相続 使用貸借 評価 契約 注意点

相続 使用貸借 評価 契約 注意点

相続 使用貸借 基本知識

相続における使用貸借のポイント
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使用貸借契約の基本

無償で土地や建物を貸し借りする契約で、親族間でよく利用される

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相続税評価の特徴

借りている側の権利価値はゼロ、貸している側は自用地として評価

⚠️
契約終了リスク

借主の死亡で契約終了、貸主の死亡では相続人が解除可能

相続 使用貸借 契約 基本概念

使用貸借契約とは、対価の支払いなしで無償で物を貸し借りする契約です。民法では「ある物について、貸す人と借りる人の間で、タダで貸すので、使い終わったら返してください」という合意に基づく契約として規定されています。

 

相続の場面で問題となるのは、主に不動産、特に土地の使用貸借です。典型的なケースとして以下のような例があります。

  • 親が所有する土地を子に無償で貸している
  • 借りた子がその土地上に自宅を建てて住んでいる
  • 賃料や地代の支払いは一切行われていない
  • 固定資産税等の負担について明確な取り決めがない

使用貸借契約の特徴として、借地借家法が適用されないため、借主の権利は非常に弱いものとなっています。口約束のみで契約書がない場合が多く、期間や使用収益の目的に関する定めがない場合、貸主はいつでも契約を解除できます。

 

この契約形態は親族間や同族会社と経営者間など、ごく近しい間柄で結ばれることが一般的です。しかし、相続が発生した際には様々な問題が生じる可能性があるため、事前の対策が重要となります。

 

相続 使用貸借 評価 方法 詳細

相続税における使用貸借の評価は、借主側と貸主側で大きく異なります。

 

借主側の評価
使用借権(借主側の権利)は対価を伴わないものであることから極めて弱いものと考えられており、国税庁は「使用貸借にかかる使用借権の価額はゼロとして取り扱う」としています。つまり、被相続人が借主である場合には、この権利に関して一切評価をしなくて良いということになります。

 

貸主側の評価
被相続人が貸主である場合には、通常の自用地として評価することになります。これは貸宅地としての評価減額を受けることができないことを意味します。

 

隣接土地との一体評価
使用貸借されている土地が他の土地と隣接している場合、評価方法に影響を受けることがあります。

  • 自宅敷地と使用貸借で親族に貸している土地が隣接している場合

    → 両方とも自用地として評価し、一体で評価することが可能

  • 被相続人所有の土地と使用貸借により借りている土地を合わせた区画の上に被相続人の自宅が建っている場合

    → 借りている部分については評価を行わず、所有している部分のみ土地評価を実施

ただし、国税庁のタックスアンサーによれば、「自己の所有する宅地に隣接する宅地を使用貸借により借り受け、自己の所有する宅地と一体として利用している場合であっても、所有する土地のみを1画地の宅地として評価します」とされています。

 

相続 使用貸借 契約 終了 条件

使用貸借契約の終了については、借主の死亡と貸主の死亡で取り扱いが大きく異なります。

 

借主が死亡した場合
民法の原則的な考え方では、借主が死亡すると土地の使用貸借契約は終了するため、借主の相続人が使用貸借契約を相続することはできません。建物は相続できても、その土地の使用権は失われることになります。

 

これは借主の相続人にとって非常に大きなリスクとなります。土地を返還しなければならない場合、以下のような問題が生じます。

  • 建物の収去義務が発生する可能性
  • 代替の居住場所の確保が必要
  • 建物の解体費用等の負担
  • 新たな土地の取得費用

貸主が死亡した場合
貸主が死亡した場合、使用貸借契約は直ちに終了するわけではありません。しかし、契約の目的等によっては使用貸借契約が終了する可能性があり、相続人から建物収去明渡請求を受けるリスクがあります。

 

このリスクを避けるためには、借主が自ら土地を取得することが最も確実な方法となります。遺産分割協議において、借主が当該土地の相続を受けることで、使用貸借契約の終了リスクを回避できます。

 

契約書作成の重要性
使用貸借契約では口約束のみの場合が多いですが、相続時のトラブルを避けるためには以下の点を明記した契約書の作成が推奨されます。

  • 契約期間の設定
  • 契約終了条件の明確化
  • 固定資産税等の負担者
  • 建物等の処分に関する取り決め

相続 使用貸借 特例 適用 条件

小規模宅地等の特例は、相続税の負担軽減を図る重要な制度ですが、使用貸借の場合にも一定の条件下で適用が可能です。

 

適用要件
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が、使用貸借により借り受けて、居住や事業の用に供していた宅地等のうち一定のものは、小規模宅地等の特例の対象となります。

 

具体的な適用例

  1. 特定居住用宅地等
    • 被相続人の長女(大学生・同一生計)が被相続人所有のマンションに無償で住んでいる場合
    • 減額割合:80%、限度面積:330㎡
  2. 特定事業用宅地等
    • 被相続人の長男(同一生計)が被相続人所有の土地に建物を建て店舗を営んでいる場合
    • 減額割合:80%、限度面積:400㎡
  3. 貸付事業用宅地等
    • 被相続人の次男(同一生計)が被相続人所有の土地に賃貸アパートを建て経営している場合
    • 減額割合:50%、限度面積:200㎡

重要な注意点
特例の適用には「同一生計」という要件が必須です。実際の事例では、父親名義の土地上でAさん(別生計)が賃貸アパートを所有し、固定資産税・都市計画税のみを負担していたケースで、Aさんは父親と同一生計ではないため、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の対象外となりました。

 

特例適用のメリット
小規模宅地等の特例が適用されると、相続税評価額が大幅に減額されるため、相続税の負担を大きく軽減できます。使用貸借であっても適用条件を満たしていれば、有償の賃貸借と同様の恩恵を受けることが可能です。

 

相続 使用貸借 法人 個人 違い

個人間の使用貸借と個人・法人間の使用貸借では、税務上の取り扱いが大きく異なります。

 

個人間の使用貸借
前述の通り、個人間の使用貸借では借主の権利価値はゼロとして評価され、貸主側は自用地として評価されます。贈与税の課税も通常は発生しません。

 

個人・法人間の使用貸借
同族会社と経営者間など、個人と法人間の使用貸借については、個人間のそれとは扱いが異なり、法人税法に準拠します。

 

法人税法上の取り扱い
個人が法人に無償で土地を貸す場合。

  • 借地権の評価額はゼロ
  • 貸している個人:貸宅地の価額 = 自用地価額 × 80%
  • 借りている法人:借地権の価額 = ゼロ

同族会社の特殊性
法人が同族会社の場合は、貸している個人側で減額された自用地価額×20%分が、その会社の株式の評価(純資産価額方式)において、相続税評価額の資産総額に加算されます。これは個人側と同族法人側とを合わせて自用地価額×100%とするためです。

 

収入の移転に関する注意
使用貸借において収入の移転が問題となるケースがあります。

  • 親名義の土地を使用貸借で借り受けた子が、その土地を転貸して得た地代収入は、土地の所有者である親に帰属します
  • 子の収入にしてしまうと、贈与税が課される可能性があります
  • 建物についても同様で、親名義の建物から得た賃貸収入は建物の所有者である親に帰属します

対策方法
賃貸収入を子に移転したい場合は、建物の名義を変える、つまり建物を子に贈与・譲渡する必要があります。この場合、土地は使用貸借のままでも問題ありません。

 

「土地の無償返還に関する届出書」の重要性
個人・法人間の使用貸借では、「土地の無償返還に関する届出書」の提出が重要となる場合があります。この届出書により、適正な税務処理が確保され、将来的な税務リスクを回避できます。