相続放棄やってはいけないこと完全ガイド

相続放棄やってはいけないこと完全ガイド

相続放棄やってはいけないこと

相続放棄で絶対に避けるべき行為
⚠️
処分行為の禁止

預貯金の引き出しや不動産売却など、相続財産を処分すると法定単純承認となり相続放棄不可

期間制限の厳守

相続を知ってから3か月以内に手続きを行わないと相続放棄の権利を失う

🔒
隠匿・消費の禁止

相続放棄後も相続財産を隠したり消費したりすると放棄が無効になるリスクあり

相続放棄前の処分行為とは

相続放棄を検討している場合、最も注意すべきは相続財産の処分行為です。処分行為とは、相続財産の状態や性質を変える行為のことで、これを行うと法定単純承認が成立し、相続放棄ができなくなります。

 

預貯金関連の禁止行為:

  • 故人名義の口座からの現金引き出し
  • 預金口座の解約手続き
  • 口座の名義変更
  • 定期預金の解約

預貯金の引き出しについて、「引き出しただけで使用していないなら処分ではない」という見解もありますが、相続放棄が認められなくなるリスクがある以上、手をつけないのが賢明です。万が一引き出してしまった場合は、そのお金を使わずに別途保管し、可能であれば被相続人の口座に再入金することが推奨されます。

 

不動産関連の禁止行為:

  • 土地や建物の売却
  • 建物の取り壊し・解体
  • 賃貸アパートの解約
  • 不動産の増改築

不動産の売却や解体は典型的な処分行為とされており、たとえ空き家であっても相続方法が確定するまでは処分してはいけません。

 

その他の金融資産:

  • 株式の売却や名義変更
  • 株主権の行使(配当受取、株主総会出席)
  • 有価証券の処分

これらの行為は、相続人として相続財産を承継する意思があるとみなされ、法定単純承認が成立する原因となります。

 

相続放棄後の隠匿・消費について

相続放棄が家庭裁判所で受理された後も、注意すべき行為があります。相続放棄後の相続財産の隠匿や消費は、せっかく受理された相続放棄を無効にしてしまう可能性があります。

 

隠匿行為の具体例:

  • 管理していた預金通帳を意図的に隠す
  • 価値のある貴金属を持ち去る
  • 相続財産の存在や保管場所を教えない
  • 被相続人の重要書類を隠す

相続財産の隠匿とは、相続財産のありかをわからなくすることを指します。相続放棄をすると、相続財産は他の相続人または次の順位の相続人のものになるため、これらの人に迷惑をかける行為は厳禁です。

 

消費行為の具体例:

  • 被相続人の預貯金を自分の借金返済に使用
  • 相続財産を勝手に処分して元の価値を失わせる
  • 遺産から自分の生活費を捻出

相続財産の消費は、勝手に相続財産を処分して元の価値を失わせることを意味します。これらの行為により、相続放棄が無効となり、マイナスの遺産を含めて一切の遺産を相続しなければならなくなります。

 

相続放棄後の管理義務:
相続放棄をしても、占有している不動産については、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務があります。この保存とは単に放置することではなく、壊れたら修理するなどの適切な管理が必要です。

 

相続放棄の期間制限と手続き

相続放棄には厳格な期間制限があり、これを過ぎると相続放棄の権利を失います。自分が相続人になったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。

 

期間制限の詳細:

  • 起算点:相続開始を知った時から
  • 期間:3か月間(熟慮期間)
  • 延長:特別な事情がある場合は家庭裁判所に申立てで延長可能
  • 遡及効なし:期間経過後の延長申立ては不可

この3か月という期間は、相続財産や借金の調査、相続人間の調整、次の相続人への連絡など必要な手続きを全て完了するには短いと考えられています。そのため、相続放棄を検討する場合は早めの行動が重要です。

 

手続きの流れ:

  1. 相続財産と債務の調査
  2. 家庭裁判所への申述書類作成
  3. 必要書類の収集(戸籍謄本等)
  4. 申述書の提出
  5. 家庭裁判所からの照会対応
  6. 相続放棄受理通知書の受領

期間内に決められない特別な事情がある場合は、家庭裁判所に申立てを行い熟慮期間を延長してもらうことも可能です。ただし、期間経過後に遡って延長することはできないため、早めの判断と手続きが不可欠です。

 

相続放棄でも許可される保存行為

相続放棄を検討している場合でも、すべての行為が禁止されているわけではありません。民法では保存行為短期の賃貸については例外的に認められています。

 

保存行為の具体例:

  • 老朽化した建物の補修
  • 空き家の管理・清掃
  • 防犯対策(鍵の交換等)
  • 相続財産の価値を維持するための行為

保存行為とは、財産の価値を減らさないように守る行為のことです。例えば、空き家になるよりも人が住んでいる方が建物の劣化を防げるため、相続放棄する前に故人名義の家に住み続けることも許可されています。

 

短期賃貸の条件:

  • 賃貸期間:602条に定める期間内(通常3年以内)
  • 目的:財産価値の維持
  • 適正な賃料設定

葬儀費用の支払い:
社会通念上常識的な範囲の葬儀であれば、遺産から葬儀費用を支払っても問題ありません。ただし、過度に豪華な葬儀は処分行為とみなされる可能性があります。

 

判断が困難なケース:

  • 故人の携帯電話解約
  • 公共料金の支払い
  • 高額療養費の受取
  • お香典の受取
  • 形見分け(経済的価値の低いもの)

これらの行為については、その状況や金額により判断が分かれるケースが多く、専門家への相談が推奨されます。経済的価値が重要なものについては、判断に悩む場合は受け取らないことが鉄則です。

 

相続放棄失敗時の対処法と専門家相談

相続放棄の手続きは書類作成自体は難しくありませんが、事前の判断や注意点が複雑で、失敗するリスクも存在します。万が一、知らずに法定単純承認に該当する行為をしてしまった場合の対処法を理解しておくことが重要です。

 

失敗パターンと対処法:
遺産分割協議書に署名してしまった場合:
遺産分割協議書への署名は相続人としての行為であり、原則として相続放棄できません。ただし、署名してしまった場合でも、特別な事情があれば専門家に相談することで解決策が見つかる可能性があります。

 

預貯金を引き出してしまった場合:

  • 引き出した現金に手をつけていない場合は相続放棄が認められる可能性
  • 葬儀費用として使用した場合も状況により認められるケース
  • 引き出し後は自分の財産と分けて厳重に保管

専門家相談のタイミング:

  1. 相続開始直後:相続財産の調査段階から専門家のアドバイスを受ける
  2. 判断に迷う行為がある場合:処分行為に該当するか不明な行為がある時
  3. すでに問題のある行為をしてしまった場合:早急な対応策の検討

専門家選びのポイント:

  • 相続放棄の実務経験が豊富な弁護士・司法書士
  • 複雑なケースへの対応実績
  • 全国対応可能な事務所(オンライン相談対応)
  • 相続全般に詳しい専門家

予防策としての事前準備:
相続放棄を成功させるためには、手続き開始前からの準備が重要です。相続が発生する前から家族間で相続についての話し合いを行い、必要に応じて専門家との関係を築いておくことで、いざという時の迅速な対応が可能になります。

 

また、相続放棄は取り消しができない手続きのため、十分な検討が必要です。債務の全容把握、他の相続人への影響、後順位相続人への通知など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。

 

継続的な注意義務:
相続放棄が受理された後も、相続財産の管理義務は継続します。特に不動産を占有している場合は、他の相続人や相続財産清算人への引き渡しまで適切な管理を続ける必要があり、この点についても専門家のアドバイスを受けることが重要です。