

定価5,000円だったジンが、終売後のオークションで2万円超えで取引されています。
ビーフィーター クラウンジュエルは、1993年に初リリースされたプレミアムジンです。「クラウンジュエル(Crown Jewel)」とは、英国王室の戴冠用宝玉のこと。その宝玉は現在もロンドン塔に厳重に保管されており、ビーフィーターの名前の由来でもある「ロンドン塔の衛兵(ビーフィーター)」がその番人を務めてきました。つまりクラウンジュエルというネーミングは、ビーフィーターというブランドの歴史的ルーツに直結しているのです。
ビーフィーターというブランドは1820年に英国ロンドンで誕生。創業者のジェームス・バロー(James Burrough)が薬剤師としての知識を活かして独自のレシピを考案し、1876年にビーフィーターの存在が初めて商品リストに記録されました。その後150年以上にわたって変わらぬレシピで製造され続け、現在170カ国以上で流通しています。クラウンジュエルは、そのビーフィーターの「輝く至宝」と位置づけられた限定プレミアムラインです。
重要なのは、クラウンジュエルは当初「免税店限定」の商品として販売されていたという点です。つまり国際線の空港免税店でしか買えない商品として設計されていました。その後2009年に一度終売となり、2016年と2024年に数量限定で再販されています。2024年版は2024年11月5日発売、2025年12月2日にも再発売されています。この「終売→限定再販」というサイクルが、このジンの希少価値をじわじわと高めていく大きな要因になっています。
ロンドン塔との縁はデザインにも色濃く反映されています。特に2011年以降のボトルには、ロンドン塔に伝わる「大ガラス(レイヴン)」の絵が描かれています。レイヴンがロンドン塔から去ると王国が滅ぶという伝説があり、ロンドン塔はこの大ガラスを大切に育てています。こうした英国王室の歴史的物語を背負ったジンであることが、単なる「美味しいジン」以上のコレクター的な価値を生み出しているのです。
ロンドン塔とビーフィーターの歴史的な関係について詳しく知りたい方は、以下が参考になります。
ビーフィーターの歴史を詳しく解説したGin Lab Japanの記事(ロンドン塔の衛兵=ビーフィーターとクラウンジュエルの命名由来まで網羅)。
Beefeater Gin(ビーフィータージン)誕生から現在までの歴史 – Gin Lab Japan
クラウンジュエルの最大の特徴は、スタンダードなビーフィーターの9種類のボタニカルに「グレープフルーツピール」を加えた、計10種類の厳選されたボタニカルにあります。
標準のビーフィーターが使う9種類のボタニカルは、ジュニパーベリー・アンジェリカルート・アンジェリカシード・コリアンダーシード・リコリス(甘草)・アーモンド・オリスルート・レモンピール・セビリアオレンジピールです。これにグレープフルーツピールが加わることで、柑橘系の香りがよりリッチかつ上品な方向性に深まります。
| ボタニカル | 特徴 |
|---|---|
| ジュニパーベリー | ジンの核。松のような清涼感と苦味 |
| コリアンダーシード | スパイシーで柑橘系のニュアンス |
| レモンピール | キレのある酸味、フレッシュなトップノート |
| セビリアオレンジピール | ほろ苦い甘さ、奥行き |
| グレープフルーツピール | クラウンジュエル独自。上品な甘みと爽快感 |
| アンジェリカルート | 香りの土台、アース系の深み |
| リコリス(甘草) | わずかな甘さ、全体をまとめる |
| オリスルート | フローラルな要素、香りの定着 |
| アーモンド | まろやかさ、オイル感 |
| アンジェリカシード | スパイシーなアクセント |
アルコール度数は50度。スタンダードの40度より10度高く設定されており、これが味わいに大きく影響します。
つまり、香りの成分(揮発性オイル)がより濃厚に抽出されているということです。最初の一口でリッチなジュニパーの香りが広がり、後からスムーズなグレープフルーツの甘みが追いかけてくる構成。50度という高アルコールにもかかわらず、飲み口は柔らかく落ち着いています。ストレートで飲んでもトゲがなく、余韻が長く続くのが特長です。
飲み方のおすすめはいくつかあります。
バーテンダーの間では、高度数のジンを使うことで「カクテルの骨格がしっかりする」と言われています。漫画『バーテンダー』でもクラウンジュエルが登場し、普通のビーフィーター(47度)ではカクテルが水っぽくなる局面でクラウンジュエル(50度)を使うことで解決する描写があります。実際の現場でも、高度数ジンは「味がぼけない」という理由でプロが選ぶ選択肢の一つです。これは使えそうです。
飲み方の参考情報として、ビーフィーター公式サイトも役立ちます。
ビーフィーター公式によるカクテル紹介(ジントニックやマティーニの作り方を含む)。
ビーフィーター -BEEFEATER- プレミアムロンドンドライジン 公式サイト
金融に興味がある人には特に注目してほしい点があります。ビーフィーター クラウンジュエルの価格推移は、希少品の価格形成メカニズムを学ぶ非常にわかりやすい教材です。
価格の変遷をまとめると次のようになります。
| 時期 | 販売形態 | 価格 |
|---|---|---|
| 1993年(初回) | 免税店限定・クリアボトル | 約3,500円 |
