
在職老齢年金の支給停止解除は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が基準額を下回ることで自動的に行われます。令和7年度の基準額は51万円に設定されており、この金額を下回れば年金の支給停止は解除されます。
解除の条件は以下の通りです。
計算方法も理解しておくことが重要です。例えば、年金月額10万円で総報酬月額相当額44万円の方の場合、合計54万円となり51万円を超えるため、超過分3万円の半分である1.5万円が支給停止されます。この方が転職等で総報酬月額相当額を41万円以下に下げれば、合計が51万円以下となり支給停止が解除されます。
意外な解除ポイントとして、配偶者加給年金額の受給要件を満たす場合、単純な計算以上の金額が解除される可能性があります。月額換算で1,300円程度ではなく、36,000円弱の支給停止解除が期待できるケースもあります。
障害年金の支給停止解除は、障害の程度が再び悪化し、障害等級に該当する状態に戻った場合に可能です。障害基礎年金では2級以上、障害厚生年金では3級以上の状態に該当する必要があります。
解除手続きに必要な書類は以下の2点です。
診断書には、障害の状態が再び悪化した日とその日の状態をカルテに基づき記入してもらいます。この現症の日が支給停止事由消滅届の「消滅の事由に該当した年月日」と同じ日付になります。
重要な注意点として、支給停止解除は障害の程度が再び悪化した時点まで遡って申請できますが、過去に遡って支給される期間は時効により最大5年間となります。そのため、障害状態が悪化したと感じたら、速やかに手続きを開始することが重要です。
特殊なケースとして、障害基礎年金の受給権者が63歳の時点で3級程度に軽減し支給停止された場合、3級の状態のまま5年経過後に再び2級に該当すれば、支給停止は解除されます。これは3級程度の状態では失権しないためです。
年金事務所での相談時には、障害の程度が障害年金を受給できる程度に該当しているかどうか、担当医師と十分相談することをお勧めします。
65歳未満で雇用保険法による失業給付の基本手当を受給している場合、老齢厚生年金は全額支給停止となります。この支給停止の解除条件は極めてシンプルで、失業給付の受給期間が終了することです。
解除のタイミングは以下の通りです。
戦略的な選択として、退職後の年金額と失業給付の受給額を比較し、どちらを受給するか判断することが重要です。失業給付が年金額を大きく上回る場合は失業給付を優先し、年金額の方が高い場合は失業給付を受給せずに年金を選択する方法もあります。
手続きについては、失業給付を受給する場合は「老齢厚生年金受給者支給停止事由該当届」を共済組合に提出する必要があります。ただし、年金請求書に雇用保険被保険者番号を記載していた場合は、この届出は不要です。
意外な落とし穴として、退職共済年金の経過的職域加算額は失業給付を受給しても停止されません。そのため、この部分については失業給付受給中も継続して受け取ることができます。
加給年金の支給停止解除は、配偶者や子どもの状況変化により発生する特殊なケースです。一般的には支給停止から解除されることは少ないですが、以下の状況で解除される可能性があります。
解除が発生するケース。
重要な手続きとして、配偶者が公的年金を受け取る権利を得た場合や障害厚生年金などを受けられるようになった場合は、「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」の提出が必要です。手続きを怠ると過払いが発生し、後で返金が必要となります。
2022年4月の制度改正により、加給年金の支給停止条件が一部拡大されました。これまで対象外だった一部のケースも支給停止の対象となったため、既に加給年金を受給している方は制度変更の影響を確認することが重要です。
子どもに関する加給年金については、18歳に達した年度の末日を迎えると支給停止となりますが、その後障害等級1級または2級の状態になった場合は、20歳まで支給が継続される可能性があります。
平成19年4月から導入された申出による年金支給停止制度では、いつでも撤回することが可能です。この撤回による解除は、他の支給停止解除と異なり、受給者の意思だけで実行できる特徴があります。
撤回の条件と特徴。
戦略的な活用方法として、税制上の扶養控除との関係で一時的に年金を止めたい場合や、配偶者の社会保険の被扶養者要件を満たすために年金受給を調整したい場合に有効です。
例えば、配偶者の会社の健康保険で被扶養者になりたい場合、年収130万円未満の条件を満たすために一時的に年金支給を停止し、状況が変わったら撤回するという使い方ができます。
注意すべきポイントとして、申出による支給停止は全額停止のみで一部停止はできません。また、一度撤回すると、その時点より前の期間については年金を受け取ることができないため、撤回のタイミングは慎重に検討する必要があります。
この制度を活用する際は、将来の収入予測や家族の状況変化を十分に考慮し、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。税制面でのメリット・デメリットも含めて総合的に判断することが重要です。
日本年金機構の支給停止申出に関する詳細情報
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140421.html