
2025年6月6日に成立した改正資金決済法は、金融のデジタル化等の進展に対応し、利用者保護を確保しつつイノベーションを促進するという明確な目的を持っています。この改正は、金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」における約7回の審議を経て立案されたもので、現代の金融環境に即した包括的な制度改革を目指しています。
改正の核心となるのは以下の主要な変更点です。
送金・決済サービス関連の改正
暗号資産・電子決済手段関連の改正
この改正により、FX事業者を含む金融サービス事業者は、新たな規制環境に適応するための具体的な対応が求められることになります。
今回の改正で特に注目すべきは、「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」という新たな業種の創設です。これは「媒介のみ」を業として行う事業者を対象とした仲介業で、登録制が導入されます。
新仲介業の主な特徴は以下の通りです。
規制の特徴
実務への影響
暗号資産やFX関連サービスにおいて、単純な媒介業務を行う事業者にとっては、これまでグレーゾーンとされていた部分が明確化されることで、適正な事業運営の道筋が示されたと言えるでしょう。
また、資産の国内保有命令に関する規定の追加は、いわゆるFTX事件を踏まえた重要な改正です。これまで金融商品取引法の規定に依存していた権限が、資金決済法においても明確に規定されることで、現物取引のみを取り扱う事業者に対しても適切な監督が可能となります。
ステーブルコイン(電子決済手段)に関する規制は、今回の改正の中でも特に革新的な部分です。2023年から施行されていた基本的な規制に加え、今回の改正では「特定信託受益権」の定義が拡張されました。
改正前の制約
従来の規制では、信託型ステーブルコインの裏付資産は要求払預貯金に限定されていましたが、この制約により事業者にとって過度の負担となっているとの指摘がありました。
改正後の柔軟性
新たな定義では、一定の条件の下で要求払預貯金以外の方法での信託財産管理・運用が認められます。具体的な条件は内閣府令で定められる予定ですが、以下のような内容が想定されています:
これらの変更により、ステーブルコイン発行事業者はより効率的な資産運用が可能となり、結果として利用者にとってもより安定したサービスの提供が期待されます。
クロスボーダー収納代行に関する規制強化は、国際的な取引が増加する中で特に重要な改正点です。これまでグレーゾーンとされていた海外事業者との決済代行業務について、明確な規制の枠組みが設けられました。
規制対象の明確化
改正法では、適用除外類型に該当しない限り、クロスボーダー収納代行について資金移動業の登録が求められることになります。これは利用者保護やマネー・ローンダリング等のリスクへの対応の観点から設けられた措置です。
実務上の注意点
FX事業者への影響
FX事業者が海外との資金移動や決済代行サービスを行う場合、新たな登録要件や規制に対応する必要があります。特に、海外投資家との取引や海外ブローカーとの連携を行う事業者にとっては、コンプライアンス体制の見直しが急務となるでしょう。
改正資金決済法の施行に向けて、FX関連事業者が取るべき対応戦略は多岐にわたります。特に重要なのは、段階的な施行スケジュールに合わせた準備の実施です。
immediate対応事項
事業者はまず、自社の事業モデルが新たな規制のどの部分に該当するかの詳細な分析を行う必要があります。特に以下の点について確認が重要です。
システム・業務フロー対応
新規制に対応するため、以下のシステム・業務フローの見直しが必要となる場合があります。
コンプライアンス体制強化
改正法の施行に伴い、コンプライアンス体制の大幅な見直しが必要です。
今後の規制動向への備え
内閣府令の詳細が公表される予定であり、事業者は継続的な情報収集と対応準備が必要です。特に、ステーブルコインの信託財産管理に関する具体的条件や、各種登録要件の詳細について、公表され次第速やかな対応が求められるでしょう。
また、金融庁からの追加的なガイダンスや業界団体からの対応指針も重要な情報源となるため、これらの動向を注視し、必要に応じて専門家との連携を深めることも重要な戦略の一つです。