

健側で持つのに、患側に松葉杖を当てて指導している医療者が約3割います。
片松葉杖を使う際にまず確認すべきは、どちらの手で杖を持つかです。
正解は「健側(痛めていない足と同じ側)の手」です。 これは多くの医療従事者が知っていることに思えますが、患者への説明や実際の動作確認を省略した場面で、意外と見落とされやすい点です。 medical.francebed.co(https://medical.francebed.co.jp/special/column/94_crutch.php)
なぜ健側で持つのかを整理しておきましょう。患側の手で松葉杖を持つと、一歩踏み出すたびに患側に体重がかかりやすくなります。 歩行中に体重が患側に集中すると、骨折部への負担や痛みの増悪につながります。健側の手で杖を持ち、松葉杖と患側の足を同時に前に出すことで、体重が分散されます。 medical.francebed.co(https://medical.francebed.co.jp/special/column/94_crutch.php)
つまり、「健側で持ち、杖と患側を同時に出す」が原則です。
患者が入院中に誰かの動作を見よう見まねで覚えてしまうケースもあります。退院前の指導では実際の歩行を目視確認する時間を必ず設けることを推奨します。確認時間の目安として、病棟の廊下10メートル程度(標準的な病棟廊下の約半分)を歩いてもらい、杖と患側の出るタイミングが揃っているかを見るのが効率的です。
高さが合っていない松葉杖は、転倒の直接原因になります。
高さ調整には大きく2種類のアプローチがあります。 hiroshima-seikeigekaiin(https://www.hiroshima-seikeigekaiin.jp/matubatuenotukaikata.html)
握り(グリップ)の高さは大腿骨大転子と同じ位置を目安にします。 肘が軽度屈曲(約15〜20度)する高さに設定することが基本です。 matsuiseikei(https://matsuiseikei.com/2023/08/17/%E6%9D%BE%E8%91%89%E6%9D%96%E3%81%AE%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9/)
これが条件です。
脇あて部(アームピース)は脇の下に密着させず、指2〜3本分(約5cm)の空間を保ちます。 この空間がないと脇の下の腋窩神経が圧迫され、手のしびれや筋力低下を引き起こすことがあります。腋窩神経障害は松葉杖使用後の合併症として見落とされやすく、患者が「腕が重い」「手がだるい」と訴えるときに疑うべき所見の一つです。 ims.gr(https://ims.gr.jp/ims-library/lecture/column/column-crutch.html)
片方使用(片松葉杖歩行)になるのは、両松葉杖から徐々に荷重練習を進め、患側の回復が確認できた段階です。この移行タイミングは医師の指示を確認した上で判断します。 hiroshima-seikeigekaiin(https://www.hiroshima-seikeigekaiin.jp/matubatuenotukaikata.html)
平地と段差では手順が異なります。それぞれ確認しましょう。
【平地歩行】
「杖と患側を同時に」というリズムが整うまで、最初は歩幅を小さめに設定することが重要です。 杖を前に出しすぎると体重が乗り切らず、転倒リスクが一気に高まります。 kitatoda-clinic(https://www.kitatoda-clinic.com/blog/tsue.html)
【階段の昇り方】
【階段の降り方】
「上りは健側から、降りは患側(杖)から」と覚えておけばOKです。 手すりがある場合は積極的に使い、手すりを持つ側の手に松葉杖を持ち替えるか、手すりと杖を使い分ける判断が必要です。 h-ortho(https://h-ortho.jp/information/2106/)
また、高齢者や床面が不安定な環境では、健側の足が松葉杖より少し前に出る標準の歩幅より、松葉杖と足を揃える「揃え型」に変更することで転倒リスクを下げられます。 kitatoda-clinic(https://www.kitatoda-clinic.com/blog/tsue.html)
正しい使い方を知っていても、指導が形骸化していることがあります。
現場でよく見られる指導エラーを整理します。
厳しいところですね。
特に退院前後の外来フォローでは、患者が自宅で1週間使った後に歩行パターンが崩れていることも珍しくありません。外来での歩行チェック項目に「杖のタイミング」「脇の空き」「杖の位置(前に出しすぎていないか)」を加えることで、再入院や転倒リスクを低減できます。
患者指導を効率化したい場面では、図解入りの指導用リーフレットや動画QRコードを活用する病院が増えています。院内で統一した指導資材を整備することが、指導ばらつきの防止につながります。
「いつ松葉杖を卒業するか」は、患者から最も多く聞かれる質問の一つです。
松葉杖から通常の歩行へ移行する目安として、以下の観点が参考になります。
独自の視点を加えると、「松葉杖なしで歩けるようになった」と患者本人が主観的に判断して、医師の許可前に自己判断で使用をやめるケースがあります。 これが問題です。 骨癒合が不十分な段階での急な荷重は、再骨折や変形治癒のリスクを高めます。退院指導の段階で「医師の許可が出るまでは必ず使用を続けること」を明示的に伝えることが重要です。
また、T字杖への移行を経ずに直接松葉杖から杖なしにする場合と、T字杖を中間ステップとして挟む場合があります。どちらが適切かは患者の筋力・バランス能力・生活環境によって異なるため、理学療法士と連携した個別判断が推奨されます。
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松葉杖の片方(1本)使用は、両松葉杖からの移行期という特殊な状況で起きやすく、指導の抜け漏れが生じやすい場面でもあります。健側で持つ原則、高さ調整の方法、歩行・階段の手順を体系的に患者に伝える仕組みを職場単位で整備することが、転倒や再受傷の予防に直結します。
以下のリンクは、松葉杖の使い方について医師監修で解説されており、患者指導資料の参考として有用です。
フランスベッド|松葉杖の使い方・合わせ方について(片方使用のポイントも掲載)
広島整形外科院|松葉杖の使い方(階段昇降や片松葉杖歩行を含む詳細解説)
IMS医療・介護コラム|松葉杖の使い方(脇への体重かけすぎによる神経障害リスクも解説)