遺産相続が年収になるケースと確定申告の必要性を解説

遺産相続が年収になるケースと確定申告の必要性を解説

遺産相続が年収になるケース

遺産相続と年収の関係
💰
基本原則

相続で財産を受け取っただけでは年収に含まれない

🏠
家賃収入

相続した不動産から賃料を得ると年収に含まれる

📊
売却益

相続財産を売却して利益が出ると譲渡所得となる

遺産相続で財産を受け取っただけでは年収にならない基本的な理由

遺産相続によって財産を受け取った場合、基本的には年収に含まれません。これは、相続が財産の移転という性質を持つためです。

 

年収とは税金の計算上で収入に該当するものを指しますが、相続は以下の理由から所得として扱われません。
財産の承継:相続は被相続人から相続人への財産の承継であり、新たな収益を生み出す活動ではない
所得税法上の区分相続税の課税対象となる財産は、所得税法上の「所得」とは明確に分けられている
無償取得:相続による財産取得は無償であり、対価を得て行う事業活動とは性質が異なる
したがって、相続で現金や預金、不動産などを受け取ったとしても、それ自体は年収として計算されることはありません。これにより、所得税や住民税が増加することもありません

 

また、国民健康保険料についても所得に基づいて計算されるため、相続財産を受け取っただけでは保険料が上がることはありません。

 

遺産相続した不動産から家賃収入を得る場合の年収への影響

相続した不動産から家賃収入を得る場合は、その家賃収入が年収に含まれます。相続発生日以降の家賃収入は、相続人の所得として扱われるためです。

 

具体的な取り扱いは以下の通りです。
📅 収入の帰属時期
・相続発生日以降の家賃収入:相続人の所得
・相続発生日前の家賃収入:被相続人の所得(準確定申告の対象)
💡 確定申告の必要性
・給与所得者の場合:年間20万円以上の不動産収入があれば確定申告が必要
・初年度:相続発生後から12月31日までの収入を申告
・翌年以降:1月1日から12月31日までの収入を申告
⚖️ 遺産分割前の取り扱い
遺産分割協議が整っていない場合でも、法定相続分に応じて家賃収入を取得したとみなされます。この場合、各相続人が法定相続分に応じた家賃収入について確定申告を行う必要があります。

 

賃貸物件を相続した方は、毎年継続的に確定申告を行う必要があるため、適切な帳簿管理と税務手続きが重要になります。

 

遺産相続した財産を売却して譲渡所得を得る場合

相続した財産を売却して利益が出た場合、その売却益は譲渡所得として年収に含まれます。これは相続財産の売却により新たな所得が発生するためです。

 

💰 譲渡所得の計算方法
譲渡所得は以下の計算式で算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除

取得費:被相続人が財産を取得したときの価格(建物は減価償却費を差し引く)
譲渡費用:売却にかかった仲介手数料などの費用
特別控除:居住用財産の3,000万円控除など
🏠 換価分割の注意点
遺産を売却して現金化してから分割する「換価分割」も、税務上は相続人による売却として扱われます。相続税を支払うために遺産を売却する場合でも、譲渡所得税の対象となることに注意が必要です。

 

📋 申告期限と手続き
譲渡所得が発生した場合は、売却した翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があります。申告を怠ると、延滞税などのペナルティが課される可能性があります。

 

遺産相続で被相続人の所得を引き継ぐ準確定申告について

被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに所得があった場合、相続人は準確定申告を行う必要があります。これは被相続人に代わって行う確定申告です。

 

📝 準確定申告が必要なケース
・個人事業主として事業を営んでいた場合
・不動産所得があった場合
・給与以外の所得があった場合
医療費控除などの所得控除を受ける場合
⏰ 申告期限
準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。通常の確定申告期限(翌年3月15日)とは異なることに注意が必要です。

 

👥 申告義務者
相続人が複数いる場合は、全員で連署して申告書を提出するか、各相続人が個別に申告することができます。ただし、他の相続人に申告内容を通知する義務があります。

 

💡 未支給年金の取り扱い
厚生年金などの未支給年金を受け取った場合は、受け取った相続人の一時所得として扱われます。ただし、一時所得には50万円の特別控除があるため、多くの場合は申告不要となります。

 

遺産相続後の扶養や保険料への影響と対策

遺産相続により収入が発生した場合、扶養関係や各種保険料に影響を与える可能性があります。特に配偶者の扶養に入っている方は注意が必要です。

 

👨‍👩‍👧‍👦 扶養関係への影響
相続により不動産所得などが発生した場合の扶養判定は以下の通りです。

合計所得金額 扶養の状況 配偶者控除・特別控除
48万円以下 扶養の範囲内 配偶者控除38万円
48万円超〜133万円以下 段階的控除減少 配偶者特別控除38万円〜3万円
133万円超 扶養から外れる 控除なし

🏥 健康保険・介護保険への影響
国民健康保険:所得に応じて保険料が算定されるため、相続により所得が増加した場合は保険料も上昇
社会保険の扶養:年収130万円を超えると扶養から外れ、自分で保険に加入する必要
介護保険:65歳以上の方は所得に応じて保険料が決定される
📊 対策とポイント
青色申告の活用:不動産所得がある場合、青色申告により最大65万円の特別控除を受けられる
必要経費の適切な計上:修繕費、管理費、減価償却費などを適切に計上して所得を圧縮
収入時期の調整:可能であれば収入の発生時期を調整して扶養範囲内に収める
生活保護を受給している方の場合、相続財産により受給資格に影響する可能性があるため、事前に担当部署への相談が必須です。

 

遺産相続は一度きりの出来事ですが、その後に発生する所得については継続的な管理と申告が必要になります。適切な税務処理を行うことで、不要な税負担を避けることができるでしょう。