

電子カルテを導入した病院の看護師の残業が、逆に月平均12時間増えたケースがあります。
「医療IT企業」という言葉を聞いて、なんとなく「システムを売る会社」とイメージする方は多いでしょう。ただ実態はかなり幅広く、扱う領域によって性質がまったく異なります。
医療IT企業が手がけるサービスは大きく以下の6つに分類できます。
つまり「医療IT=電子カルテ会社」ではありません。
医療従事者として知っておきたいのは、自分の職場が利用しているシステムがどの企業のどのカテゴリに属するかです。それによってサポート体制や拡張性がまるで変わるからです。
例えば電子カルテと調剤システムが別会社の製品だと、データ連携に追加費用がかかるケースが少なくありません。現場が感じる「使いにくさ」の多くは、このシステム間の断絶から来ています。
これは現場の問題です。
2023年から2025年にかけて、医療IT分野で最も注目を集めているキーワードは「生成AI」と「クラウド型電子カルテ」の2つです。
生成AIの医療活用では、米国発のNuance(マイクロソフト傘下)が提供する「DAX Copilot」が診察中の会話を自動でカルテに要約する機能を持ち、医師の記録業務を最大で70%削減できると報告されています。
これは使えそうです。
ただし、すべての医療機関に生成AIが向いているわけではありません。入力される患者情報の機密性から、データをどのサーバーに保存するかという「データレジデンシー問題」が障壁になります。厚生労働省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」では、クラウド利用時の責任分界点を明確にするよう求めています。
厚生労働省:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(最新版)
医療IT企業を選ぶ際は、このガイドラインへの準拠状況を確認するのが最低条件です。
現場の実態として、ITツール導入が「楽になった」と感じるまでには平均6〜12ヶ月かかると言われています。最初の数ヶ月は入力方法の習得や旧来の紙運用との並行対応で、むしろ業務量が増えます。
厳しいところですね。
具体的に変化が出やすい業務は以下のとおりです。
一方で、ITに不慣れなスタッフへの研修コストが見落とされやすい点は要注意です。導入費用に研修・サポート費用を含めて試算しないと、予算が大幅に超過する例が国内でも複数報告されています。
一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS):医療IT導入事例・ガイドライン多数掲載
「導入したら終わり」ではなく、「定着させてから効果が出る」が原則です。
医療機関のシステム選定に現場スタッフが関与できるケースは増えています。声を上げるタイミングで、確認しておきたい項目を整理します。
医療IT企業の営業担当は「自社製品のメリット」しか語りません。比較検討には、第三者機関の評価レポートを参照するのが有効です。日本医療情報学会や JAHISが公開するガイドラインは、特定企業への忖度なく評価基準を示しているため参考になります。
一般社団法人 日本医療情報学会(JAMI):学術的な医療IT評価・事例研究を掲載
サポート体制の確認が最重要です。
これはあまり語られない話です。
医療IT企業は現在、「医療現場の経験を持つ人材」を非常に強く求めています。看護師・薬剤師・診療放射線技師などの国家資格保持者が、医療IT企業でのカスタマーサクセス(CS)職や実装コンサルタントとして採用される事例が2020年代以降で急増しています。
具体的な年収イメージは以下のとおりです。
医療ITの知識がキャリアの武器になる、ということですね。
臨床経験を持ちながらデジタルツールに慣れている医療従事者は、現場とIT企業の「翻訳者」として非常に価値が高いポジションです。現職で電子カルテやAIツールの導入プロジェクトに関われる機会があれば、積極的に関わっておくと将来の選択肢が広がります。
医療IT関連の資格としては「医療情報技師」(日本医療情報学会認定)が代表的で、医療従事者が取得するケースも増えています。受験資格に臨床経験は不問で、独学でも合格できるレベルの試験です。
まず「医療情報技師」を調べてみるだけでOKです。