| 2000年代前半 | 国内一般流通・紫ボトル | 約5,000〜6,000円 |
| 2009年 | 終売 | — |
| 終売後(流通在庫) | 二次流通市場 | 13,000〜20,000円超 |
| 2016年(限定再販) | 数量限定・約8,000円 | 再販直後に完売 |
| 2024年(限定再販) | 数量限定・約10,000円 | 約10,670円(ヨドバシ参考) |
| 2025年12月(再発売) | 数量限定 | 約10,000円 |
注目すべきは、2009年の終売後に市場価格が定価の3〜4倍まで跳ね上がった点です。当時はヤフオクなどの二次流通市場で1万3,000円〜2万円超で取引されました。これはウイスキーで頻発している「限定品プレミア化」と全く同じ構造です。
この価格高騰のロジックはシンプルです。「数量が限られている」×「再入手が困難」×「ブランド力がある」の3条件が揃うと、市場価格は定価を大きく上回ります。山崎18年が定価55,000円に対して市場価格が2万〜3万円以上の上乗せで取引されている現象と、本質的なメカニズムは変わりません。ただし、ジンの場合はウイスキーと異なり「長期熟成」の要素がないため、価格上昇の天井はウイスキーより低い傾向があります。
それでも「再販を繰り返す限定品」という性質上、購入できるタイミングを逃すと次回再販まで数年待つことになります。実際に2009年〜2016年の7年間は市場での入手が極めて困難でした。金融的な観点から言えば、再販のたびに定価が上がっていること(3,500円→5,000円→8,000円→10,000円)もポイントです。単純計算で約30年間に定価が2.8倍以上に上昇しています。
もちろんジンは飲んで楽しむものが本来の目的です。ただ、プレミアムジンの価格動向に敏感でいることは、希少なボトルを適正価格で手に入れるためにも有用な知識といえます。意外ですね。
クラウンジュエルが気になる方は、同じ価格帯のプレミアムジンとの比較も知っておくと選びやすくなります。プレミアムジンを選ぶ際の軸は大きく3つあります。「ジュニパーの強さ(ドライ感)」「柑橘系の鮮やかさ」「香りの複雑さ」です。
まずビーフィーター クラウンジュエルの立ち位置を整理します。グレープフルーツピール追加による柑橘の豊かさと、50度のしっかりした骨格が特徴。ジュニパーが主役を張りながら、柑橘が脇を固めるバランス型です。甘すぎず辛すぎず、ストレートとカクテルどちらにも対応できる「オールラウンダー」と評されることが多い一本です。
価格帯は似ていても、目指している香りの方向性が全く異なります。クラウンジュエルが「端正な柑橘の甘みと力強さ」であるのに対し、タンカレーTENは「フレッシュな爽快感」、ビーフィーター24は「お茶由来の奥行き」という違いがあります。これが基本です。
入手難易度の観点から言えば、タンカレーTENとビーフィーター24は通年で比較的入手しやすいのに対し、クラウンジュエルは数量限定のため常に在庫があるとは限りません。クラウンジュエルを見かけた際に即断するかどうかの判断材料として、まずはビーフィーター24で「ビーフィーターのプレミアムラインの傾向」を掴んでおくのは実用的な選択肢です。
これはあまり語られていない視点ですが、クラウンジュエルのような「数量限定ジン」を確実に入手するには、発売情報の取得スピードが命です。以下に購入戦略を整理します。
まず「いつ再販されるか」を把握する手段として最も有効なのは、サントリーの公式プロダクトページと、BAR TIMESなどの業界メディアのRSS・メールマガジン登録です。過去の再販は2016年(4月5日)・2024年(11月5日)・2025年(12月2日)と、秋冬の時期に集中しています。年末需要を意識したリリーススケジュールと見ることができ、次回の再販も同時期を念頭に置いておくとよいでしょう。
二次流通市場(ヤフオク・メルカリ)では、過去180日間の落札価格が平均10,009円・最高14,500円というデータがあります(Yahoo!オークション調べ)。定価が約10,000円であることを考えると、二次流通では定価と同等かそれ以上の価格が相場になります。定価の2倍以上であれば一旦検討し直しが必要、というのが現実的な判断ラインです。
一方、二次流通で購入する際の注意点もあります。ボトルの封印シールが正規品のものか、液面が適切な高さにあるかを写真で必ず確認しましょう。未開封品であればラベルのよれや汚れの有無も確認が必要です。また2009年終売以前の旧ボトル(クリアボトルや紫ボトル)は現在も流通しており、コレクター的な価値はありますが、長期保管品は封入後の品質確認が難しい点は把握しておくべきです。
現行ボトルの公式情報は、サントリーの製品ページが最も信頼性があります。
サントリーによるビーフィーター クラウンジュエルの公式製品情報(発売日・容量・価格・ボタニカルを確認できる)。
ビーフィーター クラウンジュエル 1000ml瓶 – サントリー
購入後の保管についても一言触れておきます。ジンはウイスキーと異なり樽熟成をしないため、開封後は香りが揮発しやすいという特性があります。開封後は立てて保管し、できれば3〜6か月以内に飲み切るのが品質を保つ上での目安です。コレクションとして未開封で保管する場合は、直射日光・高温を避けた場所が必須です。これだけ覚えておけばOKです。