
金融庁では、レジリエンス要件の測定指標として「金融システムの潜在的リスクをフォワード・ルッキングに分析」することを主要な目標として設定しています。この測定指標は、従来の事後的な対応ではなく、将来起こりうるリスクを事前に予測・分析することで、金融システム全体の安定性を確保することを目的としています。
具体的な測定内容として、経済・金融市場や金融機関を含む市場参加者の動向を適時に把握し、これらの動向を踏まえた金融システムの将来的なリスクや脆弱性に関する調査・分析を実施しています。この取り組みにより、金融機関の健全性確保と信用秩序の維持を図っています。
また、レジリエンス要件の評価では、目標達成度合いを「A(目標達成)」「B(相当程度進展あり)」「C(進展が大きくない)」の3段階で測定し、客観的な評価を行っています。この評価システムにより、金融行政の効果を定量的に把握することが可能となっています。
💡 重要なポイント
国際的な基準に合わせた規制の見直しは、レジリエンス要件の測定指標における重要な評価項目となっています。金融庁では、バーゼル規制をはじめとする国際的な金融規制の動向を踏まえ、国内の金融機関に対する規制の整合性を図っています。
特にFX取引を含む金融取引においては、以下の測定項目が重視されています。
リスク管理態勢の評価指標
モニタリング体制の効果測定
令和5年度の実績では、すべての測定指標で目標を達成し、金融システムの安定の確保のための制度・態勢整備が進展していることが確認されています。これにより、国際的な金融規制環境の変化に対応できる体制が構築されつつあります。
🔄 継続的改善のサイクル
国際基準への対応は一度限りの取り組みではなく、規制環境の変化に応じて継続的に見直しが行われています。特に、新しい金融商品やサービスの登場、国際的な規制動向の変化に対して、迅速かつ適切な対応を行うための測定指標が設定されています。
金融行政方針に基づく金融モニタリングの実施状況は、レジリエンス要件の測定指標における中核的な評価項目となっています。このモニタリングでは、金融機関の健全性確保を目的として、多角的な視点からの検証が行われています。
モニタリングの主要な測定要素
📈 リスクプロファイルの継続的把握
個々の金融機関のリスク特性を詳細に分析し、その変化を継続的にモニタリングしています。特にFX取引においては、為替変動リスク、流動性リスク、カウンターパーティリスクなどの複合的なリスク要因を包括的に評価しています。
🎯 対話型監督の効果測定
従来の検査中心の手法から、継続的な対話を通じたモニタリングへと手法が進化しています。この変化により、金融機関との信頼関係を構築しながら、より実効性の高い監督を実現しています。
⚡ リアルタイム性の向上
市場環境の急激な変化に対応するため、リアルタイムでの情報収集と分析体制を構築しています。特に、国際金融市場の動向やマクロ経済指標の変化を即座に監督業務に反映させる仕組みが整備されています。
令和5年度の実績では、金融機関に対する定期及び随時のヒアリング等を通じ、統合的なリスク管理態勢等の把握・検証を実施し、測定指標③においても目標を達成しています。
金融機関のレジリエンス強化において、ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)からの移行対応は重要な測定指標となっています。2023年6月末にドルLIBORの一部テナー(期間)が公表停止となったことを受け、金融機関の移行準備状況が詳細に評価されています。
LIBOR移行に関する具体的な測定項目
🔄 新規取引の停止状況
ドルLIBORを参照する新規取引の停止状況について、個別金融機関のモニタリングを通じて確認されています。これにより、金融機関がリスク管理の観点から適切な判断を行っているかが評価されています。
📋 既存契約の移行進捗
既存のLIBOR参照契約について、代替金利指標への移行状況やフォールバック条項の導入状況が詳細に調査されています。この測定により、金融機関の契約管理能力とリスク対応力が評価されています。
⏰ 時間軸を意識した対応
LIBOR利用状況調査を通じて、時間軸を意識した移行対応が促されています。この取り組みにより、計画的なリスク管理が実現されています。
FX取引への影響と対応
FX取引においても、LIBOR参照の金融商品から代替指標への移行が重要な課題となっています。特に、以下の点が重視されています。
グローバルな経済・市場環境の刻一刻とした変化に対応するため、今後も情報収集と分析が継続される予定です。
従来の定量的な測定指標に加えて、金融機関固有の特性を考慮した独自の評価手法の開発が進んでいます。これは、画一的な規制では捉えきれない個別機関のリスク特性を適切に評価するための取り組みです。
新しい評価手法の特徴
🧠 行動経済学的アプローチ
金融機関の意思決定プロセスにおける心理的要因や組織文化を考慮した評価手法が導入されています。これにより、数値だけでは表現できないリスク要因を把握することが可能になっています。
🌐 ネットワーク分析の活用
金融機関間の相互依存関係や連鎖反応のリスクを評価するため、ネットワーク理論を応用した分析手法が活用されています。特にFX市場においては、グローバルな取引ネットワークの影響を考慮した評価が重要となっています。
🔮 シナリオ分析の高度化
単一のストレステストではなく、複数のシナリオを組み合わせた複合的な分析手法が開発されています。これにより、想定外の事態に対する備えの程度を評価することができます。
実践的な応用例
金融機関のレジリエンス強化において、以下のような独自指標が活用されています。
これらの独自評価手法により、金融機関の真のレジリエンス能力を多面的に評価することが可能となり、より実効性の高い金融監督が実現されています。
金融機関を取り巻くリスクが多様化・複雑化する中、従来の測定指標だけでは十分に捉えきれないリスクの特性や変化を、きめ細かくかつフォワード・ルッキングに把握・分析する必要性が高まっています。こうした背景から、レジリエンス要件の測定指標は今後も継続的な改善と発展が期待されています。