
現在の民法では、兄弟姉妹の法定相続分は完全に平等と定められています。これは旧民法の「家督相続」制度が廃止されたためで、長男だから多く相続できるという考え方は現在では適用されません。
具体的な分割方法は以下の通りです。
例えば、両親が亡くなり3,000万円の遺産があった場合、3人兄弟なら各自1,000万円ずつが法定相続分となります。この原則は不動産や株式などの現物資産でも同様に適用されます。
ただし、遺言書がある場合は遺言内容が優先されます。しかし、遺言で極端に偏った分割が指定されていても、相続人(兄弟の場合)には遺留分減殺請求権があるため、最低限の相続分は確保できます。
遺産相続において「兄弟」として平等な権利を持つのは、実子だけではありません。以下の関係者も同等の相続権を有します。
平等な相続権を持つ兄弟の範囲
2013年の民法改正により、婚外子と婚内子の相続分の差が完全に廃止されました。これにより、隠し子であっても認知されていれば、他の兄弟と全く同じ権利で相続に参加できます。
代襲相続の影響
兄弟の中に既に亡くなっている人がいる場合、その人の子(甥・姪)が代襲相続人となります。例えば3人兄弟のうち1人が既に亡くなっており、その人に子どもが2人いる場合。
この場合も、代襲相続人は元の相続人と同等の権利を持ちます。
兄弟間の相続トラブルは、法律上は平等でも実際の状況が複雑なことから生じます。主な原因を以下にまとめます。
感情的な要因
経済的な要因
特別受益の具体例
例えば、3,000万円の遺産がある3人兄弟で、長男が生前に600万円の住宅資金援助を受けていた場合。
隠れた相続人の存在
戸籍調査により、知らない異父兄弟や認知された子どもが発見されるケースもあります。このような場合、予想していた相続分が減少することになり、トラブルの原因となります。
兄弟間での円満な相続を実現するためには、事前準備と適切なコミュニケーションが重要です。以下の方法が効果的です。
生前対策の重要性
実際の円満相続事例では、70代のAさんが8,000万円の資産について、以下の手順で準備を進めました。
相続開始後の対応
遺産分割協議のポイント
兄弟間の相続では、相続人の種類によって税務上の取扱いが大きく異なります。特に注意すべき点を以下にまとめます。
相続税の2割加算制度
被相続人の兄弟姉妹が相続する場合(第3順位の相続人)、相続税額に20%が加算されます。この制度は以下の場合に適用。
一方、子である兄弟姉妹が親の遺産を相続する場合は2割加算の対象外です。
具体的な税額計算例
相続税額が100万円の場合。
遺留分の有無による違い
被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺言で「全財産を市町村に寄付する」と書かれていても、遺留分減殺請求はできません。
申告上の注意点
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人数」ですが、隠れた相続人が発見された場合、相続人数の変更により控除額も変わります。
これらの複雑な税務処理を適切に行うためには、相続税専門の税理士への早期相談が不可欠です。特に相続財産が基礎控除額を超える場合は、申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に間に合うよう、速やかに専門家のサポートを受けることをお勧めします。