相続放棄したのに請求が来る対処法

相続放棄したのに請求が来る対処法

相続放棄したのに請求が来る対処法

相続放棄後の請求対応ガイド
📄
証明書の提出

相続放棄申述受理通知書で債権者に証明

⚖️
法的対応

執拗な取り立てには弁護士や警察に相談

🚫
返済義務なし

相続放棄完了後は一切の支払い義務なし

相続放棄後の請求理由と債権者の対応

相続放棄を家庭裁判所で正式に完了したにも関わらず、債権者から借金の返済請求が届くケースは決して珍しいことではありません。これは、家庭裁判所が相続放棄の受理を債権者に個別に通知する義務がないためです。

 

債権者が相続放棄の事実を知らずに請求を続けている場合、以下のような理由が考えられます。

  • 情報の不足:債権者が相続放棄の事実を把握していない
  • 確認不足:相続人の変更について調査が不十分
  • 意図的な請求:相続放棄を知っていても回収を諦めない

消費者金融などの正規の金融機関であれば、相続放棄の事実を伝えることで請求が停止することがほとんどです。しかし、一部の債権者は相続放棄を理解していても、なお請求を続ける場合があります。

 

このような状況でも、相続放棄が正式に受理されていれば一切の返済義務はありません。相続放棄をした人は、はじめから相続人として存在しなかったものとみなされるため、被相続人の債務を承継することはないのです。

 

相続放棄証明書提出による解決方法

債権者からの請求に対する最も効果的な対処法は、相続放棄申述受理通知書のコピーまたは相続放棄申述受理証明書の提出です。これらの公的書類により、相続放棄が正式に受理された事実を債権者に証明できます。

 

相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄申立人に送付される書類で、相続放棄が受理されたことを通知するものです。この書類のコピーを債権者に提出することで、請求の停止を求めることができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所が発行する公的な証明書で、より正式な証明力を持ちます。この証明書を取得するには、以下の手続きが必要です。

  • 家庭裁判所への申請
  • 必要書類の提出(申請書、本人確認書類など)
  • 手数料の支払い(通常数百円程度)

これらの書類を提出すれば、通常は債権者からの請求が完全に停止します。債権者側も公的機関が発行した書類に対しては異議を唱えることが困難だからです。

 

また、任意の対応として、他の相続人の連絡先を債権者に伝えることも考えられます。ただし、この場合は事前に他の相続人の了解を得ることが重要です。無断で連絡先を教えることでトラブルになる可能性があるためです。

 

相続放棄が無効になる単純承認ケース

相続放棄が受理されていても、単純承認が成立している場合は相続放棄が無効となる可能性があります。単純承認とは、被相続人の権利義務をすべて承継することを意味し、一度成立すると相続放棄はできません。

 

単純承認が成立する主なケースは以下の通りです。

  • 被相続人の預貯金の使用:少額でも被相続人名義の口座から出金した場合
  • 不動産名義の変更:被相続人名義の不動産を相続人名義に変更した場合
  • 債務の返済:被相続人宛ての請求書を支払った場合
  • 形見分けの受取:価値のある遺品を持ち帰った場合

特に注意が必要なのは、被相続人宛ての請求書を支払ってしまうケースです。「少額だから大丈夫」と考えて支払ってしまうと、その時点で単純承認が成立し、後に多額の借金が発見されても相続放棄ができなくなります。

 

実際に、一部の債権者は意図的に少額の請求を行い、相続人に支払いをさせることで単純承認を成立させる戦略を取ることがあります。このような罠にかからないよう、相続放棄の手続きが完全に終了するまでは、被相続人の財産には一切手を付けないことが重要です。

 

相続放棄の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内とされています。この期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできません。ただし、特別な事情がある場合は期限の延長が認められることもあります。

 

執拗な取り立てへの法的対応策

相続放棄の事実を証明しても、なお債権者が執拗に取り立てを続ける場合があります。このような状況では、債務者でない人に対する取り立ては違法行為であることを理解し、毅然とした態度で対応することが重要です。

 

法的対応の段階的アプローチは以下の通りです。
第1段階:口頭での拒否

  • 相続放棄済みであることを明確に伝える
  • 返済義務がないことを断言する
  • 今後の請求停止を要求する

第2段階:書面での通知

  • 内容証明郵便で相続放棄の事実を通知
  • 証明書のコピーを添付
  • 法的措置を検討している旨を記載

第3段階:専門家への相談

  • 警察への相談:違法な取り立て行為として報告
  • 弁護士への依頼:法的対応の委任
  • 消費生活センターへの相談:消費者保護の観点からのアドバイス

警察に相談する際は、以下の証拠を準備することが効果的です。

  • 相続放棄申述受理通知書
  • 債権者からの請求書や督促状
  • 通話記録や訪問記録
  • 精神的苦痛を受けた経緯の記録

弁護士に依頼する場合、相続や債務問題に詳しい専門家を選ぶことが重要です。弁護士からの通知により、多くの場合は請求が停止します。また、損害賠償請求も検討できる可能性があります。

 

相続放棄前の注意点と連帯保証人問題

相続放棄を検討する際に見落とされがちなのが、連帯保証人の問題です。被相続人が借金をしていた場合、相続放棄により相続人は返済義務を免れますが、連帯保証人の責任は相続とは別の契約関係であるため消滅しません。

 

連帯保証人として注意すべきポイント。

  • 相続放棄しても保証債務は残る:相続人が連帯保証人だった場合、保証契約に基づく責任は継続
  • 主債務者の死亡による期限の利益喪失:被相続人の死亡により、借金の全額が一括請求される可能性
  • 保証契約の確認の重要性:どのような保証契約を結んでいたかの詳細確認が必要

また、相続放棄後に誤って支払いをしてしまった場合の対処も重要です。本来支払う必要のない借金を返済してしまった場合、原則として返金を求めることはできません。これは、債権者の立場からは返済義務の有無を確認する義務がないためです。

 

ただし、以下の方法で救済される可能性があります。

  • 他の相続人への求償:返済義務のある相続人に対して、支払った金額の請求
  • 不当利得返還請求:法的根拠のない利得として返還を求める
  • 錯誤による取消し:支払い義務があると誤解していた場合の契約取消し

相続放棄を検討する際は、以下の事前調査が不可欠です。

  • 被相続人の全ての債務の把握:銀行借入、クレジットカード債務、個人間借金など
  • 保証契約の有無の確認:連帯保証人になっていないかのチェック
  • 相続財産の詳細調査:プラスの財産とマイナスの財産の比較検討
  • 他の相続人の意向確認:相続放棄により相続権が移転することの影響

相続放棄は一度受理されると撤回できないため、慎重な判断が必要です。不明な点がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。

 

家庭裁判所における相続放棄の申述に関する詳細情報
裁判所公式サイト - 相続放棄申述
法テラスによる相続問題の法的支援情報
法テラス公式サイト