
二次調整課税と利益供与の関係を理解するためには、まず移転価格税制における調整の流れを把握することが重要です。移転価格税制が適用される場合、三段階のプロセスが存在します。
第一次調整では、単に課税所得の是正を行います。これは独立企業間価格と実際の取引価格との差額について課税所得を調整するものです。しかし、この段階では課税上の配分のみが行われ、実際の資金の流れは変わりません。
第二次調整では、「ちゃんと取り戻しなさい」として、この差額の性質決定が問題となります。わが国では、移転した利益について**原則として「社外流出」**として取り扱い、寄附金課税の対象となります。
この構造により、関連企業間での利益の移転について、移転価格税制の適用と同時に利益供与としての課税が発生する可能性があります。特に、親子会社間の取引では、この問題が顕著に現れることが多いのです。
二次調整課税における最も重要な問題の一つが、経済的二重課税の発生です。これは移転価格税制特有の複雑な構造から生じます。
金子教授の指摘によると、移転価格税制の適用により適正対価との差額相当額について子会社に課税する一方で、その適用結果として生じた同じ金額の擬制所得に対して親会社にも課税することは、親子会社を一体として見た場合には明らかに経済的二重課税となります。
具体的には以下のような流れで二重課税が発生します。
この結果、みなし配当課税は対応的調整の機能を否定するのと同じ効果を持ち、事態を対応的調整のない状態に戻してしまいます。
OECD移転価格ガイドラインでは、「税務当局は第二次調整が必要である場合、結果として生じる二重課税の可能性が最小となるような調整を組み立てるべきである」として、二重課税発生への懸念を示しています。
二次調整課税において最も複雑な問題は、移転した利益に対する性質決定です。各国で異なるアプローチが採用されており、これが国際的な二重課税を引き起こす要因となっています。
日本では、増額更正処分を行った場合の「差額」について、原則として「社外流出」とするのみで、差額の性質決定については不明確な状態となっています。この曖昧さが実務上の複雑さを生んでいます。
一方、米国では「配当・出資」として構成します。この違いにより、日米間の取引において異なる課税が適用される可能性があります。
実務上の問題点として以下が挙げられます。
対応的調整は、移転価格税制適用時の二重課税を防止するための重要な制度です。しかし、対応的調整が行われると、新たな課税問題が発生する可能性があります。
対応的調整の実施により、利益を受けた相手方で損金が発生します。これは経済的二重課税を防止するための措置ですが、同時に第二次調整の必要性を生み出します。
租税条約が締結された関係国間においては、一方の国で増額調整がなされると、相手国側では相互協議の合意に基づいた対応的調整という手続きが用意されています。
しかし、対応的調整後の処理において注意すべき点があります。
特に、グループ法人税制においては、所得振替を防止する観点とグループを一体と見る考えから対応的調整を行う観点が衝突します。このトレード・オフの関係にある概念の衝突が、第二次調整の複雑さを増しています。
二次調整課税における利益供与のリスクを最小化するためには、事前の取引設計と継続的なモニタリングが不可欠です。
まず、取引の設計段階では以下の点に注意が必要です。
継続的なモニタリングでは、以下の観点が重要です。
今後の展望として、OECD BEPS行動計画に基づく国際的な統一化の動きが注目されます。利益Bの導入により、「移転価格のルールを簡素化し、紛争の予防・解決に資するもの」とする取り組みが進められています。
また、デジタル課税における新たなルール整備により、従来の移転価格税制の枠組みも変化する可能性があります。企業としては、これらの国際的な動向を注視しながら、セーフハーバー規定の活用を検討することが重要です。
特に、利益Bの適用がセーフハーバーとして企業の選択に委ねられる方向性は、実務上の負担軽減と税の安定性確保の観点から歓迎すべき動きです。二次調整課税のリスクを抱える企業にとって、このような国際的な簡素化の流れは、将来的なリスク軽減につながる可能性があります。