
タートル・スープ手法は、ラリー・コナーズによって考案された革新的な逆張り戦略で、有名なタートルズのブレイクアウト手法を逆手に取った独特のアプローチです。この手法の核心は「ブレイクアウトの7割は失敗に終わる」という市場原則を活用することにあります。
従来のタートル・ブレイクアウト・システムは、過去20日間の最高値や最安値を更新した際にトレンドフォローでエントリーする順張り手法でした。しかしタートル・スープ手法は、この逆の発想で、ブレイクアウトが一度発生した後に価格が元の範囲内に戻ってきたタイミングを狙います。
具体的には、20日間の最高値を一時的に上抜けした後、次の足で再びその高値を下回った場合、ブレイクアウトが失敗したと判断してショートポジションを取るのです。ロングの場合は逆に、20日間の最安値を下抜けした後に反転して元の価格帯に戻った瞬間にエントリーします。
この手法の背景には、市場参加者の心理が深く関わっています。ブレイクアウトポイントでは多くのトレーダーが同じ方向にポジションを持つため、そこを狙ったストップ狩りが発生しやすく、結果として価格の反転が起こりやすいのです。
タートル・スープ手法で最も重要なのは、適切なエントリータイミングの見極めです。成功の鍵は「前回の過去20本分の最安値は、当日を含めて4本以上前になくてはいけない」という条件を満たすことにあります。
この条件は、直近で安値を連続して更新している相場ではエントリーを避け、一度安値更新が止まってから再び下落したタイミングを狙うことを意味します。これにより、真のトレンド転換の可能性が高いポイントでのエントリーが可能になります。
エントリーの具体的な手順は以下の通りです。
タイミングの精度を高めるために、移動平均線の傾きやボリンジャーバンド、RSIなどの指標と組み合わせることが推奨されます。特に、WトップやWボトムのような形状を形成している場合は成功確率が高く、移動平均線が明確に傾いているトレンド相場では避けるべきです。
タートル・スープ手法は高勝率を誇る一方で、適切なリスク管理が成功の決定的な要因となります。この手法では、損切りのタイミングが特に重要で、エントリーの根拠となった価格帯を再度突破した時点で即座に損切りを実行する必要があります。
損切りの基本ルールは明確です。ショートポジションの場合は直近の高値を越えた時点で、ロングポジションの場合は直近の安値を下回った時点で潔く手仕舞いします。これにより、ブレイクアウトが本格化した場合の大きな損失を回避できます。
利益確定については、相場のボラティリティや移動平均線の傾きを参考に判断します。基本的には:
実際の運用では、リスクリワード比を1:2以上に設定し、トレーリングストップの併用も効果的です。特に相場が急激に変動した際には、利確も柔軟に行うことが推奨されます。
タートル・スープ手法の効果は、市場環境によって大きく左右されるため、適切な相場状況を見極めることが重要です。この手法が最も威力を発揮するのは、レンジ相場や過熱感のあるトレンド終盤です。
最適な市場環境。
一方で、この手法が不適切な市場環境も存在します:
通貨ペア別の特徴も考慮する必要があります。ドル円のような比較的安定した通貨ペアよりも、ポンド円やオージー円のようなボラティリティの高い通貨ペアで効果を発揮する傾向があります。
タートル・スープ手法には、基本形に加えて「タートルスープ・プラスワン」という発展的なバリエーションが存在します。この進化形は、より慎重なエントリーアプローチを採用し、成功確率をさらに高めることを目的としています。
プラスワン戦略の特徴は、ブレイクアウト失敗を確認した後、さらにもう一日待ってからエントリーする点にあります。具体的には、20日間の最安値を下回った後に反発し、次の足で前回の安値を上回ることを確認してからロングポジションを取ります。
この独自の進化により、以下のメリットが得られます。
さらに、現代の市場環境に適応させるため、以下のような独自のアレンジも有効です。
オーダーブロック理論との融合:タートル・スープのエントリーポイントを「スマートマネーによるストップ狩りのポイント」として捉え、機関投資家の動きを逆手に取る戦略。
マルチタイムフレーム分析:日足でのタートル・スープシグナルを4時間足や1時間足で詳細に分析し、エントリーの精度を高める手法。
ボリューム分析の活用:出来高の急増を伴わないブレイクアウトを「弱いブレイクアウト」として判定し、タートル・スープの成功確率を予測する方法。
これらの進化形により、従来のタートル・スープ手法よりも現代の市場環境に適応した、より洗練された逆張り戦略の構築が可能になります。トレーダーは自身の取引スタイルや市場の特性に応じて、これらの要素を組み合わせることで、独自の高精度なタートル・スープシステムを開発できるでしょう。