

医療保険と介護保険の違いを理解するうえで、まず押さえたいのが「誰が必ず入る公的保険なのか」という点です。医療保険は国民皆保険と呼ばれ、日本に住む原則すべての人に加入義務があり、病院で保険証を提示すると自己負担は原則1〜3割に抑えられます。
一方、公的介護保険の被保険者は40歳以上に限定され、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40〜64歳)に分かれ、要介護認定を受けて初めてサービスを利用できる点が医療保険との大きな違いです。
公的医療保険の保険者は健康保険組合や協会けんぽ、市区町村など複数ありますが、どれも「診療報酬の一部を負担する」ことが役割で、病院・薬局での支払いを軽くする仕組みです。
参考)医療保険と介護保険|いまさら聞けない!ナースの常識【9】
公的介護保険の保険者は原則市区町村で、介護保険料も住んでいる自治体が決めます。サービス利用には、74項目程度の聞き取り調査と主治医意見書に基づく要介護度判定が必要で、「診断名ではなく生活上どのくらい介助が必要か」で区分されるのも特徴です。
参考)大阪市:介護保険 要介護・要支援認定 (…>介護保険>介護保…
医療保険の最大の特徴は、病院・診療所・薬局での治療行為に対して「医療費の一定割合を公費で負担する」という現物給付が基本になっている点です。
診察・検査・入院・手術・薬代などには診療報酬点数表に基づく点数が設定され、その総額のうち患者は1〜3割を窓口で支払い、残りは医療保険から医療機関へ支払われます。高額療養費制度により、ひと月の自己負担が一定額を超えた分は後から払い戻される仕組みもあります。
介護保険の給付は「介護サービスそのもの」を提供する現物給付であり、自宅での訪問介護やデイサービス、施設入所などにかかる費用の原則1〜3割を本人が支払い、残りを介護保険が負担します。
参考)公的介護保険と民間介護保険の役割と違い|特徴を詳しく解説【F…
ここで意外と知られていないのが、民間介護保険との対比です。公的介護保険は現物給付ですが、民間の介護保険は「要介護状態などの条件を満たしたときに現金が一時金や年金形式で支払われる」現金給付であり、両者は役割が明確に異なります。
在宅医療・在宅介護では、「同じ訪問サービスでも医療保険なのか介護保険なのか」という違いが実務上の論点になります。訪問看護や訪問リハビリなどは、利用者の病状や要介護認定の有無に応じて、医療保険・介護保険どちらから給付するか優先順位がルール化されています。
たとえば末期がんやALSなど高度な医療管理が必要なケースでは、要介護認定があっても「医療保険での訪問看護」が優先されるなど、状態によって保険の使い分けが変わる点は、在宅療養を設計するうえで重要です。
一方、慢性期で状態が安定している高齢者では、介護保険を中心に訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルなどを組み合わせ、医療保険は通院や必要時の訪問診療に使う構成が一般的です。
医療保険と介護保険を併用する例として、在宅酸素療法は医療保険、ショートステイは介護保険といった分担があり、どちらの枠から支払われるかによって自己負担率や利用できる回数の上限が変わるため、金融的な視点でも押さえておきたいポイントになります。
公的な医療保険・介護保険に加えて、民間の医療保険・介護保険をどう組み合わせるかは、家計のキャッシュフロー管理という金融的なテーマでもあります。民間医療保険は入院給付金・手術給付金・通院給付金など現金で受け取り、公的医療保険でカバーしきれない自己負担分や差額ベッド代などに充てる役割を持ちます。
民間介護保険は、公的介護保険サービスの自己負担分や、制度の支給限度額を超えるホテルコスト(居住費・食費)などを賄う補完的な位置づけで、要介護度に応じて毎月一定額の年金を受け取れる商品も多く、年金の“疑似上乗せ”として設計されているのが特徴です。
税制面では、生命保険料控除の区分として「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」の3つがあり、医療・介護系の民間保険料は介護医療保険料控除の対象となります。一般生命保険契約と違い、「介護医療保険料」として一括管理されることで、病気・入院・介護リスクへの備えが税制上もひとつのカテゴリーとして扱われている点は、資産形成の観点からも押さえておきたいポイントです。
老後資金と保険のバランスを考える際には、「公的医療保険+公的介護保険でどこまで守られているか」を前提に、民間の医療・介護保険は“ギャップを埋めるピンポイントのツール”として選び、余力はiDeCoやNISAなどの長期投資に振り向けるという層構造で考えると、過剰な保険料負担を避けつつリスクヘッジと資産形成の両立がしやすくなります。
医療保険と介護保険の違いを、金融に興味がある人向けにもう一歩踏み込んで考えると、「リスクプール(リスクの集め方)の違い」として見る視点が有用です。公的医療保険は全年齢を対象に、短期的な治療費リスクを広く薄く分散する仕組みであり、年間の医療費のばらつきを国民全体で平準化する役割があります。
一方、公的介護保険は40歳以上に限定された保険料プールから、主として高齢期の長期介護リスクに備える仕組みで、「長期・高額になりやすい継続費用」をカバーする設計です。リスクの発生タイミングが中長期かつ偏りやすいため、介護保険では要介護度ごとの支給限度額や利用者負担割合を細かく調整し、財政の持続可能性を確保しています。
この違いを個人の資産形成に引き直すと、医療リスクは「年ごとにブレるキャッシュフロー」を医療保険で平準化し、介護リスクは「人生後半の一度きりかもしれない大きな支出」を介護保険と資産の両方で吸収するイメージになります。
投資商品の分散と同様に、「公的医療保険・公的介護保険・民間保険・現金・投資資産」を一つのポートフォリオとして捉え、医療保険と介護保険の違いを理解したうえで、自分の家系の健康リスクや職業リスクに応じて比重を変える発想を持てば、「保険に入りすぎ」「現金を持ちすぎ」といった典型的な非効率も見直しやすくなります。
医療保険と介護保険の目的・仕組み・公的制度の詳細を整理した一次情報(公的制度の条文・図解を含む)。
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