事前確認制度APAとは?FX取引企業の移転価格リスク対策

事前確認制度APAとは?FX取引企業の移転価格リスク対策

事前確認制度APAとは移転価格課税リスク回避策

事前確認制度(APA)の基本概要
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制度の意義

税務当局が独立企業間価格の算定方法を事前に確認し、移転価格課税リスクを排除

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対象期間

3年から5年間の将来年度に適用され、予測可能性を確保

⚖️
法的位置づけ

日本では行政上の事実行為として位置づけられ、信義則により拘束

事前確認制度APAの基本的な仕組み

事前確認制度(Advance Pricing Arrangement:APA)とは、納税者が税務当局に申し出た独立企業間価格の算定方法等について、税務当局がその合理性を検証し確認を与える制度です。確認された内容に基づき申告を行っている限り、移転価格課税は行われないという効果があります。
この制度の目的は、独立企業間価格の算定に関して課税庁と納税者との間で事前に確認することにより、移転価格課税に関する納税者の予測可能性を確保し、移転価格税制の適正・円滑な執行を図ることです。
移転価格税制は「議論の税制」とも呼ばれ、同じ事案に対しても立場や国が違えば検証結果が変わり得るという側面を有しています。そのため、租税回避の意図が無いにも関わらず課税を受けてしまうリスクがあり、追徴課税による突然のキャッシュアウトは経営にも影響を及ぼしかねません。

事前確認制度APAの種類と特徴

APAには主に2つの種類があります。
ユニラテラルAPA(一国内APA) 💡

  • 一方の国の税務当局のみとの間で事前確認を行う制度
  • バイラテラルAPAより時間とコストを抑えられる
  • 相手国からの課税リスクは完全には排除できない

バイラテラルAPA(二国間APA) 🤝

  • 取引を行う両国の税務当局間で相互協議を通じて合意を得る制度
  • 二重課税リスクを完全に回避できる
  • 相互協議に2年程度の期間と高額なコストが必要

近年では、課税の対象が中小・中堅企業にシフトし、重要な取引相手国が中国及びアジアの新興国にシフトしてきたことにより、コストパフォーマンスの観点からユニラテラルAPAの重要性が増してきています。

事前確認制度APAのメリットと効果

移転価格課税リスクの排除 🛡️
APA取得の最大のメリットは、対象期間における移転価格税制に係る税務調査及び課税が排除できる点です。移転価格についての二重課税リスクが回避でき、対象期間中の税務調査対応コストの削減ができます。
社内体制の確立 📊
事前確認を申請する場合、対象取引について詳細に精査し、客観的に妥当性が認められる移転価格算定方法を検討しなければなりません。そのため、社内ルールの明確化や移転価格税制への社内体制の構築が図れます。
予測可能性の確保 📈
将来年度の移転価格調査に対応する手間とコスト、追徴課税のリスクを回避することができ、国外関連取引に携わる様々な部署・スタッフにとっても、余計な心配をせずに取引業務を推進できるメリットがあります。

事前確認制度APA申請の流れと審査プロセス

事前相談 📞
国税庁は納税する企業が事前確認を受けやすいように、申請の事前相談を行っています。事前相談の窓口は各国税局に設けられており、企業は申請に必要な資料をスムーズに作成できるようになります。
申請書提出 📋
事前確認の申出書「独立企業間価格の算定方法等の確認に関する申出書」は、確認対象初年度の開始日までに必要書類を添付して提出します。申出書への添付すべき資料の一部について、相当の理由があって申出期限までに提出できなかった場合は、45日を超えない範囲内で提出期限を再設定できることもあります。
審査プロセス 🔍
国税局において審査担当官が提出された申請書や添付されている資料の確認を行い、事前確認の審査を行います。審査では国税局の審査担当者が実際に会社や事業所に臨場し、独立企業間価格の算定方法等に関する説明を聞くことになります。
事前確認に要する期間は、バイラテラルAPAかユニラテラルAPAかによって大きく変わり、国税庁の公式ホームページでは、1件あたりおよそ2年程度の処理期間が平均的であると解説されています。

事前確認制度APA活用時の独自視点での注意点

申請タイミングの戦略的判断
事前確認制度の申請は確認対象初年度の開始日までに行う必要がありますが、企業の成長段階や事業環境の変化を考慮した戦略的なタイミングでの申請が重要です。特に、新興国との取引が拡大する時期や組織再編が予定されている場合には、事前に制度活用を検討すべきでしょう。

 

中小企業向けの活用可能性 🏢
従来は超大企業が中心でしたが、近年では中小・中堅企業も課税対象となるケースが増加しています。一部の国では簡易APAを導入し、一定規模に満たない中小事業者や取引を対象として手数料の軽減や提供資料の簡略化を図っています。
相手国の税制環境変化への対応 🌏
アジア新興国では移転価格に関する経験が乏しく、合意までに時間がかかったり、考え方の隔たりから合意自体できないリスクもあります。相手国の税制改正動向や執行方針の変化を継続的にモニタリングし、必要に応じて戦略を見直すことが重要です。
年次報告義務への継続的な対応 📊
APA取得後は、定められている期限までに年次報告書を提出する義務があります。この継続的な報告義務を確実に履行するための社内体制整備と、対象取引の実績が合意内容から乖離していないかの定期的な検証が必要です。
事前確認制度は移転価格課税リスクを事前に回避できる唯一の制度として、国際取引を行う企業にとって重要な選択肢となっています。制度の仕組みを正しく理解し、自社の取引実態や事業戦略に適した活用方法を検討することで、より安定した国際事業運営が可能となるでしょう。