無リスク金利リスクプレミアムの基礎理論と投資戦略活用法

無リスク金利リスクプレミアムの基礎理論と投資戦略活用法

無リスク金利とリスクプレミアムの関係性

無リスク金利とリスクプレミアムの基礎知識
📊
無リスク金利の定義

理論上リスクがゼロまたは極小の金融商品から得られる利回り

📈
リスクプレミアム

リスク資産の期待収益率から無リスク金利を差し引いた超過収益

⚖️
投資判断の基準

リスクとリターンを比較するための重要な指標

無リスク金利の定義と理論的背景

無リスク金利(リスクフリーレート)とは、理論上リスクがゼロまたは極めて小さい金融商品から得られる利回りを指します 。現実的には完全な無リスク資産は存在しないため、先進国の短期国債や長期国債がその代用として用いられています 。
参考)無リスク金利 - Wikipedia

 

日本では一般的に10年物日本国債の利回りが無リスク金利として採用されており、財務省の国債金利情報サイトやBloombergなどの金融情報ベンダーから入手できます 。2016年から導入されたマイナス金利政策により、日本円の無リスク金利はマイナス値となる場合もありますが、実務的にはゼロを下限とするか、マイナス金利を適用するかで判断が分かれています 。
参考)株式評価ブログ - リスクフリーレート

 

無リスク金利は指標金利・基準金利として機能し、割引率の算出にも重要な役割を果たします 。投資判断において、すべてのリスク性資産の期待収益率はこの無リスク金利を基準として評価されるため、金融市場における最も基本的な指標といえるでしょう。

リスクプレミアムの概念と計算方法

リスクプレミアムとは、リスクのある資産に投資する際に、無リスク資産との収益率の差として求められる超過収益率のことです 。計算式は以下のようになります:
参考)https://www.tokaitokyo.co.jp/kantan/term/detail_0185.html

 

リスクプレミアム = リスク資産の期待収益率 - 無リスク金利
例えば、株式投資の期待収益率が5%で無リスク金利が2%の場合、リスクプレミアムは3%となります 。この3%分が、価格変動リスクを受け入れることに対する「対価」として投資家が期待する追加収益です 。
リスクプレミアムは通常正の値をとり、もしゼロまたは負の値となれば、投資家はリスクを避けて無リスク資産に資金を移動させるため、リスク性資産の需要が減少します 。このメカニズムにより、金融市場ではリスクに応じた適切な価格形成が行われています。

無リスク金利の実務における算定方式

日本の実務では10年物日本国債の利回りが無リスク金利として広く採用されています 。これは、NPV(正味現在価値)計算においてプロジェクトと同じ期間の無リスク資産が存在しないため、便宜的に10年物国債を使用するためです 。
参考)無リスク利子率(ムリスクリシリツ)とは

 

株式評価においては、評価基準日時点における国債利回りをリスクフリーレートとして採用する方法が一般的です 。過去の平均値を使用する考え方もありますが、現在価値計算の観点から基準日時点の金利が適切とされています。
日本国債の格付けは、ムーディーズでA1、S&PでA+となっており 、完全な無リスクではないものの、過去にA以上の格付けの国債がデフォルトした事例はないため、実務的には「限りなく無リスクに近い」として扱われています 。
参考)リスクフリーレートは本当に無リスクなのか?

 

リスクプレミアムの構成要素と分類

リスクプレミアムは複数の要素から構成されており、主な分類は以下の通りです :

  • 価格変動リスク:経済環境の変化による株式や債券価格の変動リスク
  • 信用リスク(貸倒リスク):発行企業の倒産により元利金が回収できないリスク
  • 外国為替リスク:外貨建て資産の価値が為替相場の変動で上下するリスク
  • 政治的リスク:テロ、戦争、資源価格暴落などの影響による変動リスク

投資実務においては、株式リスクプレミアムとサイズリスクプレミアムに大別されることが多く 、市場データに基づいて定量化可能な要素として重要視されています。特にサイズリスクプレミアムでは、時価総額階級別に異なるリスクプレミアムが設定されるのが一般的です 。
参考)企業価値評価用データ配信サービス ValuePro href="https://www.plutuscon.jp/delivers" target="_blank">https://www.plutuscon.jp/deliverslt;バリュ…

 

流動性リスクプレミアムも重要な構成要素の一つで、特定の資産をすぐに売却できないリスクに対して求められる追加リターンを表します 。
参考)リスクプレミアムの全貌と投資影響

 

無リスク金利の変動が投資戦略に与える影響

無リスク金利の変動は、投資戦略全体に大きな影響を与えます。金利が上昇すると、リスク資産の相対的魅力が低下し、投資家はより高いリスクプレミアムを要求するようになります。

 

CAPM(Capital Asset Pricing Model)では、株主資本コストを「リスクフリーレート + β × 市場リスクプレミアム」で算定しており 、無リスク金利はすべてのリスク性資産の期待収益率算定の基礎となります。マイナス金利環境では、株主資本コスト算定時にゼロを下限とするか、実際のマイナス金利を適用するかで企業価値評価が大きく変わる可能性があります 。
参考)https://www.rieb.kobe-u.ac.jp/research/publication/newsletter/mba_back-issues/file/mba09-attached.pdf

 

債券投資では、無リスク金利の変動が直接的に価格に影響し、金利上昇局面では既発債券の価格下落リスクが高まります。一方で、株式投資においては、業種や企業規模によってβ値が異なるため、無リスク金利変動の影響度合いも差が生じます。

 

投資期間の観点では、長期投資ほど金利変動の累積的影響が大きくなるため、ポートフォリオのデュレーション管理が重要になります。特に年金基金などの長期投資家にとって、無リスク金利の動向は資産配分戦略の根幹を左右する要因となっています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/01/dl/s0129-5a.pdf