民事裁判手続の流れと訴訟提起から判決までの期間

民事裁判手続の流れと訴訟提起から判決までの期間

民事裁判手続の流れについて

民事裁判手続の基本
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民事裁判とは

個人間の法的紛争を裁判所が判決によって解決する手続きです。貸金返還、不動産明渡し、損害賠償請求などが代表的な事例です。

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訴訟の期間

一般的な民事訴訟は第一審で約1年程度かかりますが、事案の複雑さによって変動します。

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解決方法

判決による解決だけでなく、訴訟途中での和解による解決も多く見られます。

民事裁判の訴状提出と訴訟開始の手順

民事裁判は、原告(訴える側)が裁判所に訴状を提出することから始まります。訴状には、誰に対して(被告)、どのような請求をするのか、その請求の根拠となる事実や証拠、適用される法律などを明確に記載する必要があります。

 

訴状が提出されると、裁判所はその内容を審査し、問題がなければ正式に受理します。受理された訴状は被告に送達され、同時に第1回口頭弁論期日の指定と呼出状が送付されます。被告は訴状を受け取った後、原告の主張に対する認否や自分の主張を記載した答弁書を作成し、指定された期日までに裁判所に提出しなければなりません。

 

訴状提出の際には、訴額に応じた収入印紙代や、被告への送達に必要な郵便切手代などの費用が発生します。また、訴訟の対象となる金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所で取り扱われます。

 

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民事裁判の口頭弁論期日と審理の進め方

第1回口頭弁論期日は、訴状提出から約1ヶ月後に設定されるのが一般的です。この期日では、原告が訴状の内容を陳述し、被告は答弁書を陳述します。興味深いことに、被告が第1回口頭弁論期日に欠席しても、事前に答弁書を提出していれば、その内容が陳述されたものとみなされる「陳述擬制」(民事訴訟法158条)という制度があるため、実務上、被告が第1回期日に欠席することはよくあります。

 

第1回期日以降は、おおよそ1ヶ月ごとに口頭弁論期日または弁論準備手続期日が設定され、原告と被告が交互に準備書面を提出・陳述していきます。この過程で、双方の主張や証拠が出揃い、争点が整理されていきます。

 

民事訴訟は非常に書面を重視する手続きであり、口頭での説明よりも書面での主張が重視されます。そのため、期日が5分程度で終わることも珍しくありません。期日の主な目的は、その回に提出する書面の確認と次回までに提出予定の書面の内容を確認することにあります。

 

令和4年5月18日に成立した民事訴訟法等の一部改正により、民事裁判のIT化が進んでいます。2023年3月1日からは弁論準備手続・和解手続が双方当事者ともWebでの参加で実施できるようになり、訴状等のオンライン提出・送達、記録の電子化保存・閲覧なども順次導入されています。

 

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民事裁判の証拠調べと証人尋問の重要性

主張や書証が出揃い、争点がはっきりしたら、証拠調べの段階に入ります。証拠調べでは、証人尋問や当事者尋問が行われ、通常は1〜2回の期日で集中的に実施されます。

 

証人や当事者の説明は、多くの場合、事前に陳述書という形で提出されています。そのため、映画のように突然新証人が現れて新事実が明らかになるといったドラマチックな展開はほとんどありません。証人が何を証言しようとしているのかは、証人の申請をした当事者はもちろん、相手方も事前に把握しています。

 

尋問では、主尋問(証人を申請した側が行う尋問)よりも、反対尋問(相手方が行う尋問)に大きな意義があります。反対尋問では、証言の矛盾点を突いて虚偽の証言を暴いたり、当方に有利な事実を確認したりすることができます。

 

証拠調べが終わると、その結果を踏まえた最終準備書面を提出し、弁論終結となります。弁論終結後、判決期日が指定され、審理終結から判決期日までは概ね1〜3ヶ月程度かかります。

 

民事裁判の判決と和解による解決の可能性

民事裁判では、判決によって紛争を解決する方法と、訴訟途中での和解によって解決する方法があります。

 

判決期日には、裁判官が判決の主文を読み上げますが、理由は読み上げません。興味深いことに、当事者が判決期日に出頭しないのが一般的です。これは、判決書はその日に受け取れないことや、結果を知るだけなら判決言渡し後に裁判所に電話をすれば書記官から教えてもらえるからです。

 

