
みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)は、開発途上国への経済協力と投資促進を目的とした特別な税制優遇措置です。通常の外国税額控除では、実際に外国で納付した税額のみが日本の法人税から控除されますが、この制度では実際には納付していない税金も控除対象となります。
開発途上国は自国の経済発展を促進するため、海外からの投資に対して租税上の優遇措置を講じることが多くあります。しかし、通常の外国税額控除制度では、現地で減免された分は進出企業の本国の税収に反映されてしまい、優遇措置の効果が失われてしまいます。
この問題を解決するため、開発途上国が減免した租税について、進出企業があたかも納付したものとみなして、その本国で納付すべき租税の額から控除する制度が設けられました。これにより、開発途上国の税制優遇措置が真の意味で投資促進効果を発揮できるようになります。
現在、日本が締結している租税条約でみなし外国税額控除が適用される国は以下の6カ国です:
中国 🇨🇳
タイ 🇹🇭
ブラジル 🇧🇷
バングラデシュ 🇧🇩
ザンビア 🇿🇲
スリランカ 🇱🇰
なお、フィリピンについては2017年1月1日以後開始事業年度から適用除外となっています。
みなし外国税額控除の節税効果を具体的な数値例で見てみましょう。ブラジル国債の利子収入100万円のケースを想定します:
通常の外国税額控除の場合
みなし外国税額控除適用の場合
このように、みなし外国税額控除により手取額が7万5千円増加し、投資収益性が大幅に向上します。これが開発途上国への投資促進につながる仕組みです。
みなし外国税額控除を適用するための要件は以下の通りです:
必要書類
重要な実務上の注意点
通常の外国税額控除では別表四で加算処理が必要ですが、みなし外国税額部分は日本で損金経理されていないため加算不要です。
税務当局は指摘してくれないため、該当する可能性がある企業は自主的に確認する必要があります。
源泉税免除の恩恵を受けるためには、事前に租税条約に関する届出書の提出が必要です。
この制度は法人税だけでなく所得税にも適用があるため、個人投資家も活用可能です。
みなし外国税額控除制度は、課税の公平性や中立性の観点から廃止・縮減の方向にあります。OECDのGloBE(Global Base Erosion)提案により、多国籍企業の最低税率設定が進められており、開発途上国の税制優遇措置が制限される可能性があります。
FX取引への影響 💱
FX取引では直接的な影響は限定的ですが、以下の点で関連があります。
投資戦略への示唆
現在有効な6カ国との租税条約を活用することで、特に中国の使用料(20%みなし控除)やブラジルの利子・使用料(20-25%みなし控除)において大きな節税効果が期待できます。ただし、制度の将来性を考慮し、長期的な投資戦略の中で適切に位置づけることが重要です。
この制度は日本の税収を犠牲にして開発途上国への投資を促進する経済支援の側面が強いため、政策変更のリスクも念頭に置いた活用が求められます。投資判断の際は、必ず税理士等の専門家に相談し、最新の制度動向を確認することをお勧めします。