相続人調査の手順と必要書類の完全ガイド

相続人調査の手順と必要書類の完全ガイド

相続人調査の基本から実務手順

相続人調査の重要なポイント
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法的義務

遺産分割協議には法定相続人全員の参加が必要で、一人でも欠けると無効になる

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調査対象

被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて調べて相続人を確定

💼
実務上の必要性

金融機関や不動産の名義変更で客観的な証明が求められる

相続人調査とは何か、なぜ必要なのか

相続人調査とは、遺産分割や遺産の名義変更等各種手続きをしていく上で「相続人は誰なのか」を確認しなければならないことから、これを戸籍謄本等で調べて確定することをいいます。

 

この調査は相続手続きにおいて最初に行わなければならない重要な作業です。なぜなら、遺産分割協議には法定相続人が全員参加する必要があり、ひとりでも欠けていると無効になってしまうためです。

 

具体的には、**故人(被相続人)の死亡から出生までの戸籍をたどり、戸籍謄本等で調べて確定することを『相続人調査』**と呼びます。これにより、以下のような状況を防ぐことができます。

  • 認知した子がいることが後から判明する
  • 孫や甥姪と養子縁組していたことが発覚する
  • 相続人の範囲を間違えて手続きを進めてしまう

金融機関等の手続きでは、相続人であることを客観的に証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人の現在の戸籍の提出を求められます。そのため、相続人調査は相続手続きを進める際に、避けては通ることができません

相続人調査で必要な戸籍謄本の種類と取得方法

相続人調査を行うためには、複数の種類の戸籍謄本を収集する必要があります。相続関係説明図を作成するための必要書類を準備しましょう

 

以下の表に、必要な書類とその取得場所をまとめました。

必要書類名 取得場所 用途
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本) 市区町村役場 相続人の確定
被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) 市区町村役場 最後の住所確認
相続人全員の戸籍謄本(または戸籍抄本) 市区町村役場 相続人の身分証
相続人全員の住民票(または戸籍の附票) 市区町村役場 現住所の確認

戸籍謄本の取得には、1通あたり450円程度の費用が発生します。また、戸籍は本籍地の市区町村役場でしか取得できないため、被相続人が転籍を重ねている場合は複数の自治体から取り寄せる必要があります。
戸籍収集の際に注意すべきポイント。

  • 改製により古い戸籍が必要になる場合がある
  • 除籍謄本は戸籍が削除された場合に必要
  • 戸籍の附票で住所の変遷を確認できる
  • 郵送請求も可能だが時間がかかる

相続人調査の具体的な手順とポイント

相続人調査は体系的に進めることで効率的に完了できます。以下の手順で調査を進めていきましょう。

 

ステップ1:被相続人の最終戸籍の取得
まず、被相続人の死亡時の戸籍謄本を取得します。この戸籍から以下の情報を確認できます。

  • 最後の本籍地
  • 配偶者の有無
  • 子どもの有無とその詳細

ステップ2:過去の戸籍をさかのぼる
最終戸籍に記載されている「従前戸籍」の情報を基に、出生まで戸籍をさかのぼります。転籍や改製により複数の戸籍を取得する必要があります。

 

ステップ3:相続人全員の現在戸籍を取得
確定した相続人全員の現在の戸籍謄本を取得し、生存確認と身分関係を証明します。

 

ステップ4:情報の整理と確認
相続関係説明図を作成するために必要な情報を探していきます
被相続人についての必要な情報。

  • 最後の住所
  • 最後の本籍
  • 出生年月日
  • 死亡年月日
  • 氏名

相続人についての必要な情報。

  • 住所
  • 出生年月日
  • 被相続人との関係
  • 氏名

調査で見落としやすいポイント。
🔍 養子縁組の確認
戸籍に「養子」と記載されている場合は、養子縁組の年月日と離縁の有無を確認します。子どもが養子の場合には「養子」と記載し、養子縁組の年月日(「年月日養子縁組」)を、すでに離縁している場合にはその年月日(「年月日離縁」)を記載します

