
クレジットカードを国内で利用する場合、一括払いであれば手数料は発生しませんが、海外で利用すると状況が変わります。海外でクレジットカードを使用すると、一括払いであっても「海外利用手数料」が発生します。
この手数料が発生する理由は、カード会社が店舗への支払いを行う際に、日本円から現地通貨に換算する事務処理コストがかかるためです。この処理は決済ごとに必要となるため、海外での利用1回ごとに手数料が発生します。
海外利用手数料の計算方法は以下の通りです。
国際ブランド基準レート × 利用金額(外貨) × 海外事務手数料率 = 海外利用手数料
例えば、100ドルの買い物をした場合、国際ブランド基準レートが1ドル=150円、海外事務手数料が2.0%だとすると。
この計算式からわかるように、海外事務手数料率が低いカードを選ぶことで、海外での支出を抑えることができます。
2025年現在、主要なクレジットカード会社の海外事務手数料率は以下の通りです。多くのカード会社が2024年に手数料率を引き上げており、以前より高くなっていることに注意が必要です。
カード発行会社 | Visa | Mastercard | JCB | American Express |
---|---|---|---|---|
三井住友カード | 3.63% | - | ||
三菱UFJカード | 3.85% | 3.05% | - | |
エポスカード | 2.20% | - | ||
セゾンカード | 3.85% | |||
セディナカード | 2.20% | - | ||
オリコカード | 3.85% | 1.60% | - | |
イオンカード | 1.60% | - | ||
ダイナースクラブ | - | 1.30% |
この表から、海外利用手数料が特に低いカードは以下の通りです。
一方、三井住友カード、三菱UFJカード、セゾンカードなどは3.63%〜3.85%と比較的高めの手数料率となっています。
手数料率の差は一見小さく見えるかもしれませんが、海外旅行で多額の買い物をする場合や、頻繁に海外へ行く方にとっては大きな差になります。例えば、10万円分の買い物をした場合、手数料率1.60%と3.85%では2,250円の差が生じます。
海外利用手数料の実際の計算方法をより詳しく見ていきましょう。計算式は以下の通りです。
利用金額(外貨) × 国際ブランド基準レート × 海外事務手数料率 = 海外利用手数料
実際の計算例を見てみましょう。
【例1】アメリカで500ドルの買い物をした場合
【例2】同じ500ドルの買い物をイオンカード(手数料率1.60%)で支払った場合
この例から、同じ買い物でも使用するカードによって1,522.5円の差が生じることがわかります。海外旅行中に多くの買い物をする場合、この差額は無視できない金額になります。
また、国際ブランドの基準レートは日々変動することに注意が必要です。VISAやMastercard、JCBなどの国際ブランドは、1日に1回実際の為替レートをもとに基準レートを設定しています。この基準レートには既に若干の手数料が上乗せされていることもあります。
海外でクレジットカードを利用する際の選び方と注意点について解説します。
1. 手数料率の低いカードを選ぶ
前述の通り、海外利用手数料率はカード会社によって大きく異なります。頻繁に海外へ行く方や、海外での利用額が多い方は、手数料率の低いカードを選ぶことで大きな節約になります。
2. 複数の国際ブランドを持つ
国や店舗によって利用できる国際ブランドが異なる場合があります。例えば、アメリカではVISAやMastercardが広く使われていますが、アジアの一部地域ではJCBが使いやすい場合もあります。複数の国際ブランドのカードを持っておくと安心です。
3. 現地通貨での決済を選ぶ
海外の店舗で「円建て決済」(DCC:Dynamic Currency Conversion)を提案されることがありますが、これは通常、不利なレートが適用されます。必ず現地通貨での決済を選びましょう。
4. サーチャージに注意
一部の国(アメリカなど)では、クレジットカード決済に対して店舗が「サーチャージ」と呼ばれる追加料金を請求できる制度があります。特にハワイなどの観光地では多くの店舗がサーチャージを請求しているため、レジ付近の表示を確認するか、スタッフに確認しましょう。
5. 海外旅行保険の付帯を確認
海外利用手数料だけでなく、海外旅行保険の付帯状況も重要な選択基準です。例えば、JCBゴールドは最高1億円の海外旅行傷害保険(利用付帯)が付いています。保険の自動付帯か利用付帯かも確認しておきましょう。
6. 年会費とのバランス
手数料率の低いプレミアムカードは年会費が高い傾向があります。例えば、ダイナースクラブカードは海外利用手数料が1.30%と最も低いですが、年会費は24,200円(税込)です。年間の海外利用額と照らし合わせて、総合的にお得なカードを選びましょう。
クレジットカードの海外キャッシング機能を使って現地ATMから現金を引き出す場合、ショッピング利用とは異なる手数料体系が適用されます。
キャッシング利用時の手数料構成
注目すべき点として、キャッシング利用の場合は通常のショッピング利用で発生する「海外事務手数料」は発生しません。しかし、ATM利用手数料と利息が発生するため、総合的なコストはショッピング利用より高くなる傾向があります。
キャッシング利用の注意点
より賢い現地通貨の調達方法
海外で現金が必要な場合、クレジットカードのキャッシング機能よりも、国際キャッシュカードやデビットカードを利用する方が手数料が安くなる場合が多いです。特に、一部のネット銀行が提供する海外ATM手数料無料のデビットカードは、海外での現金調達に適しています。
また、事前に日本で外貨両替をしておくことも一つの方法ですが、為替レートが不利になる場合もあるため、少額の緊急用として持っておき、主な支払いはクレジットカードで行うのが賢明です。
従来のクレジットカードに加えて、近年では海外利用に特化した新たな決済手段も登場しています。これらは海外利用手数料を大幅に削減できる可能性があります。
マルチカレンシーカード
マルチカレンシーカードは、複数の通貨を1枚のカードで管理できるプリペイド型のカードです。事前に日本円から外貨に両替しておくことで、現地での決済時に為替手数料を回避できます。代表的なサービスとしては「Wise(旧TransferWise)」のカードがあります。
Wiseカードの特徴。
デジタルウォレット
Apple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットと連携したクレジットカードを利用することで、セキュリティ面での安全性が向上します。また、一部の国では現地のQRコード決済サービス(中国のAlipayやWeChat Pay、タイのPromptPayなど)も利用できるようになってきています。
暗号資産(仮想通貨)による決済
一部の先進的な店舗では、ビットコインなどの暗号資産による決済も可能になっています。暗号資産による決済手数料はクレジットカードよりも低く、海外で買い物をする際の利便性も高いとされています。ただし、価格変動リスクや対応店舗の少なさなどの課題もあります。
法人向け海外決済サービス
ビジネスでの海外出張が多い方は、法人向けの海外決済サービスも検討する価値があります。これらのサービスは、経費精算の手間を省くとともに、為替レートや手数料面でも有利な条件を提供している場合があります。
これらの新たな選択肢は、従来のクレジットカードと併用することで、状況に応じた最適な決済手段を選択できるようになります。特に長期滞在や頻繁に海外へ行く方は、複数の決済手段を持っておくことをおすすめします。
Wiseカードの詳細と海外手数料の比較についての詳しい情報はこちら
以上の情報を踏まえて、自分の海外利用パターンに最適なクレジットカードを選ぶことで、不要な手数料を削減し、より効率的な海外決済が可能になります。海外旅行や出張の前には、手持ちのカードの海外利用手数料を確認し、必要に応じて新たなカードの発行を検討することをおすすめします。
海外利用手数料は一見小さな金額に思えるかもしれませんが、長期的に見れば大きな差になります。賢いカード選びで、海外での支出を効率的に管理しましょう。