訴状と証拠説明書の書き方と提出方法

訴状と証拠説明書の書き方と提出方法

訴状と証拠説明書の基本知識と作成方法

訴状と証拠説明書の重要ポイント
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証拠説明書の役割

裁判官が証拠の全体像を把握するための一覧表であり、特に証拠が多い事件では重要度が高まります

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必要な記載事項

証拠番号、標目、原本写しの別、作成日、作成者、立証趣旨の6項目を表形式で記載します

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提出方法

訴状と一緒に提出する場合は2部作成し、被告の数によって必要部数が変わります

訴状の証拠と準備するべき書類一覧

訴状を提出する際には、主張を裏付ける証拠の準備が不可欠です。裁判所に提出する訴状には、以下の書類を添付する必要があります。

 

まず、訴状本体と証拠書類のコピーを用意します。提出部数は「被告の数+1部」が基本となります。例えば、被告が1名の場合は2部、被告が3名の場合は4部必要です。これは裁判所用と各被告への送達用の部数を確保するためです。

 

証拠書類には以下のものが含まれます。

  • 証拠書類:契約書、事故証明書、LINEやメールのスクリーンショットなど
  • 証拠説明書:各証拠の内容と立証趣旨を説明する書面(簡易裁判所では必須ではない)
  • 付属書類:訴状副本、相手が法人の場合は登記簿謄本など

証拠書類には番号を付与する必要があります。原告側の証拠は「甲第1号証」「甲第2号証」のように赤字で右上に記載します(被告側は「乙第1号証」)。証拠がバラバラにならないよう、ホチキスで止めて提出することが推奨されています。

 

なお、個人が申立てる場合は認印で構いませんが、シャチハタは使用できません。法人の場合は代表者印が必要です。また、修正が必要になる場合に備えて、訴状の各ページの上部余白に捨印を押しておくと便利です。

 

訴状の証拠説明書の正しい書き方と記載例

証拠説明書は表形式で作成し、以下の6項目を記載します。

 

  1. 証拠番号:訴状で記載した番号と一致させます(例:甲第1号証)
  2. 標目:証拠物の名称を記載します(例:契約書、受領書など)
  3. 原本・写しの別:提出する書類が原本か写しかを明記します
  4. 作成日:証拠が作成された日付を記載します
  5. 作成者:誰が作成した書類かを記載します(例:原告、被告など)
  6. 立証趣旨:その証拠で何を証明したいのかを具体的に記載します

証拠説明書の記載例。

号証 標目 原本・写しの別 作成日 作成者 立証趣旨
甲第1号証 土地売買契約書 原本 2024年1月15日 原告及び被告 原告と被告間で本件土地の売買契約が締結されたこと
甲第2号証 振込明細書 写し 2024年1月20日 ○○銀行 原告が契約金額を支払ったこと

標目の記載方法は、証拠に明確なタイトルがある場合はそのまま記載します。タイトルがない場合は、裁判官が内容を理解しやすいよう工夫します。例えば「令和○年○月○日の原告と被告の会話内容を記載したメモ」のような具体的な記載が効果的です。

 

LINEやメッセージのスクリーンショットを証拠とする場合は、以下のように記載すると良いでしょう。

号証 標目 原本・写しの別 作成日 作成者 立証趣旨
甲第3号証 LINEのトーク履歴 写し 2024年2月1日~2月28日 原告及び被告(スクリーンショットは原告作成) 被告が債務の存在を認め、返済を約束していること(画面右側が原告、左側が被告のメッセージ)

立証趣旨は、その証拠で何を証明したいのかを簡潔かつ具体的に記載します。読み手が証拠と主張の関連性を理解できるよう、必要に応じて補足説明を加えましょう。

 

訴状の証拠番号の付け方と証拠整理のコツ

証拠番号の付け方は、わかりやすく整理するためのものであり、絶対的な基準はありません。しかし、以下のルールに従うと効率的に整理できます。

 

基本的な番号付けのルール

  • 原告側の証拠は「甲第○号証」、被告側は「乙第○号証」と表記します
  • 番号は提出順に連番で付けます
  • 番号は赤字で書類の右上に記載します

複数ページの証拠の場合
複数ページにわたる証拠(例:2ページ以上の手紙)は、左上をホチキスで留め、一枚目にのみ「甲第○号証」と記載します。ページ番号を付けると整理しやすくなります。