判決に不服がある場合は、判決正本を受け取ってから2週間以内に高等裁判所に控訴することができます。控訴がなければ、第一審の判決が確定して効力が生じます。

 

一方、和解は訴訟のどの段階でも行うことができますが、特に双方の主張・証拠が出揃った頃や尋問手続きが終わった頃に、裁判所から和解を勧められることが多いです。一般に裁判官は判決よりも和解を好む傾向があります。これは、判決で白黒をつけるよりも双方が譲り合って合意に至った方が、しこりも残りづらく望ましい紛争解決ができると考えられているからです。また、判決を書く作業は裁判官にとって大変な負担であり、和解で終了すれば判決を書かなくて済むという側面もあります。

 

訴訟開始前は和解など考えられないと思っていた当事者が、訴訟の途中で和解に応じることもよくあります。訴訟が進み、双方の主張・証拠が出揃うと、弁護士はより明確に判決の見通しを立てられるようになります。また、裁判官が心証を開示して和解を勧告する場合もあり、そうなると和解の方が得策だと判断できることもあるのです。

 

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民事裁判手続のIT化がもたらす変革と課題

令和4年5月18日に成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律により、民事裁判のIT化が本格的に進んでいます。この改正では、以下の3つの大きな変更が導入されました。

 

  1. 訴状等のオンライン提出・送達(弁護士・司法書士はオンライン提出を義務化)
  2. 期日のWeb会議での実施の拡大
  3. 記録の電子化保存・閲覧

2023年3月1日からは弁論準備手続・和解手続が双方当事者ともWebでの参加で実施できるようになり、口頭弁論期日のWeb実施についても2023年度中に施行されました。また、裁判所が開発した民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用も開始され、書面提出の電子化も徐々に進んでいます。

 

IT化によって、裁判所への出頭回数が減少し、弁護士や当事者の負担が軽減されるというメリットがあります。特に遠方に住む当事者や多忙な当事者にとっては、Web会議での参加が可能になることで、時間的・経済的コストの削減につながります。

 

一方で、IT化に伴う課題も存在します。例えば、裁判の公開原則との関係をどう整理するか、IT機器の不具合が生じた場合の対策、デジタルデバイドの問題(IT機器の操作に不慣れな人々への配慮)などが挙げられます。また、法学教育の観点からは、学生が傍聴できる裁判手続きが減少することで、実務教育の機会が減るという懸念もあります。

 

IT化は便利さをもたらす一方で、従来の裁判手続きが持っていた価値の一部が失われる可能性もあり、バランスの取れた制度設計が求められています。

 

民事裁判の期間と費用の現実的な見通し

民事裁判にかかる期間は、事件の性質(当事者の数、事実関係の複雑さ、法的論点の多様性や新規性など)によって大きく異なりますが、第一審の訴訟手続きに要する期間は一般的に1年前後となることが多いです。

 

具体的なスケジュール例としては、訴状提出から約1ヶ月後に第1回口頭弁論期日が設定され、その後当事者間の主張のやり取りが半年程度続き、証人尋問の申出と実施に2〜3ヶ月、最終準備書面の提出と弁論終結に1ヶ月、判決言渡しまでに2ヶ月といった流れが想定されます。

 

ただし、当事者間に実質的な争いがない事件(例えば、貸金請求訴訟で被告が弁済しないのは単に資力がないだけという場合)は2〜3ヶ月で判決に至ることもありますし、尋問による立証を要する事実がない事件(法律解釈のみが争点となる事件など)は半年程度で判決となることもあります。

 

費用面では、訴額に応じた収入印紙代、郵便切手代などの裁判所に納める費用のほか、弁護士に依頼する場合は弁護士費用が発生します。弁護士費用は、着手金と成功報酬からなることが多く、着手金は訴額の5〜10%程度、成功報酬は獲得した経済的利益の10〜20%程度が一般的です。

 

また、証人や当事者が裁判所に出頭する際の交通費や日当、証拠収集のための費用なども考慮する必要があります。さらに、敗訴した場合は、原則として訴訟費用を負担することになります(ただし、弁護士費用は含まれません)。

 

民事裁判を検討する際は、これらの期間と費用を現実的に見積もり、費用対効果を十分に検討することが重要です。特に少額の請求の場合は、裁判にかかる費用や時間、精神的負担を考慮すると、他の解決方法(例えば、少額訴訟や民事調停)を選択した方が合理的なケースもあります。

 

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