
メタプラネットは2025年6月、第20回から第22回新株予約権の第三者割当による発行を決議し、調達予定額約7,674億円という日本の資本市場における新株予約権発行として史上最大規模を実現しました 。発行総数は555万個で、これは同社の野心的な「555ミリオン計画」の一環として位置づけられています。この計画により、メタプラネットは2027年末までに21万BTCの保有を目指し、ビットコインの総供給量上限2,100万枚の1%に相当する「1%クラブ」への参入を狙っています 。
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💡 今回の新株予約権発行で注目すべきは、従来のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)では市場価格に対して8~10%程度のディスカウントが一般的であったのに対し、むしろプレミアムを付与する構造を採用している点です 。
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メタプラネットの新株予約権の最大の特徴は、行使価額が市場価格を上回る「プレミアム型」である点にあります 。初回行使価額は1,388円で、取締役会決議日前日(6月5日)の終値1,363円に対して1.83%のプレミアムが付与されています。行使価額の修正方式も独特で、各シリーズで異なる修正倍率が設定されており、第20回新株予約権は基準価格の100%、第21回は101%、第22回は102%となります 。
参考)https://www.jasdec.com/assets/dat/20250624/detail1750725779.pdf
修正は3取引日ごとに実施され、その都度、直前3取引日の平均終値に各倍率を乗じた価格に調整される仕組みです 。下限行使価額は当初777円に設定されていましたが、海外募集による新株式の発行を事由として、2025年9月より637円に引き下げられています 。
参考)メタプラネット[3350]:第20回乃至第22回新株予約権の…
🔄 この行使価額修正条項により、市場環境に応じて柔軟に資金調達を進めることが可能となっています。
メタプラネットの新株予約権行使は順調に進んでおり、2025年8月27日以降だけでも1,150万株が交付されています 。8月14日から26日の間には、投資家が27万5000件の新株予約権を行使し、966円から834円の価格で2,750万株の新株を発行しました 。この資金調達により同社は継続的にビットコインを購入しており、9月22日には購入総額936億4600万円で5,419ビットコインを追加取得し、総保有量は2万5,555BTCに達しています 。
参考)メタプラネット[3350]:第三者割当により発行された第20…
現在、メタプラネットは8,888BTCを保有しており、時価約1,370億円に相当します 。同社の平均取得価格は85,621ドルであるため、含み益はすでに7,000万ドル(約101億円)以上となっています。同社のBTC Yield指標は2025年累計で225.4%を達成しており、これはマイクロストラテジーの16.3%を大幅に上回る数値です 。
📈 企業のビットコイン保有状況を追跡する「Bitcoin Treasuries」によると、メタプラネットは保有量で世界第5位に浮上しています 。
参考)メタプラネット、約936億円でビットコイン追加購入──総保有…
新株予約権発行は企業側にとって複数のメリットがあります。まず、資金調達の柔軟性が挙げられ、権利行使期間内であれば権利者の判断で権利を行使するかどうか決定できるため、企業は段階的な資金調達が可能です 。また、ストックオプション的な性質により、役員や従業員に対するインセンティブ付与としても活用できます 。
参考)新株予約権とは?会計処理やメリット・デメリットの解説
一方でデメリットとして、新株予約権が行使されると既存株主の持株比率が低下する「希薄化」のリスクがあります 。権利が行使されなければ予定通りの資金調達ができない不確実性も存在します 。メタプラネットの場合、大量の新株予約権発行により、既存株主の利益が大きく損なわれる可能性があることに注意が必要です 。
参考)新株予約権とは?種類・メリット・デメリットについて解説
⚠️ 特に株価が期待より上昇しなかった場合、新株予約権は行使されず、企業の資金調達計画に影響を与える可能性があります 。
参考)新株予約権とは?新株予約権の種類・活用方法・発行手続き・メリ…
メタプラネットの新株予約権発行戦略は、従来の日本企業とは大きく異なるビットコイン中心の財務戦略と密接に関連しています。同社は現在、海外機関投資家を対象とした資金調達にも取り組んでおり、9月1日の臨時株主総会では優先株の発行規定を新設する議案を可決し、最大5550億円の追加調達を可能にしています 。
参考)メタプラネット株主、優先株発行規定の新設を賛成多数で可決(B…
このような積極的な資金調達戦略により、メタプラネットは「日本版マイクロストラテジー」としての地位を確立しつつあります。ただし、ビットコイン価格の変動リスクと新株予約権による希薄化リスクが重複することで、株価の変動幅が拡大する可能性があります 。
参考)メタプラネットとは?ビットコイン投資戦略や株価推移、将来性を…
同社は9月3日から30日まで新株予約権の権利行使を一時停止しており 、市場環境を見ながら戦略的に資金調達のタイミングを調整しています。未行使の権利は第20回が36万件、第21回と第22回がそれぞれ185万件となっており、今後の行使状況が同社の財務戦略に大きく影響することになります 。
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🎯 メタプラネットの独自性は、新株予約権を単なる資金調達手段ではなく、ビットコイン購入という明確な目的と組み合わせた点にあり、これが投資家からの強い支持を獲得している要因となっています。