 

関連する複数の証拠の場合
同じ事実を証明するための複数の証拠がある場合、以下の2つの方法があります。

 

  1. 枝番方式:「甲第1号証の1」「甲第1号証の2」のように枝番を付ける
  2. 独立番号方式:「甲第1号証」「甲第2号証」のように別々の番号を付ける

どちらの方法を選ぶかは、証拠全体のボリュームや分かりやすさで決めます。例えば、LINEの会話履歴のスクリーンショットが複数ある場合、同じ日のやりとりなら一つの号証にまとめ、別の日のものなら枝番を付けると整理しやすくなります。

 

写真を証拠として提出する場合は、撮影場所や撮影方向がわかりにくいことがあります。複数の写真を提出する際は「写真台帳」として見取り図を添付し、各写真の撮影場所と方向を示すと効果的です。

 

証拠の整理は事件の全体像を把握するために重要です。関連性のある証拠はグループ化し、時系列順に並べると、主張の流れが理解しやすくなります。

 

訴状の証拠説明書の提出方法と部数

証拠説明書の提出方法と必要部数は以下のとおりです。

 

提出部数

  • 基本的には「被告の数+1部」を用意します
  • 被告が1名の場合は2部、被告が3名の場合は4部必要です

提出タイミングと方法

  1. 訴状と一緒に提出する場合
    • 証拠説明書2部と証拠書類を訴状に添付して提出します
    • この段階では事件番号が決まっていないため、証拠説明書の事件番号欄は空欄で構いません
  2. 被告から答弁書が提出された後
    • 被告への直送が可能になります
    • 裁判所へはFAXでの提出も可能です
  3. 証拠の写しの提出
    • FAXでの提出・直送が可能ですが、写真やカラー文書はFAXだと見にくくなるため、期日にクリーンコピーを持参することをお勧めします

証拠説明書と証拠書類を提出する際は、裁判所の指示に従ってください。一般的には、証拠説明書と証拠書類を一緒にホチキスで留めず、別々に提出します。

 

また、証拠説明書の記載内容に不備があると、裁判所から補正を求められることがあります。特に立証趣旨の記載は重要で、その証拠で何を証明したいのかを明確に記載する必要があります。

 

訴状の証拠説明書が裁判の勝敗に与える影響

証拠説明書自体が直接裁判の勝敗を左右するわけではありませんが、証拠の整理と説明の質は裁判官の心証形成に大きな影響を与えます。

 

証拠説明書の重要性
証拠説明書は、裁判官が多数の事件を同時に扱う中で、その裁判でどのような証拠が提出されているかを把握するための重要なツールです。特に証拠が20〜30点以上ある複雑な事件では、裁判官は証拠説明書をベースに証拠構造を理解することがあります。

 

効果的な証拠説明書の特徴

  1. 明確な立証趣旨:各証拠が何を証明するためのものかが明確に記載されている
  2. 論理的な証拠の整理:関連する証拠がまとまっており、主張の流れに沿っている
  3. わかりやすい標目:証拠を見なくても内容が推測できる具体的な記載がされている

弁護士の中には「証拠説明書は準備書面で証拠を引用しているので不要」と考える人もいますが、裁判官の立場からすると、証拠説明書は証拠全体を俯瞰するための重要な資料です。特に本人訴訟(弁護士を立てずに自分で訴訟を行うこと)の場合、わかりやすい証拠説明書の作成は裁判官の理解を助け、有利に働く可能性があります。

 

また、証拠説明書の作成過程で自分の主張と証拠の関係を整理することができ、論理的な主張構成に役立ちます。「いい加減な書類は裁判所に与える心証もよろしくない」という指摘もあるように、丁寧に作成された証拠説明書は、訴訟に対する真摯な姿勢を示すことにもなります。

 

最終的には、証拠の内容自体が勝敗を決めますが、その証拠を効果的に提示するための証拠説明書の重要性は無視できません。特に複雑な事案では、証拠説明書の質が裁判官の心証形成に与える影響は大きいと言えるでしょう。