 

🔍 代襲相続の確認
子や兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、その子(孫や甥姪)が代襲相続人になる可能性があります。

 

🔍 認知の確認
戸籍に認知の記載がないか注意深く確認します。

 

相続関係説明図の作成方法と活用法

相続人調査が完了したら、その結果を分かりやすく図示するために相続関係説明図を作成しましょう。相続関係説明図は法的な書類ではないので、書き方には厳密な決まりがありません

 

法務局HPからテンプレートをダウンロードしましょう。家族の形態ごとに様々なパターンが用意されているので、ご自身の家族形態と同じものを選んでください。
作成手順。
1. タイトルの設定
タイトルを「被相続人 〇〇〇〇 相続関係説明図」に変更しましょう
2. 被相続人情報の記載
被相続人の欄に整理した情報を記載します。

  • 氏名
  • 最後の住所
  • 最後の本籍
  • 出生年月日
  • 死亡年月日

3. 相続人情報の記載
相続人の欄に整理した情報を記載しましょう

  • 氏名
  • 住所
  • 出生年月日
  • 被相続人との続柄

「被相続人との続柄」として、配偶者であれば「妻」や「夫」、子どもの場合には「長男」「長女」などを記載します
4. 作成者情報の記入
作成日・作成者欄を記入しましょう。押印はしなくても問題ありません。
相続関係説明図の活用メリット。
📊 視覚的な理解:複雑な相続関係を一目で把握できる
📊 手続きの効率化:各種相続手続きで添付書類として使用可能
📊 情報共有:相続人間での情報共有がスムーズになる
相続関係説明図を作成するのであれば、法定相続情報一覧図を作成することをおすすめします法定相続情報一覧図は相続手続きにおいて、戸籍謄本の原本の代わりに使用できる上に、無料で何枚でも発行してもらうことができます

相続人調査で起こりやすいトラブルと対処法

相続人調査を進める際には、様々なトラブルが発生する可能性があります。事前に想定されるトラブルと対処法を知っておくことで、スムーズな手続きが可能になります。

 

よくあるトラブル事例と対処法:
🚫 戸籍が取得できない場合

  • 本籍地の市区町村が合併により変更されている
  • 戸籍が戦災等で滅失している
  • 保存期間を経過して廃棄されている

対処法:法務局に相談し、取得できない理由書を作成してもらう
🚫 相続人が海外在住の場合

  • 日本の戸籍制度とは異なる証明が必要
  • 領事館での手続きが必要

対処法:在外日本領事館で戸籍謄本を取得するか、現地の公的機関で身分証明書を取得し、日本語翻訳を添付
🚫 相続人の所在が不明の場合

  • 住民票に記載された住所に住んでいない
  • 連絡が取れない

対処法:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
🚫 養子縁組の有効性に疑義がある場合

  • 養子縁組届の真正性に問題がある
  • 離縁の有無が不明

対処法:家庭裁判所に調停や審判を申し立てて確認
実務上のアドバイス:
💡 時間的余裕を持つ
戸籍収集には予想以上に時間がかかることがあります。特に郵送請求の場合、往復で2週間程度かかることもあります。

 

💡 専門家への相談
複雑な家族関係や大量の戸籍が必要な場合は、司法書士や行政書士等の専門家に依頼することを検討しましょう。

 

💡 デジタル化の活用
土地や所有者・相続人の情報を一元管理し、調査にまつわる様々な事務作業が自動で行えるシステムも登場しています。継続的に相続業務を行う場合は、このようなシステムの活用も効果的です。
💡 記録の保管
取得した戸籍謄本や作成した相続関係説明図は、将来の手続きでも使用する可能性があるため、適切に保管しておきましょう。

 

相続人調査は相続手続きの基礎となる重要な作業です。正確で漏れのない調査を行うことで、後のトラブルを防ぎ、スムーズな相続手続きが可能になります。不明な点がある場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。