
欧州銀行監督機構(EBA)は2011年1月にESFS(欧州金融監督システム)の一部として設立された独立機関です。EUの銀行セクター全体で効果的で一貫性のある健全な規制および監督を確保することを主要な目的としています。
EBAの最も重要な業務の一つが法的拘束力のある技術的基準(BTS)やガイドラインの策定です。これらの技術基準は、EU全域の金融機関に対して調和された単一の健全性規制を提供し、公平な競争環境と預金者・投資家・消費者の保護に貢献しています。
現在、EBAは以下の重要な機能を担っています。
EBAの規制技術基準(RTS)は、段階的な策定プロセスを経て制定されます。まず、EBAが技術基準案を作成し、その後欧州委員会に提出されます。例えば、2021年10月には投資会社の議決権行使方針開示に関する新たなRTSの最終案が発表され、欧州委員会での採択を経て12月31日に施行される予定でした。
RTS制定の特徴として以下の点が挙げられます。
近年では、2024年12月にモデル承認プロセスの迅速化に向けた規則改正についても協議が公表されており、継続的な規制の見直しが行われています。
EBAの技術基準は、FX市場に対して多面的な影響を与えています。特に注目すべきは、店頭デリバティブに関する規制強化です。欧州証券市場監督機構(ESMA)と連携して、集中清算機関や取引情報蓄積機関に関する技術的基準案が策定されています。
FX取引に関連する主要な規制領域は以下の通りです。
これらの規制は、市場の健全性向上を目的としており、リスク管理の強化と市場透明性の確保に重点が置かれています。
2024年6月、EBAは「EU暗号資産(仮想通貨)市場規制法案(MiCA)」に基づく技術基準およびガイドラインのパッケージを公表しました。この新しい規制は、デジタル資産分野における包括的な技術基準として注目されています。
MiCAに関連する主要な技術基準。
特に重要なのは、発行体に対する自己資金要件です。潜在的なリスクをカバーするのに十分な自己資金を保有することが義務付けられ、高リスク判断のためのパラメータ作成も求められています。
EBAの技術基準は、国際的な規制調和を通じて日本のFX業界にも間接的な影響を与えています。特に、G20諸国間での規制協調により、日本の金融庁もEUの技術基準を参考にした規制整備を進めています。
日本への具体的な影響として以下が挙げられます。
さらに、**デジタル・オペレーショナル・レジリエンス・アクト(DORA)**の導入により、金融機関のサイバーセキュリティ基準も強化されており、これらの技術基準が日本のFX業者のシステム運営にも影響を与える可能性があります。
特に注目すべきは、EBAによる43の関連文書を通じた持続可能金融ガイドラインの策定です。これらの基準は、2020年1月から2023年12月の期間にわたって策定され、金融機関の持続可能性報告や環境リスク管理に新たな要求事項を設けています。
これらの技術基準の進化は、日本のFX業界においてもコンプライアンス体制の強化とリスク管理の高度化を促進する重要な要因となっており、今後も継続的な監視と対応が必要とされています。