経営の本質的な強さを示す
- 📊 スコアが「C→B→A」と上昇中の企業は要注目 → スコアが改善傾向にある企業は、ESG対応の取り組みが加速しており、将来的な企業価値向上が期待できる
- ⚡ スコアが「A→B」と低下した企業にはリスクがある → 開示姿勢や環境対応が後退している可能性がある


CDPスコアの推移を活用した投資アプローチは、長期投資において有効なシグナルになり得ます。CDP公式サイトや、Bloombergのサステナビリティデータ、東洋経済の「CSRデータ」などでスコアの時系列推移を確認することができます。結論はスコアの「水準」より「トレンド」を見ることが重要です。


CDPスコアをポートフォリオ構築の参考情報として使う場合は、財務指標(PER・ROE・負債比率など)と組み合わせて総合的に判断することが大前提になります。ESG情報単独での投資判断は、過去のデータでも必ずしも超過リターンを保証するものではありません。あくまで補完的な情報として活用するのが賢明なアプローチです。


CDPスコア2024まとめ:日本企業の現在地と今後の見通し

2024年のCDP結果から見えてきた日本企業の現在地は、一言でいえば「量は世界トップ、質はさらなる向上が求められる局面」です。


回答企業数はプライム市場の70%超と世界でも突出した数字です。気候変動AリストでもAスコア企業数(132社)は世界最多です。しかし全体の回答企業2,100社のうちAスコアを取得できているのは約6%にとどまります。


残り94%はAリスト外です。


今後の見通しとして、2025年・2026年に向けてCDP評価基準はさらに厳格化していく可能性があります。ISSBの気候関連開示基準(IFRS S2)やTNFDフレームワークとの整合性強化が予定されており、開示の質・深度に関する要求水準は引き上げが続くと予想されます。


投資家として見るべきポイントをまとめると、次のとおりです。


- 📌 CDP Aリスト企業(特に複数年継続・複数分野取得企業)は長期的なESGリスクが相対的に低い
- 📌 BスコアからAスコアへの改善トレンドにある企業は、ESG経営の成熟過程にあり長期保有の観点から注目できる
- 📌 非開示(Fスコア)企業や、回答はあるがDスコアにとどまる企業は、情報開示の姿勢・ガバナンスのリスクとして評価に织り込む必要がある
- 📌 サプライチェーン全体を通じた開示要求が厳格化しており、中小企業・中堅企業でもCDP対応は実質的に避けられなくなっている


環境スコアが「絵に描いた餅」ではなく、資金調達コスト・取引機会・株式リターンに直結するデータになっている時代です。CDPスコアを知ることは、企業を財務情報とは別の角度から読み解く力を養うことにつながります。


CDP公式:CDPスコアとAリスト(最新データの確認はこちら)


エスプールブルードットグリーン:中小企業向けCDP SMEの解説